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2018年09月14日

【てら先生コラム】第7回:「スモールステップ」指導法

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「スモールステップ」指導法

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 小学生の保護者から非常に多いご相談のひとつに「ウチの子は算数の文章問題が分からないと言っていて困っています」があります。「”問題文を何回も読んでみなさい” ”しっかりとゆっくり問題を読んでみたら?”とアドバイスしているのですが、解決しません。それどころか、私が解き方を説明しても上の空で聞いていなかったり、文章問題は解くのをあきらめてしまったりするようになりました」といったお悩みは毎年寄せられます。

 

 子どもが文章問題を解こうとしなくなった原因の中には、子ども自身が文章問題に対して苦手意識をもってしまったこともあると思います。算数の問題集で4~5文ある文章を見かけただけで、「この問題は解けないよ!」と、問題文を読みもせずに断言する子どもや、計算問題は嫌がらずに取り組んでいても「文章問題は分からないからパス!」と宣言する子どもは数多くいます。文章問題はいくつかの文から成り立っていて、文が増えたり長くなったりすればするほど、出てくる数字が増えたり大きくなったり、条件が増えてくる場合があります。また、さまざまな既習事項を工夫したり、組み合わせたりして考えなければならなくなってくるので、一般には問題の難易度が上がっていきます。長い文を見ただけで「難しいし、分からない」と戦意喪失気味になってしまう子どもの気持ちもわかります。

 このように、子どもは、手をつけることが出来ない問題を目のあたりにすると「分からない」と言います。では「分かる」とは、どのような状態のことなのでしょうか。「分かる」とは、「分けられる」状態のことです。

「分からない」のは「分けられない」のですから、「分けて」あげる。つまり、小さく刻んであげるのです。

 

「スモールステップ」法という指導方法をご存じでしょうか。これは、『1つの学習項目や単元をいくつかのさらに細かいレベルに分け、お子さまのペースにあわせて問題の難度を少しずつ上げていく学習方法』*¹ で、東京個別・関西個別が大切にしている指導方法のひとつです。

アメリカ合衆国の心理学者で行動分析学の創始者バラス・フレデリック・スキナー(Burrhus Frederic Skinner,)が提唱したプログラム学習の5原理の中にも「スモールステップ」の原理があります。

 

 先の文章問題の場合ですと、解答に必要なステップを、小さく刻んで「分けて」あげるのです。「分けた」内容を、子どもに確認していくと、ほとんどの場合は、問題全体ではなく、一部分でつまずいているのです。つまずいている部分について遡って指導することで、解けるようになることは勿論ですが、「分からない」ところをはっきりさせてあげるだけで、「あ、そういうことなのか」と子どもが自分で気付いて解けるようになることもあるのです。

 「スモールステップ」の考え方は、特に小学校の算数の教科書では意識して取り入れられているように思いますし、ビジネスの世界でも取り入れられており*²、ご存じの方も少なくないと思いますが、個別指導という指導方法と組み合わせることによって指導効果を高めることができるのです。

 

 顔つきが一人ひとり異なるように、子どもたちの「分からない」段階も一人ひとり異なります。全員一律に同じ数の階段に分けているのではなく、個別指導では、一人ひとりの子どもの最適な高さの階段を設定できます。また、指導を続けていくにつれて子どもは成長してゆきます。小学5年生から6年生にかけて男女とも6㎝以上平均身長が伸びる*³ ように、子どもの成長に合わせて、一段一段の階段の高さをだんだん変えていくことも個別指導ならばできます。

 

 スモールステップ指導が個別指導において効果的である理由はそれだけではありません。

一段一段について演習中心で確認していくことで、子どもの解答の正誤をすぐ知らせることができます。これにより、子どもは成長を実感することができます。何よりも、ステップごとに正解できれば、その都度子どもを褒めることができます。スモールステップで褒めることは、子どものやる気を引き出すことができ、子どもが自ら勉強するために必要な仕組みです。学校などの集団形式の授業ではスモールステップで教えることはある程度可能ですが、スモールステップで褒めることは、個別指導でしかできないことではないでしょうか。

 

*¹ https://www.kobetsu.co.jp/high/class/system.html

*² 「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方」福島文二郎著(中経出版)

*³ 平成28年度学校保健統計(文部科学省 学校保健統計調査報告書)

 

 

 

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。