FEATURES東京個別チャンネル

FEATURES一覧に戻る

2018年04月16日

【てら先生コラム】第2回:『子どもがスマートフォンばかり見ていて勉強しません』というご相談

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「子どもとスマートフォン」について。

保護者ガイダンスで最も多かったご相談は?

 

 2018年3月に開催された保護者ガイダンスのいくつかの会場で、保護者が悩んでいる点について回答する機会がありました。その際、どの会場でも共通して頂いたのが「子どもがスマートフォンばかり見ていて勉強しないのですが、どうしたら良いのでしょう」というご相談でした。

 この「子どもが〇〇ばかりで勉強しないのですが、どうしたら良いのでしょう」という質問は、昨今、急に増えてきた質問ではありません。〇〇にあてはまるものが、テレビであったり、マンガ・ゲームであったりと時代や子どもの嗜好により異なりますが、いつの時代でも子どもを魅了するものは尽きないようです。それら子どもを魅了するものが、子どもの勉強時間を奪っているのではないかという保護者のお悩みは、30年前も今もなくなっていないようです。

そこで、今回はこの点について考えてみたいと思います。

スマートフォンを使用すると成績が下がる?

 

仙台市の市立中学生約2万4千人に対して行われた「仙台市標準学力検査」と「仙台市生活・学習状況調査」をもとに分析された研究※1によると

 ①1日1時間以上スマートフォンを利用すると、成績が下がる傾向がある

 ②スマートフォン等を所持している7割以上の中学生が、家庭で勉強中にスマートフォン等を操作している 

 ③3割以上の生徒は学習中にゲームで遊んでいた

といった結果が出ており、保護者が学業成績への影響を心配されるのはもっともだと思います。

 成績は『勉強の質』×『勉強の量』で反映されますが、1日24時間の中で、スマートフォンを使用する時間が増えれば、勉強時間が減る可能性も高まり、「勉強の量」が減る危険性は高いでしょう。

また、勉強中にメールやメッセージのやりとりをする「ながら勉強」は、集中して勉強するという「勉強の質」を低下させてしまうでしょう。

 子どもの意識の中での「勉強時間」は、「勉強部屋にいる時間」であったり、「机の前に座っている時間」であったりしがちで、「集中して勉強している時間」とは限らないように思います。先の調査では、1日1時間以上スマートフォンを利用すると、1日4時間以上「勉強している」(子どもの自己申告)にもかかわらず、成績が下がる傾向が見えますが、集中度の低い勉強を長時間していたとしても成績に結び付きにくいでしょう。それはスマートフォンに限らずテレビやゲームであっても、勉強していなかったり、「ながら勉強」を続けていれば同様の傾向を示すように思います。

スマートフォンを子どもから取り上げれば勉強するようになる?

 

 では、「子どもが〇〇ばかり」の「〇〇」を保護者の方針で子どもから取り上げたら、成績は上がるのでしょうか。確かに、成績が上がる子どもはいるでしょうが、「○○」をやめただけで成績が上がる子どもはそれほど多くはないと経験上いえます。今回のご相談でいえば、スマートフォンが最優先で勉強の優先順位が低い子どもに対してスマートフォンを禁止したところで、子どもが勉強の優先順位を上げて「集中して勉強する」ようになり、成績が上がるとは限らないと思います。

 現実には、取り上げた「〇〇」の代わりに、別のものが「〇〇」に入ってくることが多いように思います。勉強や学習への意欲・モチベーションが低いままでは、いつまでたっても勉強の優先順位は上がりません。残念ながら、「やることがないから勉強でもしてみようか」と思うような子どもはほとんど見かけません。「〇〇」を取り上げて子どもが自由に使える時間を増やしても、「勉強の量」が増えなければ成績アップにはつながらないのです。

 何かを我慢してでも勉強の優先順位を上げて実際に勉強する子どもは、何かを我慢してでも心から達成したいと思える目標を持っている子どもや、勉強する習慣がついている子どもに多いように思います。そのため、東京個別・関西個別では、日々するべき学習内容を明確化して取り組みやすくすることで学習習慣を身につけやすくする指導や、前回触れた学習の質が上がるような、「勉強の仕方」を指導しているのです。そして、なぜ勉強するのかを、将来の夢から一緒に考えて志望校や目標を決めるプロセスを大切にしているのです。

