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2018年09月01日

【教育改革】第7回:55年ぶりの新たな大学制度「専門職大学・専門職短期大学」とは

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第7回目は『55年ぶりの新たな大学制度「専門職大学・専門職短期大学」』の評価についてお届けします。

教育改革

◇55年ぶりに新しい種類の大学が生まれる

 

 これまで、多くの高校生の卒業後の進学先は大学・短期大学か専門学校(専門課程を置く専修学校)でした。そこに2019年春から、「専門職大学」「専門職短期大学」という新たな学校が加わります。*¹ 大学体系に新しい大学の種類が追加されるのは、1964年に短期大学が制度化されて以来、55年ぶりのことです。

 専門職大学・専門職短期大学は、実践的な職業教育を高等教育レベルで行う教育機関です。このような教育機関は、欧米を中心に諸外国にもあります。*²

 少子高齢化・ICT化・グローバル化など、私たちを取り巻く社会環境が変化していく中で、今後、職業のあり方や働き方も大きく変わることが予想されます。そのような中で、優れた専門技能などをもって、新たな価値を創造することができる専門職業人材の育成が不可欠なため、新たな教育機関として専門職大学等が創設されることになったのです。

◇大学のような教養としての学問や教育ではなく、高度専門職業人の養成機関

 

 今までの大学の目的は、幅広い教養や、学術研究の成果に基づく知識・理論を身につけることにあり、専門学校の目的は、特定職種の実務に直接必要となる知識や技能を身につけることにありました。これに対して、専門職大学・専門職短期大学の育成すべき人物像としては、「理論にも裏付けられた高度な実践力を強みとして、専門業務を牽引できる人材」かつ「変化に対応して、新たなモノやサービスを創り出すことができる人材」とされており、*³ 大学レベルの知識と実践的な職業能力の双方を習得することを目的としています。

ですから、専門職大学・専門職短期大学では、専門学校で学ぶ内容よりも、更に高度化させた内容を学ぶことになります。現在、2019年度に設置認可を申請している16校(うち専門職短大3校)は、いずれも専門学校を持つ学校法人によるものです。*⁴ これらの学校法人が、これまで行ってきた教育を更に高度化させた教育を行い、これからの社会で活躍する人材を育成すると期待されています。

◇卒業すれば「学士(専門職)」「短期大学士(専門職)」の学位

 

 4年制の専門職大学では、高度なスペシャリストの養成が求められているため、40単位以上の授業を実習で行うこととされており、そのうち20単位以上を長期の企業内実習(インターンシップ)にあてることが定められています。*⁵ これは、アカデミックな研究者やゼネラリストの養成も想定している大学と大きく異なる点です。

 また、専任教員のおおむね4割以上は想定される進路先の実務経験と実績を持った「実務家教員」とし、その半数以上は研究能力を併せ有することを義務付けられています。ですから、学内でも実践的な知識・技術を学ぶことができるのです。

 

 一方で、実践的な職業教育だけでなく、それを支える教養も習得しなければなりません。

ですから、外国語やICTといったさまざまな職種を通じたキャリア形成の基礎となる、従来の大学の教養科目にあたる「基礎科目」も20単位以上履修することになります(専門職大学の場合)。*⁶

 

 専門職大学(修業年限4年)、専門職短期大学(修業年限2年又は3年)を卒業したら「学士(専門職)」「短期大学士(専門職)」の学位が得られます。例えば就職活動では、専門職大学卒業者は大卒扱い、専門職短大卒業者は短大卒扱いとなります。専門職大学・専門職短期大学は来春開校するので、まだ卒業生がいません。したがって、卒業後にどのような道に進んでいるのかという実績はありません。しかし、専門職大学で学ぶ人に対しては、産業界の様々な分野から期待されています。

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◇進路選択肢が多様化する

 

 医療・福祉、デザイン・ファッション、経営、栄養・食物、動物ケアなど、さまざまな学科の専門職大学・専門職短期大学が開設予定となっています。専門職大学等の新教育制度の創設によって、高校生の進路の選択肢が広がるわけですが、どのような生徒が向いているのでしょうか。

 就きたい職業が明確に決まっている生徒や、机に向かって勉強するよりも実習が好きな生徒の選択肢になるのではないでしょうか。そうした生徒にとっては、長期間のインターンシップをはじめとする実践的なカリキュラムは、大変魅力的でしょう。また、専門学科の高等学校に通う生徒にとっては、高校での学びをさらに深められる学校になるはずです。

 

 また、いったん就職した人が専門職大学に進む道もできるでしょう。従来の大学以上に、専門職大学の門は広く開かれており、社会人の入学者も増えていく可能性があります。社会人になっても必要に応じて専門職大学で学び直しをすることもできるようになるのです。

 

 このような進路選択肢の多様化に伴い、自分の今後の人生をどのように生きていきたいのか、そのためにどのように学んでいきたいのかを、高校時代から考えていく必要性が増していきます。子どもの人生設計について、ご家庭内でのコミュニケーションをとることが今後ますます大切になってくるでしょう。そして、高等学校や塾での子ども一人ひとりに寄り添った進路指導の役割も更に高まってくると言えるでしょう。

 

 

 

*¹ 他に、専門職学科という、既存の一般大学に専門職大学と同じように実践的な職業教育を行う学科も新設される。

*² 例えば、ドイツ(Fachhochschule),フランス(Grandes Écoles),フィンランド(Polytechnic)など。

*³ 文部科学省 専門職大学等の制度化に関する説明会(平成29年度11月16日)配布資料 1制度の趣旨・背景等について より

*⁴ 文部科学省(平成29年12月) 平成31年度開設予定大学等認可申請一覧

*⁵ 文部科学省 専門職大学等の制度化に関する説明会(平成29年度11月16日)配布資料「専門職大学設置基準」より 

*⁶ 「基礎科目」の他に、「職業専門科目(4年制専門職大学で60単位以上)」「展開科目(同20単位以上)」「総合科目(同4単位以上)」が卒業に必要な単位数となる。文部科学省 平成29年9月8日公布(平成29年文部科学省省令第33号・第34号)「専門職大学設置基準及び専門職短期大学設置基準(省令)の制定について」より