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2019年08月01日

【教育改革】第18回:大学入学共通テストについて(後編)

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第18回目は「大学入学共通テストについて(後編)」をお届けします。

 前回のコラムでは、「大学入学共通テストについて(前編)」として、文部科学省が2019年6月4日に発表した「大学入学共通テスト」の実施大綱*¹ と大学入試センターが2019年6月7日に公表した「大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等及び問題作成方針」*² をもとに、大学入学共通テストの国語・数学・理科を中心にご紹介しました。そこで後編となる今回は、地理・歴史・公民と英語についてご紹介したいと思います。

◇地理・歴史・公民

 

 地理・歴史・公民は試験時間や配点は現在の大学入試センター試験と変わりがありません。

しかし、用語を含めた個別の事実の知識だけでなく、その深い理解(意味や意義、特色、関連)や、総合的に考察する力を求める問題が出題されることから、用語や年号の丸暗記だけでは対応できないことが予想されます。そして、教科書等で扱っていない初見の資料を出題することもあると予告されており、教科書だけを丁寧に学習しておけば良いのではなく、教科書などで学んだ知識を活用して考える力が問われることが明らかになりました。

 

 また、「地理に関わる事象を多面的・多角的に考察する過程を重視」(地理)、「歴史に関わる事象を多面的・多角的に考察する過程を重視」(歴史)、「現代社会の課題や、人間としてのあり方、生き方などについて多面的・多角的に考察する 過程を重視」(現代社会)、「倫理的諸課題について、多面的・多角的に考察する過程を重視」(倫理)、「現代の政治、経済、国際関係等について、多面的・多角的に考察する過程を重視」(政治・経済)と、いずれも多面的・多角的に考察する過程を重視する方針が強調されています。「多面的・多角的」ということは多様な立場で考えたり・ほかの角度から考えたりする多様性を、「過程を重視する方針」は思考力を評価するというメッセージといえます。

 

 このようにみていくと、大学入学共通テストへの対策は、一問一答の問題集を丸暗記して知識・技能を増やしただけでは対応できません。知識・技能の習得を前提に、身につけた知識・技能を元にして活用して考える問題が多く出題されることが読み取れますので、地理・歴史・公民の学習も後回しにせずに入試を意識した学習を従来の受験生よりも前倒しして開始する必要があるでしょう。

◇英語

 

 試験時間は、「リーディング」が80分、「リスニング」が30分と現在の大学入試センター試験と変更がありません(「リスニング」は解答時間が30分でIC プレーヤーの操作確認などの準備も含めた試験時間は60分です)。

 

 英語の「筆記」は「リーディング」に名称変更されました。名称変更通りに、発音・アクセント・語句整序などを単独で問う問題は出題されないことが明らかになっています。発音・アクセント・語句整序問題が出題されないことから、出題される単語数は増え、必要な情報を素早く読み取る力が求められることがわかります。問題レベルは CEFRという国際基準*³ でA1~B1レベル(英検3級~2級レベル)での出題となっています。

また、2018~2019年度に実施された試行調査問題と同様に、複数の素材を読み取り、実際のコミュニケーションを想定した場面設定などを重視して出題されることになりました。

 

 「リスニング」は、読み上げられる音声が、多様な話者による現代の標準的な英語となり、必ずしもネイティブスピーカーによる読みあげとはならない可能性が示されました。

 また、読み上げの回数は、1回読みあげの問題と2回読みあげの問題の両方で構成されることも発表されました(大学入試センター試験の「リスニング」は全て2回読みあげ)。試験時間が現在の大学入試センター試験と変わらないことから、設問数の増加が予想されます。大学入試センター試験の「リスニング」試験は導入以来一貫して25問の出題でしたが、2018年度に実施された試行調査では、37問の出題と1.48倍に問題数が増加しています。

 

 次に、配点ですが、「リーディング」が大学入試センター試験の200点から100点に、「リスニング」が50点から100点に変更となり、「リーディング」と「リスニング」の2技能の評価が明確になりました。

 

 このような配点変更に対して、既に「リスニング」対策の授業時間を増やしている高校も出てきているようです。これまでの大学入試センター試験対策は「筆記」を中心に行い、「リスニング」は直前に集中して行えば対応できなくはなかったのですが、2019年度の高校2年生以降は、「リスニング」対策も疎かにはできなくなりますので、英語学習の前倒しが必要になってくるでしょう。

 

 このように大学入学共通テストの「リーディング」と「リスニング」は同じ配点で出題されることになりましたが、各大学が大学入学共通テストを利用して入学者選抜を行う際の配点は大学によって異なるようです。例えば、茨城大学では、大学入学共通テストの「リーディング」の得点を2倍にする(100点満点⇒200点満点)一方で、「リスニング」の得点を半分にする(100点満点⇒50点満点)ことで、現在の大学入試センター試験の英語の配点と同じにする旨を発表しています。*⁴ つまり、入学者選抜試験での比重は各大学によって異なるという点への注意が必要です。