親子コミュニケーションの中からルールを決めて『約束』を交わす

 

ご家庭の方針や子どもの年齢にもよりますが、一概にスマートフォンを禁止するのはいかがなものかと思います。現代社会においてスマートフォンは必需品と呼べるツールです。また、子どもの将来のことを考えて今のうちからメデイア・リテラシー※2を育成しておくという点でも、全く操作できないよりも使いこなせる方がよいでしょう。確かに学業面以外でも、視力の低下や「スマホ依存症」といった心身の健康面を含めて、さまざまな危険性もありますが、だからこそ、リスクを理解しながら上手に付き合っていけるように家庭内で段階的に教育していくことが望ましいのではないでしょうか。

 

そこで、「子どもがスマートフォンばかり」というご家庭には、保護者と子どもがスマートフォンの使用について『約束』を取り交わすことをお勧めしています。食事の最中や勉強時間中はスマートフォンの電源を切る、といった『約束』、一日の使用時間を1時間までにするといった『約束』など、内容はご家庭によってさまざまであって結構です。

『約束』の実効性を持たせるために

 

中高生になれば善悪の判断がつく子どもの割合は多くなります。例えば、勉強時間中にスマートフォンでメールやメッセージのやりとりをする「ながら勉強」は『良いことではない』と、多くの子どもは気づいていますし、その理由を話してあげれば、ほとんどの子どもは理解するでしょう。しかし、『「ながら勉強」は禁止』と、一方的に保護者から命じられても、子ども自身が納得していなければ、『それは保護者が勝手に言っているだけで、自分には関係ない』ことになってしまいます。さらに、『「ながら勉強」は良いことではない』と理解していても、『「ながら勉強」をしない』という約束をした覚えがなければ、『「ながら勉強」をしてはいけない』と思わないのが、子どもの考え方なのです。ですから、『約束』は、子どもと話し合って、子ども自身が内容の決定にかかわり、子どもも保護者も双方が納得できる内容であることが大切です。保護者が頭ごなしに『きまり』を定めて、子どもに従わせようと命じても、子どもは『押しつけられた』としか感じず、『約束』をしたという意識は持たないものなのです。

このように、子どもと『約束』を交わすには、子どもに理解させ、納得させ、内容決定にも関与させるプロセスが必要なのです。

 

そのうえで、交わした『約束』はご家族全員で守っていくというプロセスが重要になります。『約束』をお母様と交わしても、お父様が『約束』の内容を知らなければ「たまにはいいじゃないか」となってしまいます。食事中はスマートフォンを触らないという『約束』を子どもと交わしても、食事中に保護者がスマートフォンを見ていたら、子どもはどう感じるでしょうか。そして、テスト前に、子どもがスマートフォンを使っていても、『約束』の範囲内であれば、保護者は注意するのを我慢するような忍耐も必要になってきます。

また、どこまでの『約束』違反は許されるかを試してくる子どもも中にはいます。ここで妥協してしまうと、『約束』は形骸化してしまいます。『約束』は守らなければならないものだという意識を子どもに持たせるには、決めた『約束』を厳格に守り、徹底して守らせる接し方が必要でしょう。

自信が持てない保護者には、1学期の間はこの内容の『約束』をして、夏休み以降は『約束』の内容を話し合い、改めて『約束』するというように、『約束』の期限を定めることもお勧めしています。そうすると、「いつまでスマートフォンをやっているの」「何度言ったらわかるの」ではなく、「あなたと『約束』したよね」と子どもへの注意の仕方も変わってきます。

 

新年度をきっかけに、スマートフォンを持たせるかどうか検討なさるご家庭もあるでしょう。この機会に、ご家庭の『約束』を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

※1 平成27年度仙台市標準学力検査、仙台市生活・学習状況調査における小5~中3の詳細な分析結果に基づく『仙台市「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」』による研究。

※2 メディア・リテラシー(media literacy):世の中に存在する膨大な量の情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力。

~【てら先生】プロフィール~

 

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。