PICK UP

PICK UP 一覧に戻る

2018年04月02日

【教育改革】第2回『大学入試センター試験』から『大学入学共通テスト』に

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第2回目は「大学入学共通テスト」について

教育改革

◇「大学入試センター試験」は廃止される

2018年の春に高校に入学する生徒から、大学入学者選抜の制度が大きく変わります。2021年1月から『大学入試センター試験』が『大学入学共通テスト』に切り替わるのです。このテストは、出題科目は現在の『大学入試センター試験』と同じですが、3つの点で大きく異なります。

 Ⅰ.今までの『大学入試センター試験』は知識、技能を問う出題が中心でしたが、『大学入学共通テスト』では、思考力・判断力・表現力を中心に評価されます。

 

 

 Ⅱ.現在、すべての問題がマークシート式であるのに対し、「国語」(「国語総合」のうち古文・漢文を除く)と「数学」(出題範囲は「数学Ⅰ」)では記述式問題が導入されます。※1

 

 

 Ⅲ.現在、『大学入試センター試験』の「英語」では話す力、書く力を直接的に評価することができませんが、民間の英語資格・検定試験を活用することで、話す力、書く力も直接評価しようとしています。

◇『試行調査(プレテスト)』からうかがえる、『大学入学共通テスト』の片鱗

 2017年12月に、大学入試センターが『大学入学共通テスト』の導入に向けた『試行調査(プレテスト)』の「国語」「数学」「理科」「地歴・公民」について、問題や正答率の速報を公表していましたが、2018年3月14日に外国語科「英語」「リスニング」についても公表されました。そこで、今回は上記3点のうち、ⅠとⅡについてみてみます。

 

 変化のⅠについては、例えば、「複数の資料」を読み取り、情報を統合・考察する力を問う問題が多くの科目で出題されており、思考力重視の出題意図がうかがえました。

「英語」(筆記)では、Webサイトや新聞記事など日常接する機会の多い素材がとりあげられ、必要な情報を読み取る力や要約する力などが問われました。現行の『大学入試センター試験』で出題される発音やアクセント、慣用句や文法を知っているかどうかという知識を問う並べ替えの問題がなくなった一方で、全てが英問英答形式になり、「最も適当なものを以下から選べ」といった指示文も英語で表記されるようになりましたし、全体の語彙数も増え、読解に特化した出題内容でした。

 また、「リスニング」でも複数の人物の音声を聞き、賛成意見を述べている人物をすべて選ぶ問題や、講義を聞きワークシートを完成させる問題など、論点や概要をつかみながら聞くことを意識して行い、必要な情報を把握する力、相手の意図を把握する力、概要や要点を目的に応じて捉える力が求められました。また、音声が1回しか流れない問題も出題されました。

 マークシートの問題であっても、「正解が複数ある問題」が出題されただけでなく、「前問の解答と連動する問題」、「当てはまる選択肢をすべて選択させたり、解なしの選択肢を解答させる問題」など、今までみられなかった問い方で、受験生の思考力や判断力を測ろうとする意図が感じられました。

 

 次は、Ⅱの記述式問題についてです。

『試行調査(プレテスト)』の「国語」記述式問題では、「50字」「25字」「80~120字」の3問が出題されました。記述式問題というと、小論文のように解答の自由度が高い問題を想起される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、『試行調査(プレテスト)』で出題された問題は、必要な部分を抜き出し、的確にまとめれば解答が得られるような問題でした。解答するうえでの条件がいくつか設けられているため、正答例で示されたようないくつかの限られた正答パターンのどれかになりそうです。

「数学Ⅰ・A」でも、同様に記述式問題が3問出題されました。記述式問題というと、多くの県の公立高校入試で出題されている「数学」の証明問題をイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、今回の『試行調査(プレテスト)』では、論証を記述させるような出題ではなく、数式や言葉を用いて理由や方法を説明させる問題でした。解答欄の枠外に記述している場合は採点対象外となるため、過不足なく記述する力が必要ですが、解答条件が設けられており、「国語」と同様に正答例で示されたようないくつかの限られた正答パターンのどれかに落ち着きそうです。このような記述式問題は、異なる採点者でも公平な採点ができて短期間に採点作業が進めることができ、正解を導きやすい問題といえます。

