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IRリリース

2019年03月15日

【てら先生コラム】第13回:受験後に伸びる子ども

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は『受験後に伸びる子ども』ついてお届けします。

 一部の入試を残して、入学試験の結果発表が終了しています。教室からも合格の知らせが多数届いています。合格発表日は受験生とその保護者にとって重大な日ですが、受験後の子どもへの接し方も大切なのです。

 そこで今回は、受験を終えた子どもの保護者の注意点について考えてみたいと思います。

◆受験に向けた子どもの取り組み姿勢

 

 まず、受験勉強に取り組んでいた子どもの姿勢は、実は様々なのです。

子どもたちにとって、受験はひとつのゴールでしょう。多くの子どもたちは合格を目指して、1点1点積み上げていく努力をしてきたのです。合格するために必死に努力して、見事に合格を勝ち取った子どももいれば、必死に努力を積み重ねたにもかかわらず、残念な結果に終わった子どももいるでしょう。

一方、やらされるまま嫌々ながら勉強していたのに合格した子どもや、頑張って勉強する足どりが鈍くなってしまい、比較的楽に到達できる学校に合格した子どももいます。そして、頑張って勉強する歩みを止めてしまったり、諦めてしまったりした結果、不合格になってしまった子どももいます。

 一般には、目標とする志望校に求められる適切な量と質の学習を積み重ねる努力を続けていけば、合格の可能性は高まりますが、他の受験生との相対的な比較や環境要因によって、意外な結果になってしまうこともあります。ですから、努力したにもかかわらず残念な結果になってしまった子どももいれば、努力をしきれたと言えないながらも合格した子どももいるのです。

 

 それでも、合格するための努力をしてもらうことの価値はあります。子どもたちにとっての「勉強」とは、目の前にある課題や目標に向かって全力で頑張る練習でもあるからです。合格するための努力や目の前の目標をクリアするための頑張りをどれだけ積み重ねてきたのか、といった経験は合否結果を超えて残っていくのではないでしょうか。目の前にある課題や目標に向かって全力で頑張ることは、入試が過ぎたらといって終わるものではないはずです。

合格・不合格という結果は勿論大切ですが、結果が出るまでの努力というプロセスの価値を、もっと認めても良いと思います。

◆受験前の姿勢(プロセス)を振り返る

 

 合格したからといって必ず明るい未来が必ず待ち受けているわけではありません。また、不合格になってしまったからといって、保護者が落胆ばかりしてしまっては、子どもは自分が全否定されたと感じてしまいます。

合格したという自信や成功体験は、もちろん大切で、東京個別・関西個別でも重視しています。しかし、苦しくても逃げずに最後まで目標に立ち向かい続けたという経験を通して得た自信にも意味があると考えています。それは子どもの自分自身との意味のある戦いです。意味のある戦いで出された合否という結果はひとつの通過点で、最終ゴールではありません。意味ある戦いを通り抜け、その経験の大切さを理解した子どもは1年前より遥かに成長し、結果が出た後も努力の歩みを止めることはないのです。 

 

 ですから、受験勉強を通して、子どもに成長した面がみられたならば、合否の結果にかかわらず、苦しくても逃げずに最後まで目標に立ち向かい続けた姿勢の大切さを、子どもに話して欲しいのです。合格するための努力を真摯に続けてきた受験生(結果は第一志望に合格)の保護者の中には試験前に、「ここまで子どもが成長したのだから合否は関係ない。子どもはよくやった。」とおっしゃる方もいらっしゃいました。

残念ながら、苦しくて逃げてしまったり、途中で諦めてしまったりした、取りかかりが遅かったり、受験を甘く見ていたといった反省点からも、新しい学校での勉強がスタートするのですから、学ぶべき点が見いだせます。保護者から伝えにくいという場合は、塾の先生などから子どもにフィードバックしてもらうと良いでしょう。

◆受験後の子どもの様子

 

 そして、入学試験後の子どもの様子も様々です。

合格に気を良くして、その後も努力し続ける子どもや、「実力以上の学校に合格したから今まで以上に頑張らないと」と、気を引き締める子どもがいる一方で、合格を手にして浮かれたり、油断してしまったり、燃え尽きてしまったりして勉強しなくなってしまう子どももいます。

