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2019年11月28日

AI人材育成が始まる。政府が取り組むAI人材育成とは。

今、政府の主な省庁がこぞって取り組んでいるのが、これからの社会に必要な人材を育てる「AI人材育成」です。この新しいプロジェクトは、政府が推進する「Society5.0」や「リカレント教育」とも密接にかかわっています。

ITを中心に再構築される今後の社会に向けて、リーダーシップを発揮できる人材の育成は急務となっています。そのため文部科学省の先導で、大学など教育機関の提携のもと、AI人材育成への取り組みがすでに始まっています。 (※1)

既存の人材育成からの大きな変革が求められるAI人材育成について、現在行われている取り組みと今後の見通しを展望します。

1.今後の社会を担うAI人材育成とは?

政府はこれから訪れる社会構造の変革を「第四次産業革命」と位置づけて、産業界、教育界などに働きかけてさまざまな取り組みを始めています。 (※2)

その先に描かれた新しい社会のビジョンが「Society5.0」です。

 

「Society5.0」という新しい社会では、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させて、持続的な経済発展を維持しながら、現在の社会的課題を解決した、人間にとって住みやすい世界の構築が期待されています。 (※3)

 

その社会では人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)が、日常生活の中にくまなく浸透して、これまで以上に多くの情報がやりとりされるようになるでしょう。

そうした社会を支えるエキスパートを育てるには、今までのような人材育成方法では限りがあります。そこで必要になるのが、AI人材育成という新しいステージなのです。

 

AI人材育成には教育界と産業界の連携と、それぞれによる積極的な取り組みが欠かせません。 (※4)

文部科学省の計画によれば、小学校での「プログラミング教育」の必修化や、「大学入学共通テスト」などによる大学入試制度の改革などを通して、基礎的レベルからのAI人材育成が進められることになります。

 

また大学と産業界が連携することにより、柔軟なAI人材育成を可能にする「リカレント教育」の普及も不可欠な条件です。「リカレント教育」を充実させることにより、すでに社会で働いている人材の再教育が可能になるからです。(※5)

 

こうして育成された人材は、AIに関する豊富な知識や経験をもとにして、これからの新しい社会を支えていく力になることでしょう。

2.これから予想されるAI人材育成の試み

AI人材育成に関する取り組みは、まず2020年度に小学校で全面実施される「プログラミング教育」からスタートします。

小学校では算数や理科などの教科や、クラブ活動などに「プログラミング教育」のカリキュラムを組み込んで、コンピューターの仕組みや使い方を学ぶことになるでしょう。

 

同時にものごとを段階を踏みながら論理的に考える、「プログラミング的思考」の育成にも重点が置かれます。この思考がその後のAI人材育成のベースになると考えられます。

さらに中学校では、より深くプログラミングについて学び、高校では必修科目「情報Ⅰ」を新設して、ネットワークやデータベースについても学習することになります。 (※4)

 

こうした基礎的なAIの知識を身につけた上で、大学では数理・データサイエンスの基礎的素養を持つ人材育成がより拡充される予定です。

今後、全国6大学を拠点大学としたネットワークが構築され、文系・理系を問わずにAI人材育成が進められることになるでしょう。 (※4)

 

ほかにも各大学の教育課程において、工学系教育改革が今後推進される予定です。 (※4)

これは今までの学科・専攻の枠組みを見直して、幅広い学部や学科でAI人材育成ができるようにする取り組みです。

場合によっては工学系の学部に限らず、その他の学部にまでAI技術修得の機会を広げることも検討されていて、より多様な分野で活躍できる人材が育成されることになるでしょう。

 

さらに産学連携による「リカレント教育」はすでに始まっていますが、それを充実させることによって、現場で働いている人材の再教育が可能になり、実践的な技能を持ちながらAI技術にも対応できる人材がますます増えることになるでしょう。 (※5)

この取り組みには産業界の積極的な協力体制も不可欠です。

3.高度な専門的技術を持つ、次世代の人材育成

経済産業省によると、今後必要とされるIT系人材はかなり不足することが予想され、「第四次産業革命」を進めるためのAI人材育成は、社会全体の課題だと言えます。

そのためにはITリテラシーの向上を図りつつ、「Society5.0」を支えるトップ人材と、実際の社会活動全般を担う人材の育成を急ぐ必要があります。 (※2)

 

ここで現在すでに進行中の、政府によるAI人材育成プログラムをいくつか紹介しましょう。 (※2)

25歳未満の人を対象にした「未踏IT人材発掘・育成事業」は、今までに見たこともないようなアイデアや技術を持つ、突出した人材を発掘する事業です。

これまでに1,700名を超える人材がこの事業の支援を受け、そのうちの255名以上がすでに起業したり事業化して、産業界の第一線で活躍しています。

 

「未踏ターゲット事業」は、将来的に有望視される分野に対して、産学官が連携して事業への支援を行いながら、それを支えるAI人材育成を進める事業です。

現在量子コンピューターの開発などをはじめ、ソフトウェアとハードウェアの両面から、次世代の社会を支える技術開発と人材育成が行われています。

 

もう一つ「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」は、企業や教育機関を問わず、AI人材育成につながる教育訓練講座を実施している機関に対して、経済産業省が認定・支援を行う制度です。

 

ほかにも大学生や高校生を対象に、大学と一般企業や自治体が連携して行う「インターンシップ制度」や、国外でのAI人材育成に参加できる「官民協働海外留学支援制度」の拡充など、「Society5.0」を支えるための取り組みは、今後一段と活発化するものと思われます。 (※4)

 

 

これから先に訪れる「Society5.0」という新しい社会では、暮らしや仕事場の中でITやAIがより身近なものとなるでしょう。その社会をリードする専門的な人材は、ひと足早く今から育成を始める必要があります。

 

先導役となるのは政府や各省庁と予測されますが、社会人に学び直しの場を提供したり、学生に職場体験の機会を提供するなど、教育機関や一般企業の協力も非常に重要になるでしょう。

AI人材育成は産学官の垣根を超えた、国をあげての革新的なプロジェクトになるのではないでしょうか。

 

 

 

参照資料

 ※1 「AI・ITの社会人講座、相次ぎ開講。大学は企業や生徒の囲い込み狙う」 日刊工業新聞 (2017/12/6)

https://newswitch.jp/p/11260

 

 ※2 「AI人材育成の取組」 経済産業省 (2019/1/30)

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/01/30/1413186_3_1.pdf

 

 ※3 「Society5.0」 内閣府

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

 

 ※4 「AI人材育成について」 各省合同資料 (2018/4/4)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/dai5/siryou4.pdf

 

 ※5 「リカレント教育の拡充に向けて」 文部科学省 (2018/7/31)

www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/08/03/1407795_2.pdf