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2018年11月02日

【教育改革】第9回:「大学入試改革と中学入試」 前編

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第9回目は『大学入試改革と中学入試 前編』についてお届けします。

教育改革

◇開成中学校の国語入試問題

 

 2018年2月に実施された開成中学校の入学者選抜試験の国語の問題で、片方の社員を評価する部長に対して、それを否定する社長の考えをグラフから読み取る問題が出題されました。グラフを読み取って考える国語の問題の出題は同校ではおそらく初めての出題であったのではないでしょうか。

 中には、動揺してしまった受験生もいたのではないかと思います。このような、話し合いの内容をふまえ複数の資料から情報を選択・整理し,目的に応じて適切にまとめる問題は、『大学入学共通テスト』 2017年試行調査*¹ での国語の記述問題でも出題されており*² 、開成中学校の入試問題との類似性が話題になりました。そこで、今回は、大学入試制度改革の中学入試への影響について考えてみたいと思います。

◇大学入試制度改革は二段階

 

 今回の大学入試制度改革は、「明治以来の大改革」と評価する政治家もいるような大規模な改革です。*³ そのため、制度の大幅な変更による受験生・高等学校・大学への影響や学習指導要領の改訂スケジュールも考慮して、2段階の制度改革になっています。それを表にまとめると右記のようになります。

 

 2018年度の高校1年生から中学生が、大学入試制度改革の「改革第一弾」の学年だとすると、2018年度の小学生が大学入試制度改革の「改革第二弾」の学年といえます。この、大学入試制度改革の「改革第二弾」の最初の学年が2018年度の小学6年生ということになります。この学年の一部の子どもが、間もなく中学受験を迎えることになります。

 

 2019年度の中学1年生は、6年後の大学受験生という見方もできます。ですから、大学入試制度改革の影響は、大学入試制度が変わる年の6年前には中学入試において、先行して始まっていると言えます。そして、新しい大学入試制度に立ち向かえる潜在能力のある子どもに一人でも多く入学してもらうために、各中学校が受験生へ送っているメッセージが入学試験問題なのです。ですから、中学入試問題が大学入試問題や高校入試問題よりも先に変わっていくのは当然のことなのです。

◇思考力・判断力・表現力などを問う問題や記述問題

 

 『大学入学共通テスト』 2017年試行調査での国語の記述問題では、複数の文章の内容を正しく理解し、それぞれに関連する内容や話のつながりについて把握して記述する問題や、本文全体の要旨をふまえた上で、自分の経験や知識と結び付けながら整理して答える問題が出題されましたが、このような問題は公立中高一貫校の適性検査でも以前から出題されています。*⁴  公立中高一貫校だけではありません。首都圏の私立中学入試での適性検査型(思考力型)入試実施校は2014年には38校に過ぎませんでしたが、2015年以降に53校、86校、120校と増加し続け、2018年には136校にも及びました。*⁵

 

 解答形式も、現行の『大学入試センター試験』は、「知識・技能」領域を中心に全てマークシート方式で実施されていますが、『大学入試センター試験』を受験するのは2018年度の高校2年生までとなり、2018年度の高校1年生からは、『大学入学共通テスト』を受験することになります。『大学入学共通テスト』は、「思考力・判断力・表現力」領域を中心に「知識・技能」領域についても出題され、一部(数学Ⅰと国語総合)で記述式問題が導入されます。そして、2018年度の小学生が受験することになる『大学入学共通テスト』での記述問題の出題は、社会(地歴・公民)や理科にも拡大する方針が決まっています。*⁶

 その方針を受けてか、知識・技能を問う問題数を減らして記述問題の出題を始めたり、出題数を増やしたりする私立中学校も増えています*⁷。

◇中学入試でも英語が出題

 

 2018年度の高校1年生から中学1年生までは、『大学入学共通テスト』での英語の出題がありますが、2018年度の小学6年生が『大学入学共通テスト』を受験する時には、英語については全受験生が英語資格・検定試験の結果を活用することになっており、英語の四技能のバランスの良い育成が求められています。その中で、2018年度から小学5・6年生は外国語(英語)授業の先行実施が始まりました。

 

 首都圏の私立中学入試での英語(選択)入試実施校は、2014年には15校に過ぎませんでしたが、2015年以降に32校、64校、95校と増加し続け、2018年には112校にも及びました。*⁸