不合格の場合も、「本気で勉強に取りかかるのが遅かったから」と、それまでの受験勉強を振り返り、勉強に取り組む子どももいれば、「自分は勉強に向いていない」と、勉強を諦めてしまう子どももいます。

「合格を勝ち取り、ますます伸びていく子ども」であって欲しいと願うのが親心でしょうが、第一志望校に合格した子どもでも伸び悩んでいるケースも見られます。合否結果とその後の伸びは必ずしも一致しないのです。

入学試験の結果発表後であれば、保護者にとっては、伸びていく子どもであって欲しいとの思いは共通してあるのではないでしょうか。

 目の前にある課題や目標に向かって全力で頑張る練習は入試が過ぎたら終わるものではありません。しかし、受験と言う目標に対しての結果が出た時に、次の目標を立てていなかったり、明確でなかったりすると、それまでの「全力で頑張る」姿勢を維持できなくなることがしばしばあります。

受験後に伸びていく子どもは、次の目標をいち早く立てて、その目標に向かって歩み出した子どもであり、伸び悩みが感じられる子どもは、いつまでも入試結果について喜んだり悲しんだりしてばかりいて、目標が漠然としている子どもや目標は立てたものの、その目標に向かって実際には動き出していない子どもが多いように思います。

 受験後に伸びていく子どもに成長していくように導くには、受験後の早い時期に、子どもに次の目標を尋ねてみたり一緒に考えたりする機会を持ち、その目標に向かって歩みだすように促すことが大切でしょう。

◆保護者のすべきことは何か

 

 入学試験が終わり、その結果が望ましいものであったとしても、残念なものであったとしても過去は変えられません。しかし、今までの受験に向かう姿勢や入試結果にかかわらず、過去から学び、現在や未来を変えることはできます。今後、伸びていく子どもになっていくために保護者として考えるポイントが二つあります。

第一は、先に述べた通り、プロセスを評価するということです。

 

 もうひとつは、受験直後から新しい目標に向かって歩み出す後押しをするということです。

受験は子ども自身が勉強して受けるのですが、そこにはご家庭のバックアップも不可欠ですから、ご家庭の大きな出来事でもあります。実際に受験した子どもだけではなく、応援してきた保護者にとっても、受験が終わると、ひと息つきたくなる心境になるのは大変理解できます。保護者の心のありようは、子どもにも伝わってしまいますので、保護者がひと息ついてしまったご家庭では、子どもものんびりしてしまう傾向にあるようです。

 

 しかし、入試が終わって結果が出て、のんびりするのではなく、次の目標のためにすぐ歩み出す子どもこそが「受験を通して成長した」「伸びていく」子どもと言えるのではないでしょうか。第一志望校の入学試験が終わった日の夜から、英語の勉強を始めた中学受験生がいました。その生徒は第一志望校に入学し、六年後に第一志望大学に合格しました。受験生は受験後から入学の間が一番伸びると言われています。その通りだと思います。

 

 受験が終われば全てが終わるわけではありません。そうであれば、「受験が終われば好きなことをしていい」「勉強しなくてもいい」とはならないはずです。

受験が終わった保護者がこだわるべきは子どもが「今後頑張れるか」であると思います。そのための目標設定や環境を整えていくことが保護者の役割でしょう。

先に触れましたように、目標を立てていても動き出せていない子どももいます。コラム第1回*¹ でご紹介しました通り、子どもが動き出せないのは頑張る気がないのではなく、頑張り方がわからないことが原因であることはしばしばあります。

 

 東京個別指導学院・関西個別指導学院では、中学受験生や高校受験生に、受験後の次の目標設定のお手伝いをさせていただいています。入学前のこの時期に周囲の大人のすべきこととして、次の目標を子どもに決めさせたり、目標を一緒に考えたり、次の目標に向けての頑張り方を教えたりすることで、子どもが頑張る歩みを止めさせないことが大切であると考えているからです。

 

 

 

*¹【てら先生コラム】第1回:保護者がつい口にしてしまうあの言葉

https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=281

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。