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2019年08月29日

未来の仕事はAIがカギ? 今後ホワイトカラーの仕事を劇的に変えるかもしれない最先端テクノロジー「RPA」を解説

注目のRPA……その仕組みとAIとの違い

2017年頃から注目されるようになったRPA。総務省の2017年度調査によると、国内では14%以上の企業がRPAを導入しており(※1)、その背景にあるのが「働き方改革」だと言われています。

RPAとは何でしょうか。ホワイトカラーの仕事にどんな影響を与えるのでしょうか。また、そのメリットを最大限受けるにはどうすればよいかを考えていきます。

 

RPAは「ロボティクス・プロセス・オートメーション」の略で、一連のパソコン操作を人間に代わって自動的に行う仕組みのことで、RPAは広義と狭義に分けることができます。

 

広義のRPAとは下記表のように3つのクラスに分けることができます。

クラス1“RPA”は定型業務の自動化、クラス2“EPA”は一部非定型業務の自動化、クラス3“CA”は高度な自律化で、クラス2以上はAIを含む概念となります。なお今回のお話の中心となる“RPA”は狭義のRPAクラス1の事を指します。

(※1)を参照して作成

狭義のクラス1RPAは下記のようなシステム化が見送られてきた手作業の業務プロセスを短期間で導入できる特徴があります。主に事務職の人たちが携わる定型業務の自動化の事を指します。

 

・キーボードやマウスなど、パソコン画面操作の自動化
・ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
・別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
・社内システムと業務アプリケーションのデータ連携
・業種、職種などに合わせた柔軟なカスタマイズ
・条件分岐設定やAIなどによる適切なエラー処理と自動応答
・IDやパスワードなどの自動入力
・アプリケーションの起動や終了
・スケジュールの設定と自動実行
・蓄積されたデータの整理や分析
・プログラミングによらない業務手順の設定

(※1)

導入背景に「働き方改革」――RPAにより働き方はどう変わる?

RPA導入の背景を考える上で欠かせないのが、「働き方改革」です。2019年4月より働き方改革関連法案の一部が施行され、これまで上限規制がなかった残業時間が「原則として月45時間・年360時間」と規制されました(※2)。しかし、単に残業時間を減らしても仕事量が変わらなければ、労働者の負担はさらに増えることになるでしょう。そこで業務そのものの量を削減するために、多くの企業・団体が導入しているのがRPAです。

 

例えば茨城県では、県庁内の4つの業務にRPAを導入する実験を行ったところ、それまで3,210時間/年かかっていた労働時間が433時間/年に激減。平均86.5%もの削減に成功したそうです。今後、類似する40業務にRPAを展開することで、最大46,011時間/年を削減できると試算しています(※3)。

 

RPA導入による労働時間の削減で、ホワイトカラーの働き方はどんな影響を受けるでしょうか。担当者は事務処理などのルーティンワークから解放され、よりクリエイティブな業務に専念できます。また、RPA導入に向けて業務を標準化するプロセスにおいて、手順の改善点や業務の優先度の見直しなども行われていくでしょう。労働時間が減ったとしても、結果的に生産性の向上が期待できるのではないでしょうか。

RPAはこう使う! 威力を発揮する活用法

RPAが得意なのは、ルールと手順がしっかり決まっているルーティンワークです。例えば、経理業務での請求書処理を行うとしましょう。通常はまず請求書をデータ化し、次に発注データを確認。それから発注データを請求書と照合し、一致していれば支払処理を行い、情報を登録して報告を行い、完了となります。RPAはこれら一連の仕事を、人間よりはるかに短時間で、ミスなく大量にやってのけます。

 

そのほか、顧客リストから絞り込んだ相手にダイレクトメールを送ること。在庫数を確認して発注数を割り出し、業者ごとの注文書を作成すること。ExcelやPDFで送られてきた注文書を社内システムに転載し、登録すること。もちろん帳簿入力、伝票作成、経費チェックや精算といった事務作業でも、RPAは威力を発揮します。先ほど例に挙げた茨城県では、システムデータの処理業務や出張旅費の入力業務などにRPAを取り入れました(※4)。

 

これらの業務は月末や年度末に集中しがちで、担当者はその時期、大幅な残業を余儀なくされたり、外部に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)で乗り越えていたかもしれません。しかしRPAを導入することで、そうした問題の解決も期待できるようになることでしょう。 

導入前が肝心。RPA導入にあたり注意すべき点とは

RPAのメリットを最大限に活かすためには、導入前に、誰のためにどのような目的でRPAを導入するのか、導入方針を明確にしておくことが重要です。さらに、RPAツールについての研修を行うことも有益でしょう。他のIT技術導入との違いを皆が理解することで、RPAは何でもできる! という過剰な期待や不安を取り除くこともできます。

 

導入方針を明確にすることは、自社に合ったRPAツールを選ぶうえでも役立ちます。ツールによって得意分野が異なります。目的・利用分野を明確にしておくことは、自社にとって最大限のメリットを享受できる最適なツール選びにもつながることでしょう。

 

さらにRPA導入後も、主役はあくまで現場で働いている人たちであるという点を忘れずにいたいものです。現場でRPAを実際に使用している担当者の評価を尊重し、その人たちの声にいつでも対応できる体制を作ることで、さらにRPAを効果的に活用できるようになるでしょう。

 

RPAの導入は今後もますます進むと予想されています。運用においては、導入前に機能や方向性を明確にして皆の理解を得、現場の声を尊重することで大きなメリットを享受できます。

RPA導入は、ホワイトカラーの働き方に大きな変化をもたらすかもしれません。その変化をぜひとも最大限に活用し、よりクリエイティブな働き方ができる社会になることを期待したいものです。

 

 

[参照元]

※1 総務省メールマガジン「M-ICTナウ」

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html

 

※2 厚生労働省働き方改革特設サイト

https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html

 

※3 茨城県「2019年6月20日付度報道発表資料」

https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/ict/20181101.html

 

※4 茨城新聞「クロスアイ」

https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15408982311732