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2019年05月01日

【教育改革】第15回:「大学入試英語成績提供システム」

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第15回目は「大学入試英語成績提供システム」についてお届けします。

 2021年度入試から実施される大学入学共通テストでは、英語筆記とリスニングの試験も実施されますが、国公立大学を中心に民間の英語資格・検定試験の結果も活用することになっています。大学入試センターから2019年1月に「『大学入試英語成績提供システム』の概要」について」*¹、4月に「「大学入学共通テスト実施方針(追加分)」に関する情報」*² が発表されました。

 

 今回はこの『大学入試英語成績提供システム』についてみていきたいと思います。なお、本記事は2019年4月8日段階での情報を元に記しています。その後情報が追加されたり変更になる可能性があることを予めご了承ください。

◇『大学入試英語成績提供システム』の目的

 

 大学入試センターが『大学入試英語成績提供システム』の要件を満たすと認定した英語資格・検定試験は、ケンブリッジ英語検定, TOEFL iBT, IELTS, TOEIC L&R /TOEIC S&W, GTEC,TEAP, TEAP CBT,実用英語技能検定ですが*³、

それぞれ実施時期や試験日や試験方式が異なります。

 

 2019年1月実施の大学入試センター試験の志願者は576,830人でした。*⁴

大学入試センター試験の後継試験として、大学入学共通テストが開始され、大学入学共通テスト開始と同じ年度にスタートする『大学入試英語成績提供システム』は、この60万人近い受験生の、上記のように異なる種類の英語資格・検定試験の結果を集約して、受験生が志願する大学に英語資格・試験結果(スコア・CEFR段階*⁵・級の合否)を速やかに提供することで、受験生が成績証明書を取得したり、大学が受験生から提出された紙の成績証明書の成績情報を入力したりする手間を省くことを主な目的としています。

◇『大学入試英語成績提供システム』の流れ

 

 では、『大学入試英語成績提供システム』を利用する流れはどうなっているのでしょう。

まず、2019年度の高校2年生は、2019年11月から在籍高校を通して大学入試センターに共通IDの申し込みを行います。どの英語資格・検定試験を受験するかにかかわらず全ての英語資格・検定試験共通で個人を特定するためのコードとして、個人ごとに共通IDを大学入試センターが発行します(無料)。共通IDの申し込みは高校3年生の9月まで可能です。この共通IDは2年間有効ですので、「現役」受験生の時に使用した共通IDは、「一浪」受験生の時にも使用することができます。

 

 受験生が、英語資格・検定試験の受験申込の段階で共通IDを記入した場合、英語資格・検定試験の結果が受験生だけではなく大学入試センターにも送付されます。この場合、大学入試センターから大学に試験結果が送られるのは、高校3年生の4月から12月の2回までとなります。

 

 この、大学入試センターから大学への成績提供は、9月以降に実施される総合型選抜(現在のAO入試)や11月以降に実施される学校推薦型選抜(現在の推薦入試)での利用も考慮し、例えば9月以降、11月以降、2月以降の3期間といったように複数回設定される予定になっています。

もし、共通IDを記入して3回以上受験した場合は、最初の2回の結果のみ大学入試センターから送られます。この2回の英語資格・検定試験は、TEAPで1回,IELTSで1回といったように異なる種類の英語資格・検定試験でも良いことになっています。

 

 共通IDを記入せずに英語資格・検定試験を受けた場合は、高校3年生の4月から12月の2回までという回数制限の対象外となります。ですから、英語資格・検定試験を2回しか受験することができないということではありません。

 

 また、共通IDを記入しないで受験した英語資格・検定試験の結果が良かったからと言って、その回の英語資格・検定試験の結果を「2回」に含めることはできません。あくまでも、英語資格・検定試験の受験を出願する際に、共通IDを記入することで、(試験結果を知る前に)「この試験結果を大学に送る」という意思表示をしなければならないのです。