◇今回の『試行調査』が『大学入学共通テスト』にそのまま受け継がれることはないしクリアすべき課題も残っている

大学入試センターでは、『試行調査(プレテスト)』で出題した構成や問題が、2021年1月からの『大学入学共通テスト』にそのまま受け継がれるのではなく、『試行調査(プレテスト)』の解答状況など分析を踏まえて検討すると発表しています。今回の『試行調査(プレテスト)』では、あえて現行の『大学入試センター試験』では出題していないようなチャレンジングな問題を集めて出題しているとのことでした。冒頭にあげましたⅠ~Ⅲについては、それぞれ、まだ具体的に決まっていない部分があると同時に、いくつかの懸念点も指摘されています。 例えばⅠについては、内容が複雑になって問題が難しくなりすぎると、平均点が大幅に低下するのではないかといった懸念や、成績中位層以下の学力の識別ができなくなるおそれがあるというものです。 Ⅱの、記述式問題の導入については、2018年の『大学入試センター試験』は55万人以上が受験しましたが、そのような膨大な受験者の記述式の答案を短期間で正確に採点できるのかという懸念です。また、上記Ⅱで紹介しました通り、採点の公平性や採点期間の短縮を重視するあまり、正答が導きやすくいくつかの正答パターンのどれかに落ち着いてしまうような記述式問題を出題することは、記述式問題出題のそもそもの目的を損なうことになってしまいます。 したがって、このような記述式問題の簡略化に対しては、全問題がマーク式である「大学入試センター試験」からの脱却を目指し『大学入学共通テスト』では、受験生が自ら答え考え、表現する力をはかろうとしていたはずだったのではないかという疑問の声があがっています。また、コストがどのくらい受験料に跳ね返ってくるのかといった不安の声も聞かれます。

◇色々な報道がなされているが、現時点(2018年3月20日時点)では正式決定していないことがたくさんある

2018年度は、2018年11月10日と11日に、『大学入学共通テスト』の試験会場となる大学を実施会場として、実施運営などを含めた総合的な検討を行う『試行調査(プレテスト)』を高校2年生と3年生を対象に実施する予定になっています。

そのうえで、2018年度の高校1年生が2年生に進級する2019年度の初頭をめやすに『大学入学共通テスト』の「実施大綱」が策定・公表されます。ですから2018年3月20日時点では、『大学入学共通テスト』の実施日や各科目の試験時間、配点、既卒生への対応などは正式には決まっていません。

◇今から行っておくべきことは何か

 一点目は情報面です。先述したように新しい大学入試制度の全容が決まっていない状態で、新大学入試が開始される年度だけは確定しています。その影響が最も大きい2018年度に高校に新入学する学年の生徒を中心にその前後の学年の生徒の保護者にとっては、さぞご心配のことと思います。そこで大切になるのは、正しい情報をとらえ、生徒に伝えていくことです。

 例えば、『大学入学共通テスト』は、かつて『大学入学希望者学力評価テスト』という名称で導入が検討されていました。そこでは年複数回の実施、合教科型問題の出題、コンピュータで受験するCBT(Computer Based Testing)の導入などが、あたかも2020年度から実施されるかのように数年前までは報道されていました。しかし、これらは全て(当面は)実施見送りとなりました。このように、ある情報が、現時点で正式に決定されていることなのか、導入が検討されていることなのか、かつて検討されていたが見送りとなったことなのか、など整理していく必要があります。新制度に向けて、正しい情報を得ている人が有利になる時代が数年間は続くでしょう。皆様のお役に立てるように、本ページでも随時情報を発信していく予定です。

 

 もう一点は、学習面です。入学試験問題というものは受験生に対して、教育理念や入学時点で求める力はどのようなものかを示す「メッセージ」のようなものなのだと以前から言われています。『試行調査(プレテスト)』の多くの科目では、複数の資料を読み取って考える力、長い文章を素早く読み重要な部分を見つける力、考えを過不足なくまとめる力などが必要な問題が出題されました。これらは科目を問わずにこれからの受験生に求められている力だといえます。

今回の教育制度改革における大学入学者選抜改革の大きな目玉のひとつである『大学入学共通テスト』の『試行調査(プレテスト)』の問題には、そうしたメッセージが込められています。今まで必要とされてきた力(知識・技能)を引き続き求められるだけでなく、思考力・判断力・表現力を問う問題を中心に『大学入学共通テスト』は出題されるのです。求められる力の領域が拡大しているのですから、準備は早く始めた方が、圧倒的に有利になります。これからの高校生はこのメッセージをきちんと受け止め、高校1年の頃から幅広い学力を身に付けるような努力がますます求められることでしょう。

 

そして、実は早期からの受験準備が大学入試のカギとなる大きな理由が他にもあるのです。それについては、次回記載したいと思います。

 

※1 出題科目としては「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」になります。

※本記事は2018年3月20日時点で公表されている情報を元に記載しております。