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2019年07月01日

【教育改革】第17回:大学入学共通テストについて(前編)

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第17回目は「大学入学共通テストについて(前編)」をお届けします。

 文部科学省は2019年6月4日に大学入試センター試験の後継となる「大学入学共通テスト」の実施大綱を発表しました。*¹

また、大学入試センターは、2019年6月7日に「大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等及び問題作成方針」を公表しました。*²

 

 大学入試センターからは大学入学共通テストの導入に向けた試行調査の結果も2019年4月4日に発表されています。*³

 

 今回(第17回)と次回(第18回)では、大学入学共通テストがどのように実施されるのか、どのような影響が出てくるのか等についてみていきたいと思います。

◇各大学の入試日程が変わる可能性

 

 大学入学共通テストの実施期日は2021年1月16日と17日に決定しました。大学入学共通テストの実施期日は、1月 13日以降の最初の土曜日及び翌日の日曜日と発表されましたので、この実施日の考え方は大学入試センター試験の実施日の設定の仕方を踏襲するものとなっています。

 

 次に大学入試センターから各大学への成績提供日をみてみましょう。

2020年1月18日と19日に行われる最後の大学入試センター試験の各大学への成績通知は、私立大学に対してはセンター試験終了日から16日後の2月4日から、国公立大学に対しては2月6日(AO入試や推薦入試は2月5日)から行われます。*⁴

 

 これに対して2021年1月16日と17日に行われる最初の大学入学共通テストの各大学に対する成績通知は、私立大学に対しては大学入学共通テスト終了日から23日後の2月9日から、国公立大学に対しては2月11日(総合型選抜や学校推薦型選抜は2月10日)から行われることになり、成績提供までの日数が現在よりもかかることがわかります。

 

 これは記述式問題の採点に時間がかかるためです。私立大学の63.5%が大学入学共通テストを活用する(活用しない:7.7%、未定:15.4%)意向を示しており*⁵、国公立大学だけではなく私立大学の入試日程への影響が予想されます。

 例えば、日本女子大学の「一般入試」と「センター試験利用入試(前期)」の合格発表は2019年度入試では2月8日でしたし、2020年度も2月8日に行う予定です。*¹³  

 

 同大学は2021年度から大学入学共通テスト利用型入試の実施を予告していますが、大学入試センターから私立大学に対する大学入学共通テストの成績通知は2月9日からとなりますので、少なくとも大学入学共通テスト利用型入試の合格発表は2月8日には行えません。一般入試の合格発表日はそのままにして大学入学共通テスト利用型入試の合格発表日を遅らせるか、両方の合格発表日を遅らせる必要が出てきます。

 

 このように大学入学共通テストの成績提供日が従来よりも遅れるため、大学入学共通テストの成績を利用した入試結果を発表できる日も遅れます。現在の私立大学入試ではほとんどの大学が複数の入試方式で入学者選抜を行っていますが、他の入試方式の出願期間・試験実施日・入試結果発表日にも変更が生じる大学が出てくるでしょう。

ですから、今まで(2020年度入学者選抜まで)とは異なった大学受験の併願スケジュールを組む必要があり、各大学から発表される入試要項を細かくチェックしていくことが必要になってくるのです。

 

 また、適切な進路や出願に関するアドバイスを受けられる相談先を確保しておくことも重要でしょう。

◇『国語』

 

 記述式の問題が3問出題されることに伴い、試験時間が大学入試センター試験より20分増えて100分になります。記述式は2018年11月に実施された試行調査問題と同様に、記述解答は1問で80〜120字程度を上限と明記されました。

 

 また、記述式問題では近代以降の文章(論理的な⽂章、⽂学的な⽂章、実⽤的な⽂章)のみからの出題と明記されたため、古典や漢文での記述式問題は出題されません。記述式問題は得点化せず小問ごとと記述問題全体の段階別の評価がなされます。

 

 2018年11月に実施された試行調査問題では、記述問題は小問ごとにa~dの4段階評価、全体ではA~Eの5段階評価で評価されましたが、今回発表された「実施大綱」や「出題方法等及び問題作成方針」では明記されていません。

   大学入学共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)(平成30年度(2018年度)実施)の結果報告より 例えば問1がb段階,問2がc段階,問3がa段階の評価ならば,記述問題の全体評価はB段階となる。

 しかし、大学入試センターでは試行調査結果からこの全体評価をした5段階評価について「選抜試験として想定していた段階の分布が得られた」としているので、この評価の方法がとられる可能性が高いようです。横浜国立大学では5段階別成績表示を点数化し、マークシート式の得点に加点して利用すると発表しています。*¹⁴

 

 今までのマーク式問題では、正解をマークしていなければ得点にはなりませんでしたが、国語で導入された記述問題は段階別評価です。右図のように、問1から問3まで全てc段階(正解ではない状態)であっても、全体の段階別評価では段階Dとなり、部分点を得ることが(大学によっては)できます。

    2021年度横浜国立大学入学者選抜の変更についてより

例えば、先に挙げた横浜国立大学では左図のように加点します。

 

