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2018年12月03日

【教育改革】第10回:『大学入学共通テスト試行調査』

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第10回目は『大学入学共通テスト試行調査』についてお届けします。
※「大学入試改革と中学入試」 後編は次回を予定しております。

◇『大学入学共通テスト試行調査』の実施

 

 2018年11月10日と11日に*¹、のべ1851校、84444人の高校2年生・3年生を対象に『大学入学共通テスト試行調査』が行われました。*²

 

 今回の試行調査は、2017年度の試行調査で検証した「記述式問題を含む試験問題の作成」や「記述式問題の採点体制等」の検証だけではなく、実施運営面も含めた総合的な検証を行うために、実際の試験実施体制により近い形で、『大学入試センター試験』を利用する大学を会場として、のべ528会場で実施されました。*²

 

 今回実施された『大学入学共通テスト試行調査』の問題構成や内容が、必ずしもそのまま2021年1月からの『大学入学共通テスト』に受け継がれるものではありません。*³正式には、2019年度初頭に『大学入学共通テスト実施大綱』が策定・公表される予定です。*⁴

 

 今回は、『大学入学共通テスト試行調査』の問題構成や内容から見えてきた、現行の『大学入試センター試験』との違いを英語についてまとめてみたいと思います。

◇『リスニング』はどのような出題だったのか

 

 『リスニング』は、制限時間は30分と現在の『大学入試センター試験』と同じでしたが、100点満点の6大問構成。『筆記』と同じ配点となりました。*⁵ 

 

 『大学入試センター試験』の配点は、『リスニング』50点満点、『筆記』200点満点ですから、英語の各技能の能力をバランスよく評価していこうという方向性が読み取れます。*⁶

 

※「平成30年度試行調査_問題と配点」と「大学入試センター試験 平成30年度本試験問題と配点」を参考に東京個別指導学院が作成

 

 また、読み上げる英文が長い、第4問~第6問では1回読み上げになっていました。『大学入試センター試験』では、全て2回読み上げでした*⁷ から、より実際の場面に近い状況での英語を聞き取る力が求められました。そして、アメリカ英語以外(イギリス人や英語を母語としない話者)による読み上げも行われました。

 

 設問は、質問が問題用紙に記されず、質問から聞き取ることが必要な問題や、聞き取るだけでなく読まなければならない情報の量が多い問題、講義を1度だけ聞いて要旨をまとめたワークシートを、空欄に当てはまる語句を入れて完成させる問題、4人の発言を1度だけ聞いて、反対の立場で意見を述べている人物を全て選ぶ問題など、様々な情報を比較して判断する力、議論を聞いて要点を把握する力などが問われました。

 

 また、同じ選択肢を2回以上使える問題や、当てはまる選択肢を全て選択する問題も出題され、細かく整理し判断する力も求められました。

 

 『リスニング』は、スクリプト(英文の台本)を読めば内容を理解できるのであれば、聞き取る力の問題です。

しかし、スクリプト(英文の台本)を読んでも、英文内容を理解できなければ、英文を読み取る力に課題があるといえましょう。また、内容を理解したとしても、先述のように、1度の読み上げで内容を把握して、複数の情報から考えて判断し、即座に解答していく力が必要になりますので、これまでのように『大学入試センター試験』直前に少し練習すれば対応できるというわけにはいかなくなるでしょう。

◇『筆記』はどのような出題だったのか

 

 『筆記』の制限時間は80分、大問は6問でした。*⁸ 先述の通り、『大学入試センター試験』の200点満点から100点満点に変わっています。

 

 問題冊子の表紙*⁹にある通り、『リーディング』の試験となったため、『大学入試センター試験』で出題されていた、発音・アクセントや文法・語彙語法問題、整序問題などは出題されませんでした。

 

※「平成30年度試行調査_問題と配点」と「大学入試センター試験 平成30年度本試験問題と配点」を参考に東京個別指導学院が作成

また、設問指示文は全て英語になっています。

 

 Web上の料理レシピやレシピ利用者のコメントを読んで、その内容を事実と意見に分けてとらえる問題や、雑誌の記事を読み、登場人物の気持ちの変化を把握する問題、伝記の内容をワークシートにまとめる形式で設問に答える問題などが出題されました。

