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2019年06月03日

【教育改革】第16回:THE 世界大学ランキング日本版にみる日本の大学の教育力

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第16回目は「THE 世界大学ランキング日本版にみる日本の大学の教育力」についてお届けします。

 イギリスの高等教育専門誌である「Times Higher Education」は2019年3月27日、ベネッセグループの協力をもとに「THE世界大学ランキング日本版2019」にランクインした151大学を発表しました。*¹ 

 Times Higher Educationの「世界版」のランキングは、「教育」「研究」「被引用論文」「産業界からの収入」「国際性」の5つのランキング指標で大学をランク付けしたものです。*²

 これに対して、「日本版」のランキングは、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」の4分野16項目で構成されています。*³

 「世界版」が大学の「研究力」を重視して測定しているのに対して、「日本版」は大学の「教育力」を測る設計となっているのですが、今回は、多くの日本の大学が名前を連ねる「日本版」のランキングをみてみたいと思います。

◇総合ランキング

 

総合ランキングをみると、

 1位 京都大学

 2位 東京大学

   3位 東北大学

   4位 九州大学

   5位 北海道大学と名古屋大学

   7位 東京工業大学

   8位 大阪大学

   9位 筑波大学

 10位  国際教養大学

となっています。

 

「世界版」では、東京大学が42位に対して京都大学が65位と、東京大学が上回っていましたが、「日本版」では京都大学が1位となっています。トップ10に旧帝国大学*⁴がずらりと並ぶ中に、唯一の公立大学である国際教養大学が10位に入っている点や、11位に国際基督教大学が早稲田大学の13位、慶應義塾大学の14位よりも上位に入っている点も注目されます。

◇国際性

 

 国際教養大学や国際基督教大学が共通して早稲田大学や慶應義塾大学よりも上回っている分野が、「国際性」です。また、東京大学と京都大学で最も評価の差が大きかった分野も「国際性」でした。

「国際性」は、「外国人学生比率」「外国人教員比率」「日本人学生の留学比率」「外国語で行われている講座の比率」で評価されます。

この「国際性」の評価が高い順に日本版ランキングを並べ替えてみると以下のようになります。

( )内の順位は、総合ランキングの順位です。

 

 

 1位 国際教養大学(10位)

 2位 国際基督教大学(11位)

   3位 立命館アジア太平洋大学(27位)

   4位 大阪女学院大学  (141-150位)

   5位 東京国際大学(111-120位)

   6位 神戸市外国語大学 (51位) と麗澤大学(121-130位)

   8位 上智大学(17位)

   9位 名古屋外国語大学(74位)

 10位 長崎外国語大学 (151位+)

 

1位の国際教養大学と6位の神戸市外国語大学以外は、トップ10に入った大学は私立大学ですが、偏差値の高い、いわゆる「難関私立大学」には含まれない大学も上位に位置していることがわかります。2021年度入学者からの大学入試制度改革や、入学定員管理の厳格化によって、受験生の安全志向が高まり、私立大の志願者数が増加傾向にありますが、18歳人口の減少という現実から、特に私立大学では生き残りをかけた入試改革(学生募集改革)や大学教育改革を進めています。学生募集においては、今後は、留学生獲得の国際的競争に目を向けざるを得なくなることからも、大学の国際化が必要なのです。

◇教育充実度

 

 また、日本版ランキングの「教育の充実度」は、高校教員への調査(「グローバル人材の育成」「入学後の能力伸長」)と学生への「教員・学生の交流、協働学習の機会」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」という調査結果になっています。この「教育の充実度」の評価が高い順に日本版ランキングを並べ替えてみると以下のようになります。( )内の順位は、総合ランキングの順位です。

 

 1位 国際教養大学(10位)

   2位 国際基督教大学(11位)

   3位 筑波大学(9位)

   4位 上智大学(17位)

   5位 立命館アジア太平洋大学(27位)と神田外語大学(34位)

   7位 北海道大学(5位)

   8位 東北大学(3位)

   9位 名古屋大学(5位)

 10位 東京外国語大学(20位)

 

