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2019年08月29日

「Society 5.0」既に始まっている? 世界に先駆け「超スマート社会」の実現を目指す日本の動き

1)現代社会の問題点を解決するSociety5.0

現代までに私たち人類は、時代を追って「狩猟社会」~「農耕社会」~「工業社会」~「情報社会」という4つの社会を体験してきました。

この段階的な社会の変化は、Society1.0~4.0と呼ばれており、21世紀の現代社会は、まさに情報社会=Society4.0のまっただ中にあると言えるでしょう。(※1)

 

これまでに人類が築き上げてきた高度に情報化された社会では、誰もが必要な時に必要な情報を共有できるはずでした。

ところが現実には、あまりにも増え過ぎた大量の情報の中から、自分が望む情報を入手することはかなり難しくなりつつあります。

また少子高齢化や地方の過疎化により、近隣に日用品を買えるお店がなく食料品を手に入れるのも困難な人たちも増えています。

 

一方で日々進歩する科学技術の中から、IOT(Internet of Things)やAI(人工知能)やビッグ・データの活用、ロボットや自動走行車など、新たな技術が徐々に実用化されています。

 

そこで現在の社会の諸問題を解決して、より暮らしやすい社会を築くために、「フィジカル空間(現実空間)」と「サイバー空間(仮想空間)」とを融合させた、新たな社会の構築が提唱されています。それが「Society5.0」です。(※1)

2)Society5.0が目指す社会とそのしくみ

Society5.0とは、現在、加速度を増して進化し続ける科学技術と、現実社会とを高度に融合させた社会のことで、「第5期科学技術基本計画」の中で内閣府により策定されました。(※2)

その計画の内容から考えると、今後の日本は世界に先駆けて、Society5.0という新たな社会への移行を目指すことになりそうです。

 

Society5.0は仮想空間と、現実空間とが融合された社会になると予測されています。(※1)

そこではIoT(Internet of Things)・AI・ロボット・ドローンなどの先端技術を、実際の生活の中に浸透させることで、少子高齢化や地方の過疎化、さらに貧富の格差などのさまざまな社会問題が解決できると期待されています。

 

Society5.0では、現実空間で展開する人間のさまざまな活動が、センサーを通してデータベースに蓄積されます。

このビッグデータを解析するのは人間ではなくAIです。仮想空間でAIによって分析されたデータは、今度は再び現実空間での活動にフィードバックされます。

 

さらに現実空間では生産や流通などの工程で、多様なロボットやドローンなどが活躍することになるでしょう。

これらのテクノロジーはAIからの指示を受け取って、さまざまな分野で人間の活動をサポートしてくれるでしょう。

 

例えば高齢化が進んだ地方の街で、お年寄りが自宅にいながら、IOTなどと連携し日用品の不足を検知し、自動的に補充できるようになるかもしれません。

また工場では生産効率が大幅にアップして、流通から消費のいたるところで効率化が図られるため、エネルギーや原料・製品のロスが最小限に抑えられるようになるでしょう。(※1)

3)Society5.0が描く近未来とは?

Society5.0に向けた社会構造の変化は、すでに始まっています。

インターネット上では、物販・サービス・デジタル系を含めた電子商取引が、年々規模を拡大しています。

 

実際の取引と同調して、インターネットとAI技術、そこにフィンテックと呼ばれる新しい技術を融合させた金融サービスも続々と登場しています。

具体的には、個人の金融取引情報をスマートフォン上で一括管理したり、遠隔地にいる人同士で送金や貸借のやりとりをしたり、AIが個人に代わって資産運用をサポートするなど、既存のサービスとは一線を画したシステムが動き出しているのです。

 

またインターネットとスマートフォンを組み合わせることにより、個人が保有するモノ・スペース・スキルなどを共有する、シェアリングエコノミーも若い年代層を中心に広がり続けています。(※3)

 

さらにSociety5.0が描く未来図の中で、重要な役割を果たす技術の進歩も見逃せません。

その一つが日常生活におけるAIやロボットの活用ですが、内閣府の消費行動調査によれば、今後実用化が待たれる完全自動運転車に対する関心の高さは、調査対象者の5割強に購入意欲があることからも分かります。

同じく家事代行ロボットについても、全体の約4割が購入意欲を持っているという結果が出ています。(※3)

 

労働環境の変化に関しては、現在「RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション」の発展が注目されています。

RPAは事務処理などの定型化された作業を、ソフトウェア型のロボットが自動で行う仕組みのことで、すでに金融や保険業界では積極的に導入が進められています。(※3)

 

既に海外ではAmazon Goを初めとした無人店舗の取り組みが始まっており、

このような新技術を職場に導入することで、今後働き方がより柔軟に変化したり、労働生産性が高まるなど、社会全体の労働環境にプラスの効果が生まれることが期待されています。

 

近い将来には、日常的に必要な食料や消耗品などは、各家庭内に設置されたAIを通して、適切な時期に発注されてすぐに手元に届くようになるでしょう。

この時に配送を担当するのは、完全自動運転の配送車やドローンが中心になると考えられます。(※4)

 

同時に商品生産の分野でも、大きな変革が起こることになるでしょう。各家庭からの注文は集中的にAIが管理して、ビッグデータを活用することにより、生産ロスがほとんど出ない工程管理が可能になるでしょう。

もちろん工場での生産でも、今以上に効率的な産業用ロボットが導入され、AIによる生産管理のもとで無人工場が可能になるかもしれません。(※4)

 

またAIによる生産管理は、人手不足に悩む農業の分野にも拡大するでしょう。圃場(ほじょう)では土壌分析や生育状況のチェックなど、必要な管理をAIが行い、肥料の投入や収穫作業では、ドローンやロボットが動き回る、そんな景色が見られるかもしれません。(※4)

 

さらに今後ますます重要性が高まると予想される医療分野でも、Society5.0では遥かに進歩したサービスを受けられるようになるでしょう。

IOTとAIとビッグデータを活用することで、医師による往診は最小限に抑えられ、患者が病院に通院することさえ必要なくなるかもしれません。

一般の家庭ではAIを搭載した端末を通して、病院や医師と間接的にやりとりをするようになり、24時間態勢での健康管理も可能になるでしょう。(※4)

 

今後の日本が目指すことになる社会では、経済的発展と社会的課題の解決との両立や、物流・商業・農業・情報分野における新技術と、実生活との融合などが進められることになるでしょう。

Society5.0という次世代の社会構造が、どのような社会になるのか今から楽しみです。

まとめ

現在、政府は世界に一歩リードして、Society5.0と呼ばれる超スマート社会の実現を目指しています。

この構想が一般社会に広く認知されるには、まだまだ時間がかかるかもしれません。しかしSociety5.0が実現すれば、現代社会の問題点を解決しながら、より快適に暮らせる社会が訪れる可能性があります。

 

今後の社会を担う人々や、それを育成する人々には、ひと足先にSociety5.0について理解することが求められると思います。

これから未来を生き抜く力を養うためには、少しでも早く未来を予測し、迅速に対応する必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

<参考資料>

 

 

(※1)

「Society5.0」(内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

 

(※2)

「第5期科学技術基本計画」(内閣府)

https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

 

(※3)

「Society5.0」がもたらす経済効果(内閣府)

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je19/pdf/p01041.pdf

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je19/pdf/p01042.pdf

 

(※4)

「Society5.0」(政府広報)

https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/