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2018年05月01日

【教育改革】第3回:大学入試制度改革の大きな柱は英語4技能評価

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第3回目は「大学入試改革の柱、英語4技能」について

教育改革

◇『大学入学共通テスト』は英語の資格・検定試験利用が基本

 

 前回(第2回)では、2020年1月実施分をもって『大学入試センター試験』が廃止され、2021年1月から『大学入学共通テスト』が始まるというテーマを取り上げました。第3回の今回は、大学入試制度改革の大きな柱のひとつである英語の入試改革について考えてみたいと思います。

 この『大学入学共通テスト』では、英語の「聞く・読む・話す・書く」の4技能をすべて評価する目的で、民間の資格・検定試験を活用することになりました。

本来は、英語4技能すべてを評価する同一の試験を『大学入試センター試験』のように同じ日、同じ時刻に実施できれば理想的でしょう。しかし、50万人以上が受験すると想定される『大学入学共通テスト』で、新たに「話す」「書く」を評価するテストを大学入試センターが独自に実施するには、莫大な時間とコストがかかります。結果として試験日程や受験料にも当然、跳ね返ってしまいますから、現実的とはいえません。そのため、英語4技能評価で運用面も含めたノウハウや実績のある民間の資格・検定試験を活用することになったのです。

 しかし、新制度導入による高校や大学での混乱の緩和や受験生の負担に配慮して、2024年1月実施分までは、大学入試センターが『大学入試センター試験』時代と同様に『大学入学共通テスト』の英語問題(筆記とリスニング)を作成することになりました。※1

 

 そして、2021年1月から2024年1月実施分までの4年間は各大学の判断で、英語に関しては、

   Ⓐ『大学入学共通テスト』の問題のみを課す

   Ⓑ英語の資格・検定試験のみを課す 

   Ⓒ両方を課す 

 という「選択利用」を可能としたのです。

 

 このうち、国立大学協会は2024年1月実施まで一般選抜(現在の「一般入試」を改称)の受験生全員に、上記Ⓒの『大学入学共通テスト』の英語試験と、英語の資格・検定試験の両方を課すことを申し合わせました。※2

これにより、国立大学の志望者にとっては、英語の資格・検定試験(以下、「認定試験」という)を受けておくことが必要となってきました。

 また、公立大学協会でも『「あくまでもそれぞれの公立大学の判断に従うものである」が、国公立大学に於いては「共通テストと認定試験の双方を利用することが望ましい」』と発表しています。※3

 なかには首都大学東京のようにいち早く、一般選抜において、英語の資格・検定試験を活用するとともに、『大学入学共通テスト』の英語試験(リスニングを含む)も併用することを発表した大学もあります。※4

 

 一方、Ⓐの「『大学入学共通テスト』の問題のみを課す」は残りましたが、 「大学入学共通テスト実施方針」※1 でも、「各大学は、認定試験の活用や、個別試験により英語4技能を総合的に評価するよう努める」と明記されていますので、何らかの形で英語4技能を評価することになるのではないでしょうか。

 いずれにしても、2025年1月実施の『大学入学共通テスト』からは大学入試センターは英語問題を作成せず、英語は資格・検定試験の活用に一本化される予定です。したがって、『大学入学共通テスト』英語問題は、入試制度の大幅な改革の経過措置として出題されるのであって、「英語の資格・検定試験を利用して英語4技能を評価する」という入試方法を基本として大学入試制度改革が計画されていることには違いありません。

◇『大学入学共通テスト』で利用される英語の資格・検定試験は?

