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IRリリース

2019年02月15日

【てら先生コラム】第12回:進学先を巡るご相談

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は『進学先を巡るご相談』ついてお届けします。

 中学入試が終わり、地域によって異なりますが高校入試も始まり、大学入試は中盤戦に突入している入試シーズンとなりました。合格発表があり、複数の学校から入学許可された受験生と保護者にとっては、進学する学校の選択に悩む場合もあるのではないでしょうか。この時期に多いご相談を今回は紹介したいと思います。

◇スレスレ合格校に進学すべきか、余裕をもって合格した学校に進学すべきか

 

 ある受験生がA校とB校に合格したとします。A校はそれまでの模擬試験の結果からスレスレで合格したと判断でき、B校には余裕をもって合格できたと判断できた場合、どちらの学校に進学したほうが充実した学校生活が送れるのでしょうか。入学許可された学校が複数あったとしても、実際に進学できる学校は1校のみです。保護者と生徒で意見が異なったり、保護者同士で意見が異なったりする場合もあり、塾に相談を寄せてくる場合が案外多いのです。

 

 A校に進学した場合、スレスレで合格しているわけですから、勉強についていけるかどうか心配になる気持ちもわかります。一方、B校に進学した場合、余裕をもって合格しているので、慢心して必死に勉強をしなくなるのではないかと心配になる気持ちもわかります。

◇スレスレ合格校に進学した場合のメリット・デメリット

 

 A校への進学を受験生本人が心から希望しているならば、厳しい道のりだということを自覚してもらって進学して良いと思います。「いつまでも合格した喜びに浸ってはいられない」「頑張らなければ勉強についていけなくなるかもしれない」という危機感をもって入学し、勉強を続ければ、いわゆる「落ちこぼれ」になることはないでしょう。入学直後の校内成績が芳しくなくても、前回の試験よりも生徒の良くなった点を指摘したり、成長した部分を認めたり、(校内順位ではなく)全国模試での順位に注目させたりするような接し方の工夫をすることで、勉強への意欲や関心を維持し続けることができます。

 

 何よりも、少なくとも学習面では自分より優秀な生徒に囲まれて、その中で刺激を受け続けることは得難い経験といえます。そのような生徒たちを時にはお手本として、時には彼らと切磋琢磨することで、見違えるほど成長し、成績を入学後に大きく伸ばしっていった事例は数多くみてきました。スレスレで合格した学校に進むという厳しい道を選択したからこそ得られる成長の機会だと思います。

 反面、このような危険性もあります。ある進学校(高校)の先生から、入学後の最初のテスト結果を返却する際に、泣き出してしまう生徒が毎年いるという話を聞いたことがあります。中学時代、成績は校内でトップクラスにいるのが当たり前だった生徒たちが入学してくるその高校でも、トップと最下位が生じます。今までとったことのないような、例えば平均点以下の成績をとってしまうこともあります。周囲も特に優秀だと認めてはくれません。少し頑張ったとしても、なかなか中学時代のような校内順位をとることはできないために、次第に勉強への関心が薄くなってしまう生徒もいるそうです。

◇余裕をもって合格できる学校に進学した場合のメリット・デメリット

 

 学力的に余裕があるB校に進んだ生徒の中には、中学時代にはとったことのない高順位をとることができたことで、やればできるという自信をもち、周囲からも褒められたり認められたりすることで、モチベーションも上がり、急速に学力を上げる生徒もいます。私の経験のなかでも、高校入試の時点で同じ位の成績の二人の生徒のうち、余裕をもって合格できるB校に進学した生徒が、3年後の大学入試では最難関大学に合格し、スレスレ合格レベルのA校進学した生徒が不本意な結果に終わったような事例もみてきました。

 

 学力に余裕のあるB校に進学すれば、学校の勉強の進度はスレスレ合格校よりもゆっくりな場合が多いですし、入学時は周囲の生徒よりも学力が低いということはありませんので、余裕をもった学校生活が送れそうに思えます。しかし、必ず良い結果になるかといえば、そうとは言い切れないのです。「頑張らなくてもある程度の成績はとれるから」と学習習慣自体が崩れてしまい、手の抜き方を入学当初は上位の成績がとれていても、次第に校内順位が低下していくケースもあるのです。

◇スレスレ合格校に進学した場合の接し方

 

 A校に進む場合には、一般的に学校の進度についていけなくなる危険性は常にあります。それを防ぐためにも、合格の余韻に浸る間もなく、合格に向けて継続してきた学習習慣を途切れさせることなく、春休みも予習などを続けることで、入学後にスタードダッシュができるように声掛けしていくと良いでしょう。

 

 また、一般的に相対的な校内順位は低下しがちになります。これまでと同じ頑張りだけではなかなか校内順位が上がりません。「やっても成果がでない」と自信を喪失してしまうケースもあります。ですから、成果がでやすい効率的な勉強方法を入学前から身につけさせることは大変重要です。また、生徒自身の成長した点や改善できた点、得意科目の出来栄えなどを指摘して絶対評価で褒めたり、認めたりすることや、校内順位ではなく全国模試や資格検定取得といった視点での評価を加えたりするなどの配慮が必要です。

◇余裕をもって合格できる学校に進学した場合の接し方

 

 B校に進む場合には、相対的な校内順位は上げやすい環境です。学力的には周囲と同じか上回っている場合が多いので、過去最高の校内成績をとることは不可能ではありません。「自分もやれば勉強ができる」「学校の先生から褒められた」「クラスのみんなから一目おかれた」といった経験ができ、勉強への自信と感心を高める絶好のチャンスであるといえます。保護者も積極的に褒めましょう。このチャンスをモノにするためには、合格に安堵する間もなく、合格に向けて継続してきた学習習慣を春休みも維持するように配慮して、スタートダッシュを切らせるように声掛けしていくことが大切です。

◇正解はあるのか

 

 こうしてみると、A校・B校への進学のどちらかが必ず正解だということはないと思います。A校に進学することが正解となる接し方、B校に進学することが正解となる接し方があり、結局は、どちらの接し方や声掛けの仕方が生徒に向いているのかという判断になります。事実、寄せられたご相談に対しても、生徒によって助言した結論が異なっていました。

 

しかし、どのような結論であっても以下のような話は付け加えていました。

 

 入学試験を経て、入学すれば、スタートラインは同じです。しかし、受験生は受験後から入学の間が一番伸びると言われています。A校に進もうとも、B校に進もうとも、周囲が次の目標を一緒に設定して、努力する歩みを続けていきやすい接し方ができるかどうかで、伸びが異なり、スタートダッシュが成功するかどうかが決まるように思います。

◇保護者のスタンスは 

 

 保護者にとっては、子どもの入試が終われば一段落ついたという気持ちになるのは理解できますが、受験が終われば全てが終わるわけではありません。また、「受験が終われば好きなことだけして良い」「勉強しなくても良い」ということでもないでしょう。どのような学校に入学しようとも、その学校で頑張っていくことの大切さは変わらないように思います。

 

 私は、生徒たちにとっての「勉強」とは、目の前にある課題や目標に向かって全力で頑張る経験でもあると思います。目の前にある課題や目標に向かって全力で頑張る経験は入試が過ぎたら終わるものではないのです。

 

 入試後から入学、そして1年生の夏休みまでは、スタードダッシュが成功するかどうかを左右する重要な時期です。次の目標設定や、努力する歩みを続けていきやすい環境作りに配慮していただきたいと思います。そのためのご相談は東京個別・関西個別の教室でも随時応じています。

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。