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2019年01月04日

【教育改革】第11回:「大学入試改革と中学入試」 後編

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第11回目は「大学入試改革と中学入試」 後編についてお届けします。

◇中学入試の多様化が進んでいる

 

 2020年度以降の大学入試で求められる力の変化に対応して、社会で求められる力や、それにつながる力を育てていくために私立中高一貫校では、従来の国語と算数の2科入試または理科や社会を加えた4科入試という型にとらわれない「新しい型」の入試が続々と生まれてきています。

 

【教育改革】第9回:「大学入試改革と中学入試」 前編*¹では、英語入試と思考力・判断力・表現力などを問う問題や記述問題の入試についてご紹介しましたが、「新しい型」の入試はそれだけではありません。

国語や算数などの1教科に特化した入試、SDGs*² の17つの課題のひとつに関する出題を行う入試、レゴブロックを使って作品をプレゼンする入試、図書館で資料やネットを調べ、ハサミやのりも使いながらプレゼンを行う入試、プログラミングの入試、グループワークを取り入れる入試、小学校で取り組んできたことや中学で学びたいことを自宅のビデオカメラやスマートフォンで録画した動画も合否判定に使う入試など次々に生まれています。

 

中には、宝仙学園中学校共学部(理数インター)のように、ひとつの学校で「リベラルアーツ入試」「グローバル入試」「トリプルA(Athlete、Artist、最後のAは自分でAのつく全国レベルをアピール)入試」「理数インター入試」「英語AL入試」「新4科入試」「4科入試」「公立一貫対応入試」「帰国生入試」と多様な入試を行う学校も出てきました。*³

文部科学省「新しい学習指導要領の考え方」を元に東京個別指導学院が作成 *⁴

◇中学入試の多様化の理由

 

 これらの特徴のある入試を各中学校が取り入れているのは、少子化を受けて受験生の減少に歯止めをかけたいがためではありません。実は、現在でも応募者が多い人気校や難関校でも積極的に取り入れられているのです。

 

 2018年度の中学受験学年である小学6年生からは、新学習指導要領のもとで、大学入試を迎えることになります。この新学習指導要領が定義している『新しい時代に必要となる資質・能力』は、従来の点数化しやすい「知識・技能」の習得量だけでなく、「知識・技能」をもとにした「思考力・判断力・表現力等」、そして「学びを人生や社会に生かそうとする、学びに向かう力・人間性等」に及んでいます。学校教育のなかでそうした力を身につけるためのさまざまな取り組みが行われ始めています。新タイプ入試は、そうした動きを先取りしたもので、多様な視点から受験生の力を測ろうという意図があるのです。

 

 従来から、宝仙学園中学校共学部(理数インター)のように6~8回の複数回入試を行う学校はありました。しかし、数年前までは、国語と算数の2科入試または理科や社会を加えた4科入試を複数回実施する学校が主流でした。このような「4科・2科」型入試で複数回の入試を行っても、上記のような今後の世の中で必要とされる資質を測ることはできません。

表はイメージであり、特定の学校の入試方式を表したものではありません。

◇「新しい型」の入試で受験生の能力を測れるのか

 

 入試といえば「科目ごとの筆記試験」という考えが保護者の世代には強いかもしれません。「算数1教科だけ」や「レゴブロックのプレゼンテーション」といった「新しい型」の入試で本当に受験生の能力を測れるのかとの質問も受けることがあります。

 しかし、筆記試験で測れる学力は前述した『新しい時代に必要となる資質・能力』の一部分でしかありません。また、「新しい型」の入試を実施している学校の先生に伺ったところ、「新しい」型の入試で入学してきた生徒が、従来の「4科・2科」型入試で入学してきた生徒よりも中学校内での順位が必ずしも低いわけではないそうです。

中には「新しい型」の入試で入学してきた生徒が上位にいる学校もあるようですし、「4科・2科」型入試で不合格になり、「新しい型」の入試で合格してきた生徒がクラスを牽引する存在になっている学校もあるそうです。

 

 12歳の子どもは、それぞれ異なるポテンシャルを持っていますし、人生の中で成長の個人差が最も大きい年頃です。子どもがもっている潜在能力や主体的に学ぶ意欲、他者と一緒に物事を進めていく力、集中力、根気よく取り組む力など、従来の入試では測れなかった力を評価することは、子どもや保護者が、子どもの強みや得意な面に気付く契機にもなると思います。生徒たちそれぞれが、お互いの良さや強みを認め合い、刺激しあうことで、学校も生徒も活発になったと話す「新しい型」の入試の実施校の先生もいらっしゃいました。

 

◇「新しい型」の入試の拡大で保護者のすべきことは

 

 「新しい型」の入試の拡大により、好きな習い事や英語の学習などを中学受験塾に通うために中断することなく、中学入試にも挑める子どもも増えていくことになるでしょう。

 

 従来の「4科・2科」型入試に向けた受験準備では、小学校4年生ころから中学受験塾に通い、同じような教材の内容を覚えて、問題演習をこなしていくことが最重要でした。そして、その学習成果は偏差値というひとつの評価軸で示されてきました。また、偏差値という指標によって、各学校の合格可能性を推測することも可能でした。

 

 しかし、「新しい型」の入試では、偏差値という従来の指標だけでは測れない力をみようとする入試です。知識・技能面の学習は勿論大切ですが、「偏差値〇〇以上あるから、◎◎中学校を狙える」といった判断ができません。

子どもの中学受験を検討している保護者は、偏差値という一つの指標に振り回されず、学校のHPや入試説明会等で「新しい型」の入試の情報を集めることが大切です。また、今まで以上に多くの学校に足を運び、先生の話を聞き、在校生の様子を見て、どのような授業が行われているのか見学をして、それぞれの学校の特色をつかむことが重要でしょう。そうして集めた学校の情報と子どもの強みや得意な面、保護者が伸ばしていって欲しいと願う力が何なのかを総合的に判断して学校選びをしていくことが何よりも大切になってくるのではないでしょうか。

 

 

*¹ https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=1983

*² SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」のことで、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和と公正的社会など、持続可能な開発のための17の目標と169のターゲットをすべての国連加盟国が2030年までに達成すべく力を尽くすとしています。

日本での持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の概要は以下を参照してください。

https://bit.ly/2Qo9VBF

*³ 宝仙学園中学校共学部(理数インター)   https://bit.ly/2RkKnmk

*⁴ 文部科学省「新しい学習指導要領の考え方」 https://bit.ly/2DQ6HAj