 

 大学入試センターは、英語の資格・検定試験の活用を具体化するための仕組みとして「大学入試英語成績提供システム」を設け、資格・検定試験の受検生から大学入試センターへの成績送付の依頼があった回(英語の資格・検定試験出願時に受検生が申告する)の英語の資格・検定試験の成績を、大学入試センターが一元的に集約し、要請のあった大学等に対して提供することになりました。この大学入試センターの「大学入試英語成績提供システム」によって各大学に提供される結果は、高校3年生の4~12月に受検した2回までのものになります。

 2021年度入学生から始まる「大学入試英語成績提供システム」は、上図のような流れになっています。

▲「大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験」(2018年3月26日大学入試センター)。表の表記順は、この発表資料の表記順によります。

 この「大学入試英語成績提供システム」に参加する資格・検定試験が2018年3月26日に発表されました。その資格・検定試験は、左図の8種類です。※5

▲2018年3月27日文部科学省「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」検討・準備グループ(第12回)配布資料より

 これらの異なる英語の資格・検定試験について、例えばTOEFL iBTでの80点は実用英語検定では何級に相当するのかがわかるように、外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠「CEFR(Common European Framework of Reference for Languages:Learning,teaching,assessment)」との対照表を文部科学省が作成しました。

 CEFRのレベル分けは、初心者のA1から、「ネイティブ」に近いC2まで、6段階あります。Aは「基礎段階の言語使用者」、Bは「自立した言語使用者」、Cは「熟練した言語使用者」を意味し、それぞれ上(A2,B2,C2)、下(A1,B1,C1)の2段階に分けて、具体的な運用能力のイメージを示しています。

 実用英語技能検定協会によれば、高校卒業程度が英検2級の目安※6とされていますので、右図のCEFRのB1前後が大学入試の目安になると考えられます。

▲各資格・検定試験とCEFRとの対照表(付属資料①)

◇英語の資格・検定試験はどう利用される?

 

 英語の資格・検定試験は、どのように大学入試で使われるのでしょうか。出願資格、試験免除、試験の代替、みなし得点、加点などがあります。

国立大学協会は、各大学・学部等の方針に基づき、

 

 ①一定水準以上の認定試験の結果を出願資格とする

 ②CEFRによる対照表に基づき『大学入学共通テスト』の英語試験の得点に加点する

 

のいずれか、または双方を組み合わせて活用することを基本とする、と発表しました。※7

 先述のように、国立大学協会は2024年1月実施まで一般選抜(現在の「一般入試」を改称)の受験生全員に、『大学入学共通テスト』の英語試験と、英語の資格・検定試験の両方を課すことを申し合わせたので、国立大学の志望者は、『大学入学共通テスト』受験に先立つ高校3年生の4〜12月に、「大学入試英語成績提供システム」に参加する英語の資格・検定試験を必ず受けておく必要があります(大学に成績提供されるのは2回まで)。

 このように、志望する大学によっては、英語の資格・検定試験を受けておかなければ、出願すらできなくなってしまう時代がやってきそうです。

▲各大学の2018年度入学者選抜試験の募集要項より。一部の入試方式のみ記載している大学も含まれています。

◇『大学入学共通テスト』の開始年を待たずに英語の資格・検定試験を利用した入試は、すでに拡大中

 

 この『大学入学共通テスト』での英語の資格・検定試験を活用が話題になっていますが、英語の資格・検定試験を利用した大学入試は2018年度の高校1年生が大学入試を迎える年から始まるわけではありません。すでに多くの大学で、英語の資格・検定試験を利用した入試は始まっているのです。

 旺文社の調べでは、2018年度では 762 大学中 335 大学、全体の 44%が推薦・AO入試で英語の資格・検定試験を利用しています。※8

 

 「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係わる予告」(2017年7月13日公表)では、推薦・AO入試の新たなルールとして「学力不問」の入試方式を改善し「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」を適切に測ることとされました。その評価方法の例として、高校時代に取得した資格・検定試験が挙げられていますので、今後の推薦・AO入試でも、英語の資格・検定試験の活用が広がることは間違いありません。

 また、一般入試で英語の資格・検定試験を利用した大学数は、2016年度時点で50大学でしたが、2017年度は110大学と増加し、2018年度では2年前の3倍以上にあたる152大学にのぼりました。これは、日本国内の全762大学の約20%にもなります。※8 

 活用できる英語の資格・検定試験の種類や、必要なレベル、活用方法は大学や学部によって異なりますが、難関私立大学の一般入試で実用英語技能検定(英検)を利用する場合は2級以上のレベルが求められているようです。