 

 現在でも、英語資格・検定試験を利用した大学入試は盛んに行われていますが、現行では英語資格・検定試験は何回でも受験できて、その中で最も良い試験結果を受験生が選んで大学に提出することができました。英語資格・検定試験の成績の有効期間も2年間とする大学が多く、中には取得年月を問わない大学もあります。このように、従来の英語資格・検定試験の大学入試での利用方法と2021年度入試から取り入れられる『大学入試英語成績提供システム』での英語資格・検定試験の利用方法は異なるのです。

◇受験生がやっておくべきこと

では、これからの受験生がやっておくべきことは何でしょうか。

4点あります。

1.共通IDの申し込みをしておく

 

 『大学入試英語成績提供システム』を使って受験するかどうか決まっていない高校生もいると思いますが、共通IDの申し込みをして、英語資格・検定試験を受験していれば、『大学入試英語成績提供システム』を使った入試方式での受験も可能になります。共通IDの発行は無料ですから、必ず申請をしておくことをお勧めします。また、2019年度の高校3年生も、2019年の11月から高校を通して共通IDの申し込みが可能です。大学受験浪人生となってしまうことを今から考えたくないという気持ちは当然あるでしょうが、受験に「絶対に大丈夫」はないのです。今のうちから出来る準備はしておいた方が良いでしょう。

2.英語資格・検定試験に向けての対策を始め、高校3年生になる前に積極的に資格・検定試験を受験しておく

 

「『大学入試英語成績提供システム』で活用できる英語資格・検定のスコアは高校3年生の4月から12月の2回まで」なのですから、高校3年生になる前に、色々な英語資格・検定試験を受けておいて、どの英語資格・検定試験が自分に向いているのかを実際に受験して確認しておいたり、英語資格・検定試験に慣れておいたり、4技能のうち、どの技能が弱いのかをスコアを確認して対策しておいたりすることは、本番である高校3年生の4月から12月に向けて必要な学習であるといえるでしょう。

 

 また、関西学院大学は、一般選抜入学試験をはじめ、全ての入学試験で英語 4技能を評価する方針なのですが、『大学入試英語成績提供システム』に認定された英語資格・検定試験結果に限らず、高等学校入学後に取得した正規スコアを活用すると発表しています。

武蔵大学も『大学入試英語成績提供システム』は使わず、『大学入試英語成績提供システム』には活用できない従来型の英検も活用でき、資格検定試験の有効期限は2年以内としています。

名古屋外国語大学では、大学入学共通テストを活用する入試方式では、『大学入試英語成績提供システム』を使う(成績有効期限は高3の4月から12月の2回まで)としていますが、一部の一般選抜方式では『大学入試英語成績提供システム』を使わず、大学が指定した英語資格・検定試験(どの資格・検定試験が対象となるのかは未公表)で成績有効期限は2年間としています。

 

 こうしてみると、「『大学入試英語成績提供システム』で活用できる英語資格・検定のスコアは高校3年生の4月から12月の2回までなのだから、高校2年生までにスコアを取得しても無駄・意味がない」とは言えません。

確かに英語資格・検定試験による成績を取得していなくても受験できる大学や入試方式はありますが、英語資格・検定試験によるスコアを持っている受験生よりも、出願できる入試方式が限定されたり、併願校の選択の幅が狭まったりしそうです。例えば、英語資格・検定試験を取得していなければ、上智大学や早稲田大学政治経済学部に出願することができませんし、青山学院大学法学部法学科では、個別学部日程A・B、全学部日程、大学入学共通テスト利用入学者選抜という4つの一般選抜がありますが、英語資格・検定試験を活用しない入試方式は全学部日程のみになります。英語資格・検定試験結果のスコアを持っていないことによるデメリットの方が大きいのです。*⁶

3.志望大学を早めに決めておく

 

