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2019年07月22日

労働力不足解消のカギ、働き方改革とは!? 長時間労働を減らし業務効率化


国が進める働き方改革とは

働き方改革とは、労働力人口の不足が叫ばれている日本の現状を改善し、豊かな未来にしていくための政府の重大なプロジェクトです。働き方改革は、現在の長時間労働という労働スタイルを改善し業務の効率化を図る、働く人すべてのワークライフバランスを考える絶好の機会にもなっています。(※1)

働き方改革の実現に向けて、政府はどのような形で推進しているのか、また企業はどのように取り組んでいるのかをご紹介します。

 

 

「働き方改革」は2018年6月29日に成立した働き方改革法案に基づき、2019年4月より一部が施行されています(※2)。その目的は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や働き方の多様化に対して、生産性や従業員の満足度を向上させることによって、企業が対応できるようにすることです。

 

政府は働き方改革を推進するために、法整備や支援などを進めています。具体的な取り組みとして、次の7つが挙げられます。(※3)

 

(1)長時間労働の是正

 

中小企業には2020年4月から時間外労働の上限規制が導入されます。大企業では2019年4月から規制が始まっており、原則として月に45時間、年に360時間までに規制されています。

(2)雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

 

2020年4月1日から「同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)」が施行されます。これは同じ職場の同じ仕事に従事する正規雇用者と非正規雇用者の待遇や賃金格差をなくすというものです。

 

(3)柔軟な働き方がしやすい環境整備

 

働き方改革関連法の施行により、企業は「フレックスタイム制」の拡充や「高度プロフェッショナル制度」の創設、企業努力義務として「勤務時間インターバル」制度の導入を促進するなどの具体的な取り組みを行うようになっています。

 

また、残業時間を短縮するために、テレワークによるあらたな雇用確保や、IT・AIの利活用による業務の効率化といった取り組みなどを進めています。

 

(4)ダイバーシティの推進

 

経済産業省はダイバーシティ普及への取り組みとして、「ダイバーシティ経営企業100選」を行い、選定した企業の好事例ポイントをまとめたノウハウを公表しています。さらに「女性活躍躍進」に優れた上場企業を、「なでしこ銘柄」として投資家に紹介しています。

 

(5)賃金引き上げ、労働生産性向上

 

厚生労働省では中小企業や小規模事業者に向けて、最低賃金引き上げに対応する支援制度を実施し、「業務改善助成金」「働き方改革推進支援センター」「時間外労働等改善助成金」といった支援を行なっています。

 

(6)再就職支援と人材育成

 

再就職支援として厚生労働省と都道府県労働局が、「労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)」による支援を行なっています。また人材育成の支援として、非正規雇用者のための「キャリアアップ助成金」や、社員の育成を支援する「キャリア形成促進助成金」といった支援制度もあります。

 

(7)ハラスメント防止対策

 

セクシュアルハラスメントは「男女雇用機会均等法」で、マタニティハラスメントは「育児・介護休業法」で、それぞれに事業主が防止対策を講じることを義務付けています。

 

パワーハラスメントについては、防止措置の義務化を柱とした「改正女性活躍推進法」などが2019年5月29日に可決しました。この公布から1年を超えない時期に政令で定めることになります。(※4)

企業が取り組むべき働き方改革の具体策は?

国が進める働き方改革を具体的なものにするため、働き方改革関連法案の改正に伴い、企業は以下のような具体策を実施する必要が出てきました。(※5)

 

・残業時間の上限規制(大企業では2019年4月から 中小企業では2020年4月から)

・有給休暇5日間取得の義務化(全企業で2019年4月から)

・勤務間インターバル制度実施の努力義務(全企業で2019年4月から)

・時間外割り増し賃金率の適用(大企業は適用済み 中小企業で2023年4月から)

・産業医機能の強化と労働時間の把握義務(全企業で2019年4月から)

・同一労働・同一賃金の適用(大企業では2020年4月から 中小企業では2021年4月から)

・高度プロフェッショナル制度の創設(全企業で2019年4月から)