 このように、各小問の記述内容が完璧(a段階)ではなくても得点となることから、「完璧な答えが書けないのであれば記述しない」という姿勢ではなく、「完璧な答えが書けなくても部分点を得られるように諦めずに取り組む」姿勢をもった受験生に有利になるでしょう。

 

 また、記述式の解答については、大学入試センターでは「共通テストにおける記述式問題は、思考⼒等を問うことを主な⽬的としていることから、漢字の正確な記述よりも内容⾯を重視した採点を⾏う」としていますので、漢字のトメ・ハネにまで神経質になって記述する必要はないようです。

 

 一方、マーク式問題の200点の配点は、近代以降の⽂章(2問100点)、古典(古⽂ (1問50点)、漢⽂(1問50点))ですが、大問別の結果も各大学に提供されるため、現在でも私立大学を中心に行われている大学入試センター試験の国語は「近代以降の文章」の成績のみで評価するような入試は引き続き可能になるようです。

◇『数学Ⅰ』『数学Ⅰ・数学A』

 

 記述式問題は「数学Ⅰ」及び「数学Ⅰ・数学A」の数学Ⅰの内容に関わる問題において、マーク式問題と混在させた形で数式等を記述する⼩問が3問出題されます。これに伴い試験時間は70分になります。

 

 大学入試センターによると「大学入学共通テスト開始当初は数式等を記述する問題を3問出題することも視野に検討を⾏う」としているので、「∠APBが鋭角であることを確かめる方法を△APBの3辺長さAB,AP,BPについての式を用いて説明せよ」といった式を用いて説明する問題は当初は出題されないかもしれません。

 

 「数学Ⅰ」の内容は同科目受験者全員必答ですが、「数学A」は場合の数と確率、整数の性質、図形の性質の3項目の内容のうち2項目以上を学習した受験生に対応した出題で問題を選択解答できるという、現在の大学入試センター試験と同じ方針です。

 

 また、数学では国語の記述問題の解答結果のような段階表示は⾏われず、マーク式問題と同様に配点をする100点満点になります。2018年11月に実施された試行調査問題では、数学Ⅰの範囲が60点、数学Aの範囲が40点の配点(大学入試センター試験と同じ配点)で、数学Ⅰの範囲の記述問題は各5点で3問(15点)、マーク式問題の配点が45点でした。しかし、今回発表された「実施大綱」や「出題方法等及び問題作成方針」では明記されていません。

    各大学のHPより東京個別指導学院が作成(2019年6月10日現在)

◇記述式問題の扱い

 

 大学入学共通テストで出題される記述問題は、大学入学共通テストを入試で利用するほとんどの大学が合否判定に利用します。しかし、中には記述式問題は合否判定に利用しないという予告をしている大学もあるので注意が必要です。

 

 例えば、流通経済大学では記述式の成績は当面利用しないという発表を既に行っています。*⁹

 

 また、中央大学は法学部・経済学部・商学部の「共通テスト利用入試」で国語・数学とも記述式問題の結果も合否判定に利用しますが、文学部では国語の記述問題は利用しません。*⁶

文化学園大学の「共通テスト利用入試」でも数学の記述問題は利用しますが、国語の記述問題の成績は利用しません。*⁷ 

 また、東北大学は大学入学共通テストの国語について「段階別評価を点数化して合否判定に用いることはしません。 ただし、合否ラインに志願者が同点で並んだ場合、記述式問題の成績評価が高い志願者を優先的に合格とします」としています。*⁸

 

 このように、各大学・学部により記述問題の利用方針が異なるので、各大学が発表する入試要項や入試予告の情報をHPなどでチェックするなどして、正確に把握しておくことが必要になります。

大学入学共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)(平成30年度(2018年度)実施)の結果報告(大学入試センター)より東京個別指導学院が作成

 2018年に実施された試行調査問題の記述式問題での自己採点と実際の成績の一致率が大学入試センターから発表されています。*³ それによると、国語では自己採点結果と実際の結果が一致した受験生が66%にとどまる問題もあったことがわかりました。

 

 また、大学入試センターからは事前に、自己採点の手順の参考となる動画 や自己採点用ワークシートを公表していましたが、*¹¹ 自分がどの解答段階にあるのか判断できない(判断不能)受験生や、自分が何を記述したか覚えていない(解答不明)受験生もいたようです。自己採点結果は受験生が最終的にどの大学に出願するかを決定する大きな要素となります。

 

 自己採点結果との一致率を上げるためには、受験生は「問題を解いてマルつけをしたら終わり」という学習から「問題を解いてマルつけをしてから、「なぜこの解答では不正解なのか」「何をどう直したら正解になるのか」に注目して振り返る」学習を心がける必要があるでしょう。問題を解き、マル付けが終わってからの日ごろの学習姿勢が問われることになるのです。

◇理科

 

 大学入学共通テスト問題作成方針の問題作成のねらい、範囲・内容等にある「特定の事項や分野に偏りが⽣じない」ようにという方針をうけて、⼤学⼊試センター試験で出題されてきた理科の選択問題は出題されないことになりました。

 

