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IRリリース

2019年12月11日

ニューラルネットワークの進化形、RNNが可能にする人口知能との会話

人工知能(以下AI)はすでに人間と自然な会話ができるレベルにまで進化しています。さらにまるで人間のように人格や個性まで持つことさえ可能となっているのです。(※1)

 

AIには人間との会話を可能にするRNNというニューラルネットワークを進化させた技術が利用されるようになってきました。RNNとは「Recurrent Neural Network」の略ですが、再帰型ニューラルネットワークとも呼ばれています。数値の時系列データなどのパターンを認識できるのが特徴です。なぜRNNでAIに人間と会話させることができるのか、その仕組みを詳しく説明します。(※2)

進化したニューラルネットワークでAIは会話できるように

AIというものが注目されるようになってから、今ではあらゆる場面で利用されるようになっています。たとえば画像解析にAIが利用されることで、天文写真から新天体を発見するといったことが可能になりました。あるいは医療画像にAIを利用することで、適切な診断を行うことも可能となっています。(2)

 

あるいは車の自動運転にもAIが活用されています。画像解析に利用することで、飛び出してくる人を認識し、回避することが可能となります。あるいは気候状況や道路の混み具合といったデータを取り込んで、安全に目的地に到着するための最適なルートを選んだり、スリップ事故を防ぐための安全運転ができるようになったりします。(3)

 

これらはすべてAIが認識や判断といった作業の補助のために役立てられる事例です。あくまでもツールとして使われるという点でどれも共通しています。

 

しかし、RNNというニューラルネットワークの一種をAIに搭載することで、まるで人間が思考するかのような働きをするようになってきています。自然な会話ができるというのも、あたかもAIが自ら考えて言葉を発しているかのように感じられます。(4)

AIで利用されているニューラルネットワークとは

人間との会話を可能にするAIを生み出したニューラルネットワークとはどのようなものなのでしょうか。

 

その前にまず、そもそもAI(アーティフィシャル・インテリジェンス=人工知能)とはどのようなものなのかを説明します。AIは単なるプログラムではありません。これまでのプログラムは、命令されたとおりの作業をするだけのものでしたが、AIは自らが学習することができます。

 

たとえば単なる囲碁のプログラムは、あらゆる手を先に計算して最も有効と判断できる一手を決める仕組みです。しかしAIを組み込んだ囲碁のプログラムは、試合を重ねるごとに学習して次第に強くなっていきます。(5)

 

つまり最初からあらゆるパターンを想定して作業をさせるプログラムとは異なり、AIはまず実行して結果をフィードバックし、成功と失敗を繰り返しながら目指すべき目的を果たせるようにデータを蓄積していきます。これを機械学習と呼びます。

 

そしてその機械学習を人間の脳の仕組みを模して行うものが、ニューラルネットワークです。これは人間の脳神経ニューロンをプログラムで再現したようなものと理解するとよいでしょう。(※6)

 

このニューラルネットワークには、いくつかの種類があります。もっとも多くAIに利用されているニューラルネットワークがDNN(ディープニューラルネットワーク)です。これはニューラルネットワークを多層に重ねる方式となっています。ディープラーニングとも呼ばれています。

 

そして画像認識でよく利用されるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)というものがあります。これはGoogle翻訳などで言語処理にも利用されています。

 

3つめがRNN(再帰型ニューラルネットワーク)というものですが、機械翻訳や音声認識にも使われます。人間との会話を可能としたAIも、このRNNというニューラルネットワークを利用しています。(※6)

AIとの会話を可能にするRNNとは

RNNはニューラルネットワークの進化系ともいわれています。これまでのAIによる自然言語処理では、あいまいな表現や文章の中で省略されたものを判断することが難しいとされてきました。人間と会話するためには、そのような課題を解決しなければなりません。

 

RNNは時系列でのデータ処理ができるので、会話の時間的な流れというものを記憶し、省略された言葉も推測して会話を成立させることができます。

 

たとえば「昨日」と「財布」という2つの単語を得た普通のAIは、直前に得た「財布」に関連する言葉のみを推測しようとします。しかしRNNの場合はその前の「昨日」という単語とセットにして次の言葉を推測します。「昨日」と「財布」でどうしたのかと考えるので、たとえば「落とした」「買った」「置いてきた」などと推測できるのです。(※2)

 

人間と自然言語による会話を成立させるためには、相手の話す言葉のなかで足りない情報を推測することが必要になります。その推測をRNNを使ったAIが可能にします。

 

また足りない情報を質問により聞き出すという行動も取るようになります。まさに人間のように会話を成立させることができるというわけです。質問して学び、さらに会話を重ねることでAIは賢くなっていきます。やがて本物の人間のように、あたかも思考しているかのように会話ができるAIが誕生するかもしれません。

 

 

RNNを利用してAIが人間と自然な会話ができるようになれば、あらゆる場面で役立てられることでしょう。

遠い未来の技術に思えたことが、すでに実現しようとしています。

 

参照資料

※1 「人間のように自然な対話ができる「alt対話エンジン ver1」を発表」

オルツ (2018/7/25)

https://alt.ai/news/news-dialogue-engine/

 

※2 「Deep Learning入門!最低限知っておきたい技術RNNとは」

エーアイジン (2019/4/1)

https://aizine.ai/glossary-rnn/

 

※3 「路面凍結や損傷、AIで検知 ウェザーニューズ」

日経新聞 (2018/12/20)

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO39201130Q8A221C1000000?s=1

 

※4 「電話で人間そっくりに会話するグーグルの人工知能に、「AIのある未来」の一端を見た」

WIRED (2018/5/13)

https://wired.jp/2018/05/13/google-duplex-phone-calls-ai-future/

 

※5 「囲碁AIのすさまじい進化をプロ棋士が解説、人間の棋譜はもう不要?」

DIAMOND online (2018/1/4)

https://diamond.jp/articles/amp/154418?display=b

 

※6 「ニューラルネットワークとは?人工知能の基本を初心者向けに解説!」

ベネッセ (2017/10/6)

https://udemy.benesse.co.jp/ai/neural-network.html