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ESDとは何か
2020年度から始まる学習指導要領において、その前文と総則に「持続可能な社会の創り手となる」との文言が盛り込まれています(※1)。つまり学校はその「創り手」の育成を目指した取り組みを求められることになります。文部科学省からは、ESD推進のための手引も公開されています(※2)。
ESDとはEducation for Sustainable Developmentを略したものです。これは地球環境を保全して(※3)、持続可能な社会づくりの担い手となる人間を育成するという考えです(※4)。
・ESDの世界的潮流
2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」(※5)で、持続可能な開発における人材育成の重要性が強調されました。
そして第57回国連総会決議により、2005年から2014年までの10年を「国連ESDの10年(DESD)」とし、2014年の第69回国連総会では「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が承認されました(※6)。
・ESDはSDGsの目標4に位置付けられる
持続可能な社会を実現するためには、それを担う人材の育成が不可欠です。持続可能な社会とは、「自然環境を適切に保全して将来の世代が必要なものを損なうことなく、現代の世代の要求を満たす開発が行われている社会」と言われています。
そのために、持続可能な開発目標(SDGs)の目標4の中でESDが位置づけられています。SDGsの目標4は、「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」です(※7)。
ここでは、「持続可能な開発を促進するために必要な知識および技能の習得に向けて取り組むこと」を目標としています。
ESDは何を目指すのか

ESDは地球環境を保全し持続可能な社会づくりの担い手となる人間を、初等中等教育の段階から育成することを目指す教育です。その内容について説明します(※8)。
・人間性を育む
まずESDにおいて、個人の人格発達や自立心、判断力や責任感といった人間性を育むことを目指しています。これは地球規模で広がる問題を解決できる能力を身につけるためです。
持続可能な世界を実現するためには、次々と生じる世界的な問題に取り組まなければなりません。そしてその解決をするのは特定の人間ではなく、そこで生きている人みんなです。
そのような意識を持つためには、自立心や責任感が必要です。そして世の中で生じている問題を理解し、その解決策を考えるための判断力も求められます。
平成29年度に告示された小学校学習指導要領では、総則の中で「他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し未来を拓く主体性のある日本人の育成に資することとなるよう特に留意すること」と記しています(※1)。
このような主体性と自立心・責任感を持つことで、地球規模の問題に取り組める人材を育てることを目指します。
・他者や社会、自然環境とのつながりを尊重できるようにすること
個人の人間性を育むのと同時に、それをどのように活用するのかを教えなければなりません。地球規模の問題を自分自身にもかかわりのあるものと認識できるように教育することが必要です。
社会や世界と関わり、協働する力を備えることやチームワーク・リーダーシップを身につけることで、持続可能な社会づくりにも取り組めると考えられます。
具体的にどのように取り組めばよいのか

ESD推進の手引(改訂版)では、具体的な取り組みとして次のような内容を記載しています(※9)。
・何のために何を学ぶのか
持続可能な社会を創るための価値観を育成することが大切です。そこで取組意欲を育てるとともに、ESD を実践するための思考力・判断力・発信力などを育成する必要があります。目的意識を持つことで、具体的に何に対してどのように取り組めばよいのか判断できるようになります。
例えば、ゴミの分別が自分たちの生活にどう影響するかを学ぶことによって、何のために何を学ぶかを具体的に考えていきます。
・どのように学ぶのか
グループ活動を取り入れることで効果的に学べるようになります。みんなで話し合い協力して調査を行い、まとめや発表をするようにします。
協働的な学びをすることで、主体的・対話的に深く学べるようになります。
・何ができるようになるのか
知識を得て理解するに留まらず、学びを活かせるようにします。様々な問題を「自分の問題」としてとらえ、自主的に行動する 「実践する力の育成」を目指します。
具体的には3R(リデュース、リユース、リサイクル)といったテーマを決めて、環境対策にどのように取り組むのかを、考えさせるといった活動などが挙げられます。
・どのように取り組むのか
ESDの実施を学校経営方針に位置付けることが大事です。校内組織を整備して学校全体として組織的に取り組むことによって、自然と学習のなかにESDの精神を組み込めるようになります。
・どんな風に関わることができるのか
ESDを推進する主体である学校と、NPO・NGOや民間企業と関わりあうことが大切です。たとえば、学校教育向けESD教材を開発したり作成したりするといった取り組みがあります。さらに事例公表などの交流活動で情報共有する必要もあるでしょう(※10)。
以上のようにESDは、まさしく持続可能な社会を実現するために学ぶべき教育なのです。これからの世界を担う子どもたちが、環境・貧困・人権といった地球規模の課題に自主的に取り組めるようにする教育です。そのためには学校や公的機関、民間企業やNPO・NGOと連携を取りながら取り組むことが大切です。その中で子どもたちの人間性、社会や自然環境とのつながりを尊重できる心を育むことが求められているのです(※11)。
[参照元]
※1「小学校:学習指導要領(平成 29 年告示)」
※2「ESD推進のための手引」
http://www.mext.go.jp/unesco/004/__icsFiles/afieldfile/2018/07/05/1405507_01_2.pdf
※3 地球環境を保全して
※4「国連持続可能な開発のための教育」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/edu_10/10years_gai.html
※5 2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」
https://www.oecc.or.jp/wp-content/uploads/2017/05/37p5.pdf
※6「日本ユネスコ国内委員会 ESD(Education for Sustainable Development)」
http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm
※7 持続可能な開発目標(SDGs)目標4
http://www.ungcjn.org/sdgs/goals/goal04.html
※8 ESD基本的な考え方
http://www.jp-esd.org/about.html
※9「ESD推進のための手引」
http://www.mext.go.jp/unesco/004/__icsFiles/afieldfile/2018/07/05/1405507_01_2.pdf
※10「ESD普及展開のために、産・官・学の連携の橋渡し役として活動します」
http://www.jp-esd.org/forum.html
※11 NPO・NGOや民間企業と関わりあう
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/04/__icsFiles/afieldfile/2016/04/22/1369936_03_1.pdf