◇保護者のすべきことは何か

 

 上でご紹介した茨城大学のように、大学入学共通テストの配点と各大学の入学者選抜試験での配点比重は各大学によって異なるのですが、2021年度入学者の入試の配点を発表している大学はまだ少数にとどまります。2019年6月に発表された『大学入学共通テスト実施大綱』『入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等』『大学入学共通テスト問題作成方針』をふまえて検討している大学が多いと考えられますので、子どもが希望している大学のHPを参照するなどして、新しい情報を収集しておくことが必要になってくるでしょう。

 

 前回のコラム*⁵ で、大学入学共通テスト数学の記述問題で”「∠APBが鋭角であることを確かめる方法を△APBの3辺長さAB,AP,BPについての式を用いて説明せよ」といった式を用いて説明する問題は当初は出題されないかもしれません” と書きましたが、その予想通り、大学入試センターは教育委員会や高等学校等の関係者を対象とした説明協議会で、数学の記述式問題は三問とも初年度は数式のみを記述させる方針を2019年7月4日になってはじめて発表しました。*⁶

 

 数式のみということは、「{1} ⊂ A」「 BC cos(180°-B)」「 」といった答えを記述するということです。「数式のみ」といっても数式でできているいわゆる途中式も記載することはありませんので、実際には短答式の問題といえるでしょう。しかし、柴山文部科学大臣はこの大学入試センターの方針を7月16日に否定し*⁷、混乱が続いています。

 

 また、大学入学共通テストの枠組みで行われる「大学入試英語成績提供システム」についても、いくつかの発表が続いています。

 

 『2020年度「英検2020 1 day S-CBT」実施概要』*⁸ 、『2020年度の英検CBT・TEAP・TEAP CBT・IELTS実施概要』*⁹が発表されました。また、TOEICの参加申込み取り下げ*¹⁰の決定の発表や、英検 2020 2days S-Interviewの受験対象は「合理的な配慮が必要な障がいのある受験者」に特化する*¹¹という発表、『2020年度「英検2020 1 day S-CBT」における、2019年度高校3年生(既卒生含む)の皆さまへの対応について』の発表*¹²など新しい情報が次々に発表されています。

 

 このように新しい入試制度が始まる時期であるがゆえ、保護者だけではすべての情報を収集していくのは難しいと思います。だからこそ信頼できる情報を得ることができる相談先を確保しておくことが、保護者にとって最も必要なことなのではないでしょうか。

 

 

 

*¹ 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施大綱

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/05/1282953_006_1_1_1.pdf

 

*² 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035970.pdf&n=R3

 

  令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035971.pdf&n=R3%E5%85%B1%E9%80%9A%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E5%95%8F%E9%A1%8C%E4%BD%9C%E6%88%90%E6%96%B9%E9%87%9D.pdf

 

*³ CEFR (Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment) は、語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、透明性が高く、分かりやすい、包括的な基盤を提供するものとして、欧州域内外で使われています。欧州域内では、国により、CEFRの「共通参照レベル」が、初等教育、中等教育を通じた目標として適用されたり、欧州域内の言語能力に関する調査を実施するにあたって用いられたりするなどしています。

 

*⁴ 令和3年度(2021年度)入学者選抜の概要について 茨城大学

https://www.ibaraki.ac.jp/guidance/common/pdf/guidance/2021senbatsugaiyou20190621.pdf

 

*⁵ 【教育改革】第17回:大学入学共通テストについて(前編)

https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=2617

 

*⁶ 大学入試センター 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストについて

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00036300.pdf&n=%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%93%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E5%AD%A6%E8%80%85%E9%81%B8%E6%8A%9C%E3%81%AB%E4%BF%82%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E5%AD%A6%E5%85%B1%E9%80%9A%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf

 

*⁷ 柴山昌彦文部科学大臣記者会見録(令和元年7月16日)

http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1419079.htm

 

*⁸ 2020年度「英検2020 1 day S-CBT」実施概要

https://www.eiken.or.jp/eiken/info/2019/pdf/20190702_pressrelease_2020S-CBT.pdf

 

*⁹ 2020年度の英検CBT・TEAP・TEAP CBT・IELTS実施概要

https://www.eiken.or.jp/association/info/2019/pdf/20190705_2020schedule.pdf

 

*¹⁰ 「大学入試英語成績提供システム」へのTOEIC®  Tests参加申込取り下げのお知らせ

https://www.iibc-global.org/iibc/press/2019/p119.html

 

*¹¹ 2020年度「英検 2020 2days S-Interview」についてのお知らせ

https://www.eiken.or.jp/eiken/info/2019/pdf/20190626_pressrelease_2020S-Interview.pdf

 

*¹² 2020年度「英検2020 1 day S-CBT」における、2019年度高校3年生(既卒生含む)の皆さまへの対応について

https://www.eiken.or.jp/eiken2020/graduated.html

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 https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=2110