 大学入試センター試験でも例年特定の分野に偏ることなく幅広く出題されていますが、大学入学共通テストでは選択問題が出題されなくなったことから、今まで以上にまんべんなく学習して、苦手な分野をつくらないように心がけることが求められます。

2019年実施大学入試センター試験本試験問題より東京個別指導学院が作成

◇マーク式問題での新たな出題形式

 

 大学入学共通テスト問題作成方針では、2018年11月に実施された試行調査問題*¹⁰の「化学」大問1Aの問1・2のように、連続する複数の問いにおいて、前問の答えとその後の問いの答えを組み合せて解答させ、正答となる組合せが複数ある形式の出題の可能性が示されています。⋆¹²

 

 マーク式問題の解答方法で、これまでの択一式ではなく、あてはまる選択肢のすべてを選択する問題は出題されないようです。大学入試センターの発表では、複数のマークを正答として扱う場合、薄い濃さのマークとマークの消し跡を明確に区別して読み取るような基準を設定することができなかったそうです。大学入試センターは、そこで「~を満たすものをすべて挙げたものとして正しい組み合わせを以下の①~⑥の中から一つ選べ」という出題形式にして選択肢を増やす出題など、新たな出題形式の検討や改善を行うようです。

 

  今回は大学入学共通テストの実施日程や国語・数学・理科を中心にまとめてみました。次回は大きく変化した英語を中心に、地理・歴史・公民やご家庭でできることについて触れる予定です。

 

 

*¹ 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/05/1282953_006_1_1_1.pdf

 

*² 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035970.pdf&n=R3

 

  令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035971.pdf&n=R3%E5%85%B1%E9%80%9A%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E5%95%8F%E9%A1%8C%E4%BD%9C%E6%88%90%E6%96%B9%E9%87%9D.pdf

 

*³ 大学入学共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)(平成30年度(2018年度)実施)の結果報告(平成31年4月公表)

 

*⁴ 令和 2 年度大学入学者選抜 大学入試センター試験実施要項

 

*⁵ 「2021 年度入学者選抜に向けた 各大学の検討状況に関する 調査研究」

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/__icsFiles/afieldfile/2019/05/31/1417574_1.pdf

 

*⁶ 中央大学

経済学部:https://www.chuo-u.ac.jp/common_d/admission/faculties/modification/pdf/modification_2021_economics_01.pdf

 

商学部:https://www.chuo-u.ac.jp/common_d/admission/faculties/modification/pdf/modification_2021_commerce_01.pdf

 

法学部:https://www.chuo-u.ac.jp/common_d/admission/faculties/modification/pdf/modification_2021_law_01.pdf

 

文学部:https://www.chuo-u.ac.jp/common_d/admission/faculties/modification/pdf/modification_2021_letters_01_20190515.pdf

 

*⁷ 文化学園大学 2021年度入試について(2021年4月入学者・現高校1年生対象)

https://bwu.bunka.ac.jp/wp-content/uploads/2019/02/2021%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%85%A5%E8%A9%A6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A60226.pdf

 

*⁸ 平成 33 年度(2021年度)入試における本学の基本方針について(予告)平成30年12月5日 東北大学

http://www.tnc.tohoku.ac.jp/images/news/H33housin.pdf

 

*⁹ 流通経済大学 2021年度から始まる大学入試制度改革~RKUはこう考える~

https://www.rku.ac.jp/news/admissions/1354

 

*¹⁰ 平成30年度試行調査_問題、正解等(大学入試センター)

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h30_1111.html

 

*¹¹ 自己採点の参考動画・ワークシート(大学入試センター)

https://www.dnc.ac.jp/sp/corporation/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/video.html

 

*¹² 2018年実施の化学の試行調査問題の該当問題の評価は以下の通りです。

   問1の解答番号1で4を解答し,かつ,全部正解の場合に点を与えられました。

   しかし、問1の解答番号1の解答に応じ、解答番号2~4を以下のいずれかの組合せで解答した場合も点を与えられました。

 ・解答番号1で1を解答し,かつ,解答番号2で7,解答番号3で5,解答番号4で1を解答した場合

 ・解答番号1で2を解答し,かつ,解答番号2で8,解答番号3で5,解答番号4で1を解答した場合

 ・解答番号1で3を解答し,かつ,解答番号2で1,解答番号3で1,解答番号4で2を解答した場合

 ・解答番号1で5を解答し,かつ,解答番号2で1,解答番号3で5,解答番号4で2を解答した場合

 

*¹³ 日本女子大学 2020年度入試INFORMATION

https://www.jwu.ac.jp/content/files/unv/admission/pdf/2020nyushi/2020nyushiinfomation.pdf

 

     日本女子大学 入学者募集要項 2019年度

https://www.jwu.ac.jp/content/files/unv/admission/pdf/2019nyushi/2019_general-center.pdf

 

     日本女子大学 2021 年度入学試験(2021 年 4 月入学)の 概要について

https://www.jwu.ac.jp/content/files/unv/admission/pdf/2021nyushi/2021nyushi_overview.pdf

 

 

*¹⁴ 2021 年度横浜国立大学入学者選抜の変更について

https://www.ynu.ac.jp/exam/faculty/pdf/2021yokoku.pdf