・3ヵ月でのフレックスタイム制適用(全企業で2019年4月から)

 

この中でも優先的に対応すべきと言われているのが、時間外労働の削減と労働時間の把握問題です。企業には、従業員の健康やワークライフバランスを考え、業務の効率化を図りながら残業時間の絶対量を削減する努力が求められています(※6)。それと同時に労働者の労働時間の把握が法的な義務として課せられることとなりました。

まず時間外労働に関しては、法で定める上限を超える残業は禁止となります。前述の通り原則として月45時間、年360時間まで。繁忙期でも月100時間未満、年720時間という規制があり、違反には罰則が伴います。

また労働時間の把握に関しては、産業医との連携や情報提供強化を背景に、労働安全衛生法の改正に伴い正式な義務として企業に課せられることとなりました。労働安全衛生法(※7)も働き方改革関連法案のひとつです。特に大企業においては裁量労働制やみなし残業、フレックス制など複数の制度が入り組んでいるため、正確な労働時間把握のための仕組み作りが急務となっているところもあるようです。

このように長時間労働を減らし、業務の効率化を図ることが目下の企業の課題となっています。ただし、労働時間短縮の最大の課題は、業務量が多く人員が不足していることにあります。働き方改革の推進が労働力不足を解消する様々なアイディアを生み出し、働く環境が連鎖的に改善されていくことが期待されているのです。

その他、企業では働き方改革における具体的な取り組みが始まっています。ある企業では全社員の7割近くとなるパートタイム労働者を短時間勤務の正社員へと転換しました。さらに有期雇用制度を廃止して、全社員を無期での雇用扱いとしています。その結果、パートタイム労働者の離職率がこれまでの3割から半減するといった効果があらわれています。(※8)

 

また、別の例では全社で在宅勤務やフリーアドレスの導入とIT化によって、育児休業からの復帰が早まったり、業務効率が向上したとの意見がみられたりといった効果が出ています。(※9)

 

さらに、高年齢者の就業促進において定年年齢を65歳に引き上げているケースなども見受けられます。さらに役職定年制度を導入して世代交代をスムーズにしたり(※10)、高年齢者の給与水準を高めに維持したりといった取り組みもなされているようです。その結果、高年齢者のモチベーション維持に役立つという効果がみられています。(※11)

国と企業の連携で働き方改革を推進

労働力不足解消のカギは政府と企業の連携による働き方改革の推進にあります。

少子高齢化による労働人口の減少で人材確保が困難になり、ひとりずつの労働量が増加し、労働環境の厳しさにつながりました。

 

政府主導で働き方改革を推進し、企業がそれに応えることによって、さまざまな環境にある人材を雇用し、意欲を持って働くことができる職場を生み出すことができます。

そして働きやすい環境作りをすることにより生産性も向上し、優秀な人材の確保ができるようになり、イノベーションの創出につながることでしょう。

 

そのためにも、今後のさらなる、官民一体となった働き方改革への取り組みが必要と言えるのではないでしょうか。

 

 

 

※1 日本の人事部の「働き方改革、ワーク・ライフ・バランス」の項目
https://jinjibu.jp/keyword/detl/957/

 

INSIGHTS SHAREの「従業員のメリット」の項目
https://www.nice2meet.us/what-is-merit-and-demerit-in-work-style-reform

 

※2 厚労省の「働き方改革推進関連法(※1)のポイント」より
https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/000261093.pdf

 

※3「働き方改革」の実現に向けた厚生労働省の取組みより
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

 

※4 厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

 

※5 厚労省のサイト「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要」より
https://www.mhlw.go.jp/content/000332869.pdf

 

※6 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html

※7 労働安全衛生法
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74001000&dataType=0&pageNo=1

 

※8~※11 企業での働き方改革における具体的な取り組み事例
https://bizhint.jp/report/98789

 

<その他の参考資料>
「【わかりやすい】「働き方改革」とは。変わる5つのこと、目的・概要まとめ」インテージ
https://www.intage.co.jp/gallery/hatarakikatakaikaku/