そして、慶應義塾湘南藤沢中等部が2019年度入学者選抜から、国語・英語・算数の3科目入試も取り入れることになりました。*⁹  

共立女子中学校のように、英語を用いたゲームや対話等を通して英語の理解力や英語を用いてのコミュニケーション能力を測る試験を実施する学校も登場しました。公立中高一貫校でも、大宮国際中等教育学校(2019年4月に開校)の第二次選抜で行われる集団活動では英語を使ったコミュニケーションをするために必要な力を評価することが発表されています。*¹⁰ 

 また、開成中学校の校長先生が中学入試で英語を導入すると決定したわけではありませんが、学内で検討はしていることを公にして話題になりました。*¹¹

 このような動きから、中学入学者選抜に英語を試験科目に加える中学校は今後も増えていくでしょう。

  現在のところ英語が必須科目に指定されていて、英語の試験を受験しなければ合格できない中学入試は(帰国生入試を除けば)ないようですが、数年後にはそのような学校も出てくるかもしれません。

◇保護者が準備しておきたいこと

 

 このように、大学入試制度改革をはじめとする教育制度改革にも影響を受ける形で、中学入試環境も大きく変わりつつあります。

 中学受験を考えている小学生の保護者は、これまで以上に私立中学のHPをチェックするなどして情報収集を行っておく必要があるでしょう。

 英語入試実施校が増加していますが、2018年10月時点では、英語を出題している大手中学入試模試業者はありませんので、英語も含めた合格可能性判定を模擬試験からは得ることができない状況です。また、また、中学受験対策の学習塾と英語塾の両方に子どもを通わせている保護者は、例えば、国語・算数・理科・社会の学習と英語の学習の配分を志望校別や子どもの学年別に見直して行く必要も出てきます。そんな時に、子どもの個性や強みを活かせる学校や受験方法を相談できる場所を確保しておくことも重要になってくるでしょう。

 また、中学受験を考えていない小学生の保護者も、6年後(以降)の大学受験生の保護者であることには変わりありません。今後の進学先や社会から必要とされる力がどんな力で、その力を育むためにどのような準備をしておくと良いのかといった情報収集や相談できる場所の確保は、中学受験を考えていない小学生の保護者にも必要なことなのです。

 

 

 

 

*¹ 『大学入学共通テスト』という新しいテストの問題構成や内容を決定していくにあたって、新テストで測りたい力を問う問題を出題した場合の正答率や解答の傾向を予め分析しておく必要があります。また、記述式問題を導入した場合の試験運営や採点上の課題を洗い出し、解決しておく必要があります。このような理由で、2021年1月から開始される『大学入学共通テスト』本番に向けての調査研究を試行調査で行っています。2017年11月、2018年2月、2018年11月に実施されました。

 

*² 平成29年度試行調査_問題、正解表、解答用紙等(大学入試センター)

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011239.pdf&n=5-01_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E5%9B%BD%E8%AA%9E.pdf

 

*³ 2015年5月8日 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20150508/org/00m/100/026000c

 

*⁴ 例えば東京都立小石川中等教育学校

http://www.koishikawachuto-e.metro.tokyo.jp/site/zen/entry_0000013.html

 

*⁵ 2018年入試では136校が「適性検査型入試」を実施!(首都圏模試センター2018年1月9日)

https://www.syutoken-mosi.co.jp/blog/entry/entry000986.php

 

*⁶ 大学入学共通テスト実施方針策定に当たっての考え方(文部科学省)

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/24/1397731_002.pdf

 

*⁷ 例えば神奈川学園中学校の入試説明会では「小問の出題数を減らし、論理的思考力を問う問題を増やした。 試行調査問題でみられた「対話形式の問題」を出題する。対話の場面から条件を整理する「読解力」「論理的思考力」を問う。 リード文や与えられた資料で新たに知った概念と、日常の現象を結びつけて考える問題を出題する」といった発表がありました。

 

*⁸ 2018年入試では112校が「英語(選択)入試」を実施!(首都圏模試センター2018年1月9日)

https://www.syutoken-mosi.co.jp/blog/entry/entry000984.php

 

*⁹ 慶應義塾湘南藤沢中等部生徒募集要項

http://www.sfc-js.keio.ac.jp/2018/09/2019年度%e3%80%80慶應義塾湘南藤沢中等部%e3%80%80生徒募集要項/

 

*¹⁰ 平成31年度さいたま市立大宮国際中等教育学校 生徒募集要項

http://www.city-saitama.ed.jp/ohmiyakokusai-h/nyuugaku/1.pdf

 

*¹¹  中学入試に英語、開成「学内で研究」 進学校の考えは (朝日新聞デジタル 2018年1月25日)

https://www.asahi.com/articles/ASL1L3259L1LUTIL002.html