 このように、扱われている素材は、料理レシピ・Blog記事・ディベートやプレゼンの準備資料など日常生活や学校生活に身近なものが多く、複数の素材を比較して判断する力を問おうとしている方針が読み取れます。そして、設問形式では、当てはまるものを全て選ぶ問題も出題されました。

 

 『筆記』では『大学入試センター試験』以上に、多種・大量の英文を、速く読む力が必要になるでしょう。『大学入試センター試験』で出題されていた文法・語彙・語法問題などが、『大学入学共通テスト』になって出題されなくなるかもしれませんが、『筆記』『リスニング』とも、正しい読み取りができることが前提になります。『大学入試センター試験』同様に、選択肢では本文の内容が言い換えられているので、問題文や選択肢の正しい読み取りができないと得点することができません。また、当てはまる選択肢を全て選ぶ問題も出題されていますので、消去法で選択肢を選ぶテクニックだけでは高得点を挙げることができなくなるでしょう。ですから、基礎的な知識・技能は、『大学入学共通テスト』になっても確実に身につけていく必要があるでしょう。

◇『大学入学共通テスト試行調査』問題で示された”メッセージ”と学校教育への影響

 

 2017年9月24日に大学入試センターが主催したシンポジウム*¹⁰ で、「入試で出題される問題は、受験生や高校などの教育関係者に対する “メッセージ”だ」という講演がありました。*¹¹

 

 今回の『大学入学共通テスト試行調査』問題には、2017年7月13日に文部科学省から示された『大学入学共通テスト実施方針』に込められた“メッセージ”が反映されていると思います。これを受けて、高校での授業も変わってくるのではないでしょうか。英語については、各技能の能力をバランスよく評価する方向に一層変わっていくでしょう。具体的には、学校での英語教育も、英語の各技能の能力をバランスよく評価する英語資格・検定試験に対応できるような学習に近くなっていくように思われます。

 

 

◇保護者がすべきことは何か

 

 『大学入学共通テスト』を受験することになる、2018年度の高校1年生以下の子どもは、保護者や兄姉が学んできた英語授業や受けてきた英語入学試験とは異なるものになりそうです。英語に関しては、各技能をバランスよく早期から育成していくことが重要になりますので、英語学習は早め早めに前倒しして行っていくように、子どもへの働きかけをしていくことが、保護者には求められるでしょう。

 

 また、2019年度初頭に策定・公表される予定の『大学入学共通テスト実施大綱』や、各大学から発表され始めている大学入試における英語資格・検定試験の活用方法などの情報を正確に収集しておくことが必要なのではないでしょうか。

 子どもを取り巻く入試環境が大きく変わりつつありますが、子どもが通う学校や塾・予備校などが、その変化を把握し、対策をとっているのかという点にも気を配っておきましょう。

 

 

*¹ 大学入試センター https://www.dnc.ac.jp/news/20181111-02.html

 

*² 大学入試センター 都道府県別協力校数及び試験場数   https://bit.ly/2SiItm5

 

*³ 「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と 本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の

  趣旨について (平成30年6月18日 独立行政法人大学入試センター)  https://bit.ly/2KDZbdj

 

*⁴ 大学入学共通テストの導入に向けた試行調査(プレテスト)について(大学入試センター)    

  https://bit.ly/2E3pV6i

 

*⁵ 平成30年度試行調査_リスニング問題 (大学入試センター) https://bit.ly/2QmxI56

  平成30年度試行調査_リスニング問題スクリプト (大学入試センター)https://bit.ly/2SkULdZ

 

*⁶ 平成31年度大学入試センター試験出題教科・科目の出題方法等 (大学入試センター)https://bit.ly/2KFDlpB

 

*⁷ 平成30年度本試験の問題 リスニング(大学入試センター)https://bit.ly/2QsFRVq

 

*⁸ 平成30年度試行調査_英語筆記問題 (大学入試センター)https://bit.ly/2SgYo4s

  平成30年度試行調査_英語筆記問題と比較すると、試行調査では『リーディング』が強調されています。

 

*⁹ 平成30年度本試験の問題冊子の表紙 英語(筆記)(大学入試センター) https://bit.ly/2P51K8B

 

*¹⁰ 「大学入試センター・シンポジウム2017」 大学入試センター主催 「大学入学者選抜の新展開―新共通テストの課題と個別選抜改革の方向性―」https://bit.ly/2AuBZJB

 

*¹¹ 新共通テストの概要と課題 大杉住子氏 https://bit.ly/2radZat