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2019年09月03日

5G通信が日本でも始まる。全国の信号機が基地局に?

5G通信とはなにか

次世代通信の5G通信が日本でも始まります。これまでの4G通信から5G通信に移行することで、生活はどのように変わるのでしょうか。そこで5G通信の概要と、その普及によって生活がどのように便利になるのかを説明します。

 

1-1 5G通信とは? 4G通信と違う点(※1)

 

5G通信とは「第5世代移動通信システム」のことです。現行の4G通信は最大通信速度が約1Gbpsですが、5G回線の最大通信速度はその10倍の約10Gbpsとなります。

 

また1k㎡あたり100万台の機器に接続できることから、スマホやPC以外にもさまざまな機器をネットワーク接続できるのが特徴です。

 

また通信での反応に遅延が少ないことから、リアルタイムで手術ロボットを操作したり、あるいは車の自動運転で即座に管理センターからの指示で制御したりすることが可能となります。

 

このように5G通信は自動車や産業機器、ホームセキュリティやスマートメーターといったIoT(Internet of Things:モノとインターネットをつなぐこと)に役立ちます。

 

日本では2020年の実現に向けて、次のような3つの取り組みをしています。

 

① 研究開発・総合実証実験

・AR (拡張現実)・VR (バーチャルリアリティ)を用いたコンテンツ体験

・鉄道の安全運転支援システムの実証実験

・スマートオフィスにおける各種センサー情報の収集や共有

など

 

② 国際連携・協調の強化

・ITU(国際電気通信連合)や3GPPなどにおける標準化活動

※3GPPとは移動通信システムの仕様検討と標準化を目的とする日米欧中韓の標準化団体によるプロジェクトのこと

 

③  5G周波数の具体化と技術的条件・割当て方針の策定

・2019年4月10日には、携帯電話事業者4社に5G通信用の周波数が割り当てられる(※2)

 

 

1-2 5G通信の開発はどこが行っている?(※1)

 

5G通信の実現に向けて、日本・米国・中国・韓国・欧州が取り組んでいます。それぞれの国における開発状況とサービス開始は次のようになっています。

 

日本・・・2020年に移動系サービス開始を目指す。

米国・・・2019年4月にスマートフォン向けサービスを開始(※3)。各事業者はミリ波帯での実証実験を進行中。

中国・・・2019年中の移動系サービス開始を目指し、国内外事業者・政府・研究機関が試験フィールドを構築。

韓国・・・2019年4月に移動系サービスを開始。(※4)政府が研究開発と中小企業を支援。

欧州・・・2020年中のサービス開始を目指す。自動車・工場・製造・医療・健康メディアの各分野を特定し実証試験を実施。

 

1-3 一般消費者は何が変わる?(※1)

5G通信を実現することで、一般消費者の次のような課題解決に役立ちます。

 

① 働き方改革

  たとえば建設機械の遠隔操作や自動操縦によって、建設現場での仕事の進め方が変わります。

 

② 高齢者のモビリティ確保

  地方で問題になっている高齢者の移動手段の確保が、自動車の自動運転によって解決される可能性があります。

 

③  防災・減災

  センサーや高精細画像のデータ利活用により、大規模な自然災害による被害の軽減が可能になります。

プレサービス始まる! 信号機を基地局にする方針も閣議決定

日本では5G通信のプレサービスも開始され、その効果を実感できるようになっています。

 

2-1 通信事業者による5G通信のプレサービス開始

 

日本の通信事業者による5G通信のプレサービスが始まっています。2019年7月には、新潟県のスキー場におけるロックフェスティバルで、ブース内のVR空間におけるライブ映像などを実現していました。(※5)

また9月に開催されるラグビーW杯でも、全国8ヵ所の会場を5Gエリア化する予定となっています。(※6)

 

 

2-2 信号機を基地局に

 

政府は2019年6月14日に、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定しました。(※7)

 

これは政府全体のデジタル政策を取りまとめたもので、すべての国民が安全・安心な暮らしや豊かさを実感できるデジタル社会の実現に向けたものです。(※8)

 

そして政府は、全国に約20万8000基ある信号機のなかで、空きスペースがあるものを通信事業者に貸し出し基地局とすることを検討しています。また5G通信を利用して集中制御できる信号機を増やすことで、交通情報の収集や自動運転への活用も可能になります。(※9)

5G通信で変わる教育の未来

最後に5G通信によって教育がどのように変わっていくのかをご紹介します。

 

米国のVRソフトを手掛ける企業とある病院が実施した研究によると、医療従事者がVRで研修を受けた場合には、研修内容を80%覚えていた(従来の研修では20%程度)ことがわかりました。(※10)

 

通信速度が速い5G回線ならば、高精細なVRやARのデータもネット回線でどこにでも送ることができます。その結果、教育の現場にVRやARの画像を送ることで、学習に役立てることが可能です。

 

たとえば医療教育の現場ではすでに、VRを使って内部から臓器を見るような形で手術を学ぶことに役立っています。(※11)さらに学校でもVRを教育に活用しています。例としてノースカロライナ州立大学では、生物学入門において、エコロジー・進化・生物学多様性についてVRが利用されています。(※12)

 

また一般社団法人と大手印刷会社、そして大手通信会社は沖縄県の歴史教育コンテンツを配信する5Gの実証実験を2019年1月に実施しました。(※13)このように教育の現場に5G通信とVR・ARを導入することで、学習効果を高めるなどのメリットが期待できます。

 

まとめ

 

5G通信が普及することで、より安全・便利な生活を実現するとともに働き方も変わる可能性があります。さらに教育の現場でVRやARといった技術と組み合わせることにより効率よく、あるいは意欲的に学習に取り組めるようになるでしょう。

 

 

(※1)

第5世代移動通信システムについて

http://www.soumu.go.jp/main_content/000579865.pdf

 

(※2)

第5世代移動通信システム(5G)の導入のための 特定基地局の開設計画の認定

http://www.soumu.go.jp/main_content/000613734.pdf

 

(※3) 【アメリカを読む】米の視線はすでに「6G」 5Gで劣勢、対中巻き返しへ

https://www.sankei.com/economy/news/190503/ecn1905030001-n1.html

 

(※4) 韓国、世界初の商用5Gサービスを開始へ

https://jp.reuters.com/article/southkorea-5g-idJPKCN1RF0VM

 

(※5) ソフトバンクの「5Gプレサービス」を体感してきた

https://japanese.engadget.com/2019/07/28/5g/

 

(※6) 「ラグビーワールドカップ2019TM 日本大会」で5Gプレサービスを提供

https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2019/07/26_00.html

 

(※7) 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画

https://cio.go.jp/node/2413

 

(※8) 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画

https://cio.go.jp/data-basis

 

(※9) 全国21万の信号機を5G基地局に、民間も行政も一挙両得のワケ

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02445/

 

(※10) メディアから金融、農業まで 5Gが変える20の業界

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42985140X20C19A3000000/

 

(※11) Using Virtual Reality for Surgical Simulation Training

 

(※12) Virtual Reality In Education – How Are Schools Using VR?

https://www.viar360.com/education-schools-using-virtual-reality/

 

(※13) NTTドコモ、沖縄で5G実証実験 世界遺産でVR・ARコンテンツ配信

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32869810R10C18A7LX0000/