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2018年02月27日

【教育改革】第1回「学力の3要素」

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。

「学力の3要素」とは何か

 

 最近『学力の3要素』という言葉を報道などで目にした方は多いのではないでしょうか。この『学力の3要素』とは高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜改革の検討を行っていた『高大接続システム会議』の最終報告(平成28年3月31日)では以下のように記されています。

 

3要素
学力の3要素
学力の3要素

 

現在、この『学力の3要素』を全ての大学入試方式で問う方向で検討が進められています。実は現在の大学入試で『学力の3要素』をバランス良く問う入試を実施している大学はごく少数にとどまるのです。

 

全ての入試方式で学力の3要素が問われるようになる

 

現状では、文部科学省が通知している『大学入学者選抜実施要項』※1において、AO入試は『知識・技能の修得状況に過度に重点を置いた選抜基準とせず』と記されており、推薦入試でも『原則として学力検査を免除し、調査書を主な資料として判定する』と明記されています。AO・推薦入試による大学入学者は全大学入学者の44%、私立大学入学者に限れば51%にのぼります※2が、一部の私立大学を中心に、事実上の学力不問の試験になっています。

 

そこで、AO入試や推薦入試でも、上記(1)の十分な「知識・技能」や(2)の「思考力・判断力・表現力」等の能力を問うように、実施要項の見直し※3が進んでいます。具体的には、調査書などの出願書類に加えて、小論文やプレゼンテーション、口頭試問など各大学で何らかの評価を実施するか、「大学入学共通テスト(現行の『大学入学者選抜大学入試センター試験』の後継試験)」を活用することが検討されています。つまり、平成32年度以降に大学入学を目指す高校生は、どのような入試を選んでも何らかの形で『学力』が問われることになります。

 

その一方で、一般入試は、ほぼ学力検査のみで合否判定を行っているため、大学入学後に必要とされる学習態度や学びに向かう意欲について問われていないという課題がありました。

 

そこで各大学で実施される個別学力検査でも、学校が作成する調査書や、志願者本人が記載する高校での学びの記録(留学経験やボランティア活動、外国語などの各種資格・検定)資料を活用するなどして、上記(3)の「学習に取り組む態度や意欲」等、受験者を多面的に評価して入学者選抜を行う※3ことが検討されています。

 

調査書イメージ
新しい調査書のイメージ
首都大学東京

偏差値だけ高くても合格できない

~充実した高校生活を~

 

これからは、高校での教科の学習成績だけではなく、生徒会、学校行事や部活動への取り組み、校外での様々な取り組みが大学入学者選抜材料の一つになります。したがって、推薦入試(平成32年度実施入試からは『学校推薦型選』)を希望する生徒は「学校の定期試験だけ頑張り評定平均をあげれば良い」、AO入試(平成32年度実施入試からは『学校推薦型選抜』)を希望する生徒は「得意な活動だけ頑張れば良い」、一般入試(平成32年度実施入試からは『一般選抜』)を希望する生徒は「偏差値を上げて入試科目の受験勉強だけ頑張れば良い」という姿勢では新しい大学入試には対応できなくなるでしょう。

 

既に、首都大学東京ではいち早く、平成 32 年度(2020 年度)実施以降の大学入試の全ての入試区分において、『学力の3要素』を評価する為に、『全ての入試区分において、高大接続、学力の3要素評価の観点から調査書を合格者の判定に活用する』ことを予告※4しています。

 

おわりに

 

 現在検討されている教育改革は、予見の困難な時代に、多様な背景をもつ人々と学び、働きながら、主体的に人生を切り拓いていく生徒の育成を目的としています。これから大学入試はどのように変わるのでしょうか。また、大学入試が変わることにより、高等学校での「学び」や「学び方」はどうかわるのでしょうか。大学入試や高等学校教育の変化は、高校入試、中学入試や中学校、小学校での教育への影響が既に及んでいます。このような国が進める教育改革とその影響に関して、継続的に情報を発信してゆきます。

 

₁ 平成30年度大学入学者選抜実施要項(文部科学省)

₂ 平成29年度国公私立大学入学者選抜実施状況(文部科学省)

₃ 平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告(文部科学省)

₄ 平成29年11月10日 公立大学法人首都大学東京「平成 33 年度(2021 年度)入試以降の大学入学者選抜における基本方針について」

⁵ 平成29年7月13日  高大接続改革の実施方針等の策定について(文部科学省))大学入学者選抜改革  新たな調査書における新旧対照表のイメージ