◇英語の資格・検定の大学入試への利用には懸念の声もあがっている

 しかし、一方で大学入試への、英語の資格・検定試験の利用を懸念する声もあがっています。

「大学入試英語成績提供システム」に提供される英語の資格・検定試験は8種類ありますが、大学入試を目的に設計されたものから、留学目的やビジネス目的に設計されたものまで多岐にわたります。また、例えば「書く」試験でも、紙に解答する方式だけではなく、コンピュータのキーボードを使用して解答する形式のものもあります。このように、それぞれ用途や形式が異なる複数の資格・検定試験の成績を比較するのは困難ではないかとの見方や「どこまでそこに科学的な裏付けがあるのか」といった疑問の声が根強くあります。また、大学入試での活用方法が明確になっていないという点や、居住地や家庭の経済状況などで不公平が生じる懸念も指摘されています。その他に、高校授業への影響を心配する声もあがっています。

 

 このように、現在はまだ詳細が決まっていなかったり、流動的な部分が多く残されていますが、新しい制度が導入されてルールが変わる時期には、正しい情報を早くから得ている人が有利になるといえるでしょう。

◇英語の資格・検定試験利用入試はそれでも拡大する

 

 そのような意見が寄せられる中で、なぜ、このような方式を取ることになったのでしょうか。

新しい学習指導要領(小学校は2020年度、中学校は2021年度から全学年で、高校は2022年度入学生から学年進行)では、小学校中学年から「外国語活動」を必修化して「聞く」「話す」を中心に指導を始め、高学年から「外国語(英語)」を教科化します。高校だけではなく、中学校でも英語の授業を英語で行うことが基本になります。この新学習指導要領の外国語(英語)では、今までの英語4技能を、先にご紹介しましたCEFRに合わせて「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の5領域で目標を示し、目標を実現するための言語活動も、CEFRを参照しながら設定しています。

 これらの狙いはコミュニケーション能力を育成し、相手の考えをきちんと理解する、自分の考えをしっかり伝える日本人を育てることなのです。そのためにも、4技能を自在に使いこなして、実際の場面で英語を使ってコミュニケーションを取れるような教育を行おうとしているのです。

 もちろん、現行の学習指導要領でも、英語4技能の育成が重視されていますが、現在の大学入試が依然としてペーパーテスト中心で、『大学入試センター試験』でもリスニング問題が出される程度では、実質的に「聞く」「読む」の2技能しか問われないことになります。実際に高校では、高校2年生までは英語4技能をバランスよく伸ばす理想的な教育をしているものの、高校3年生では「大学入試対策」として2技能中心の指導にシフトせざるを得なくなっている進学校が多数あるのが現状です。ですから、「大学入試」で、英語の「聞く・読む・話す・書く」の4技能をすべて評価することになれば、高校の授業も4技能を意識した内容に変わっていくことが当然予想されます。

 

 2018年度の高校1年生が大学入試を迎える2021年度入学者選抜試験は、英語入試の大改革の起点といえる年になるでしょう。大改革ゆえ、まだ決まっていないことが多く、不安を感じている保護者・生徒も多いと思いますので、今後もこのページで正確な情報を発信してまいります。

 

 

※本記事は2018年4月10日時点で公表されている情報をもとに記載しております。

※1 2017年7月13日文部科学省 『大学入学共通テスト実施方針』

※2 2017年11月10日 国立大学協会『平成32年度以降の国立大学の入学者選抜制度―国立大学協会の基本方針―』

※3 2017年12月15日 公立大学協会『「共通テスト」の英語試験に係る認定試験等の利用の考え方』

※4 2017年11月10日 首都大学東京『平成33年度(2021 年度)入試以降の大学入学者選抜における基本方針について』

※5 2018年3月26日 大学入試センター「大学入試英語成績提供システム」の参加要件確認結果について

※6 日本英語検定協会 HP 各級の目安 http://www.eiken.or.jp/eiken/exam/about/

※7 2018年3月30日 国立大学協会『大学入学共通テストの枠組みにおける英語認定試験及び記述式問題の活用に関するガイドライン』

※8 旺文社 大学受験パスナビ『外部検定利用入試を徹底解説!【第1回】』https://passnavi.evidus.com/gaibukentei/01.html