 これまで見てきた通り、各大学・学部によって英語資格・検定試験の扱いは様々です。それは、各大学・学部がそれぞれのAdmission policy(各校の入学者受け入れ方針。自校の特色や教育理念などに基づき、どのような学生像を求めるかをまとめたもの)が異なるからです。

 

 例えば、上智大学を第一志望にするのであれば、TEAPやTEAP CBTに向けた対策をしておけば、3種類ある一般選抜の全てに挑戦するチャンスが出てきますが、国際基督教大学が第一志望の場合は、TEAPやTEAP CBTを利用することができません。IELTS , TOEFL , Cambridge English , GTEC CBTのいずれかのスコアが必要になってきます。早稲田大学商学部(英語 4技能型)は 英検と TOEFL iBTのみとしています。

 

 ですから、「志望大学は高校3年生になってから決める」のではなく、できるだけ早めに決めておくことで、目指すべき英語資格・検定試験が定まってきて、準備学習がしやすくなります。高校1年生や2年生の間にオープンキャンパスにも積極的に参加して目標とする大学を早く絞り込んでいくことが必要でしょう。

4.各大学・機関の情報収集をしておく

 

 2019年2月25日現在、2021年度入学者選抜試験について、何らかの発表を行った大学は全体の31%にあたる242大学でした。国立大学が全体の88%、公立大学は全体の81%、私立大学は16%でした。*⁷ 

まだ未発表の大学が多いのは、文部科学省の入試改革の制度が全て発表されていないことにも原因があるように思えます。例えば、「共通ID発行申込案内(仮称)」「共通ID発行取りまとめ要領(仮称)」の高等学校への配付予定が2019年7月、大学への「成績提供要領(仮称)」の配付予定が2019年12月*⁸ ということで、大学入試センターから公表されていません。

 

 また、『大学入試英語成績提供システム』に活用される英語外部資格検定試験の実施回収や実施時期についても、各資格・検定団体から発表がなされていません。大学入試センター、英語資格・検定試験実施団体や気になる大学のHPをチェックして最新の情報を収集しておくことも心掛けていただきたい点です。

 

 また、これまでみてきたように、2021年度からの大学入試は、『大学入試英語成績提供システム』・英語資格・検定試験結果の活用・大学入学共通テストの導入など、今まで以上に複雑になります。だからこそ、適切な進路や出願に関するアドバイスを受けられる相談先を確保しておくことも重要でしょう。

*¹  「大学入試英語成績提供システム」の概要について

 

「大学入学共通テスト実施方針(追加分)」に関する情報 

 

*³ 大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験

    従来型の英検(一次試験と二次試験があるタイプ)は『大学入試英語成績提供システム』に認定されていません。

 

*⁴ 平成31年度大学入試センター試験実施結果の概要

 

*⁵ 外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠「CEFR(Common European Framework of Reference for Languages:Learning,teaching,assessment)」詳しくは、【教育改革】第3回:大学入試制度改革の大きな柱は英語4技能評価

 

関西学院大学(2021年度入学者選抜について)

 

武蔵大学(2021年度入学者選抜の基本方針(予告))

 

名古屋外国語大学(2021年度 名古屋外国語大学入学者選抜について(予告))

 

上智大学(2021年度 学部一般入学試験の新制度決定)

 

早稲田大学(2021年度 政治経済学部 一般入試改革)

 

青山学院大学(2021年度入学者選抜「一般選抜(個別学部日程)」の概要(別表)

 

青山学院大学(2021 年度青山学院大学入学者選抜について)

 

国際基督教大学(2021 年度教養学部入学者選抜の変更点(予告))

 

早稲田大学(2021年度 商学部 一般入試改革)

 

 

*⁶ 【教育改革】第13回:2021年度大学入学者選抜と英語資格・検定試験

 

*⁷ 入試改革情報の公表状況(between)

 

*⁸「大学入試英語成績提供システム」の主なスケジュール(予定)