となり、こちらも総合順位とは異なった様相ですが、上位18位までは1大学を除き、「スーパーグローバル大学」*⁵が並んでいます。神田外語大学は、スーパーグローバル大学支援対象大学ではありませんが、5位に入っています。この神田外語大学の「教育の充実度」順位は昨年調査の30位から5位へと大きくランクアップしています。国際基督教大学(10位から2位)、上智大学(12位から4位)、立命館アジア太平洋大学(21位から5位)とランクアップしています。東洋大学も31位から14位へと上昇して、「教育の充実度」が今年15位の京都大学よりも上位に入りました。

 

 このように、分野ごとの順位をみていくと、各大学の特徴がみえてきます。例えば、総合順位57位の津田塾大学の「教育の充実度」は20位ですし、総合順位46位の福岡女子大学の「国際性」は13位と強みをもっていることがわかります。

 また、調査結果の推移をみていくと、秋田大学、学習院大学、横浜市立大学、豊田工業大学、京都工芸繊維大学、大阪府立大学などは2017年版から2019年版にかけて連続して総合順位を上げています。

◇保護者にできること

 

 高校生にとって、大学は「未知の世界」です。大学について考えるといっても知らないことが多いため、どのように決めたら良いのかがわからず、「名前を知っている大学だから」「なんとなくイメージが良いので」「偏差値が高いので」「入試科目に苦手科目が少ないので」といった理由から、志望大を決定してしまう高校生も多いのも現実です。また、大学入試制度も大学での教育も、保護者が経験した大学受験や大学とは大きく様変わりしていますが、保護者世代の感覚で「〇〇大学以下の大学は子どもに通わせる意味がない」と話す保護者も少なからず存在します。

 

 世界大学ランキング日本版のランキングでの順位は、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」という4分野と16項目による評価であり、このランキングのみで大学の優劣を決めることはできません。別の評価方法で算出している他の大学ランキングでの順位が異なることがあるからです。*⁶

 

 しかし、こうしたランキングは、その「評価基準」を確認したうえであれば、今までとは別の視点で幅広く各大学の特徴を知ったり、偏差値や就職率、知名度に偏らない志望大学の検討に役立てたりすることができると思います。子どもは何をどう学びたいか、子どもは卒業後にどう働きたいのか、などを考えた上での、将来子どもが後悔しないような選択が必要です。海外大学への留学という選択もこれまで以上に身近になります。

各大学の説明会やオープンキャンパスがこれから本格化しますが、それらに参加する大学を子どもにアドバイスをする際に、これらのランキングを参考にしてみると良いでしょう。

 

 

*¹ 2019年日本版 https://japanuniversityrankings.jp/rankings/

    2018年日本版 https://japanuniversityrankings.jp/rankings/2018/rankings2018.pdf

    2017年日本版 https://japanuniversityrankings.jp/rankings/2017/rankings2017.pdf

 

*² https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2019/world-ranking#!/page/0/length/25/sort_by/rank/sort_order/asc/cols/stats

 

*³ https://japanuniversityrankings.jp/method/

 

*⁴ 北海道大学,東北大学,東京大学,名古屋大学,京都大学,大阪大学,九州大学

 

*⁵ 日本国外の大学との連携などを通じて、徹底した国際化を進めて、世界レベルの教育研究を行う「グローバル大学」を重点支援するために2014年に文部科学省が創設した「スーパーグローバル大学創成事業」の支援対象となる大学 https://www.jsps.go.jp/j-sgu/h26_kekka_saitaku.html

 

*⁶ 例えば、QS世界ランキング2019での日本の大学順位では9位が慶應義塾大学・10位が早稲田大学と、THE世界ランキングとは異なります。また、ビジネススクールが対象で、世界の大手企業や研究者らによる評価や学位取得後の業績などで順位付けしている「QSグローバルEMBAランキング2019」(英国のクアクアレリ・シモンズ社策定)での日本の大学1位は名古屋商科大学です。また、インドネシア大学が主宰する2018年の環境に優しい世界の大学ランキング(「UI Green Metric World University Rankings 2018」)での国内大学1位は信州大学でした。

https://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/2019

https://www.topmba.com/emba-rankings/asia/2019

http://greenmetric.ui.ac.id/overall-ranking-2018/