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2019年10月15日

【てら先生コラム】第20回:最後の大学入試センター試験と2020年度大学入試

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「最後の大学入試センター試験と2020年度大学入試」についてお届けします。

本記事の掲載内容は、本記事執筆時点の情報に基づいています。

ご留意の程よろしくお願い申し上げます。

 

 

 10月10日に最後の大学入試センター試験の出願が締め切られ*¹、いよいよ2020年度入試が本格的に始まりました。今回は2019年度入試を振り返り、現在の入試動向から2020年度入試に向けて、今から保護者のできることについて考えてみたいと思います。

 

 2019年度の私立大入試についてみていくと、以下の2つの流れがありました。

 

①前年に合格者の絞り込みにより高倍率となった難関私立大を避ける動きがありました。

②2021年入学者選抜から始まる大学入試改革への不安感から「合格しておきたい」という安全志向が強まったため、

 中堅私立大学なども受験者が増加し、高倍率となりました。

◇①「定員管理の厳格化」による合格者の絞り込みの影響

 

 収容定員8000人以上の大規模私立大学に対し、収容定員を一定の割合超過すると補助金が交付されなくなる定員超過率ラインが引き下げられる「定員管理の厳格化」が2016年度から始まりました。*² 2015年までは定員の1.2 倍までの定員超過が許されていたのですが、2017年に1.14倍→2018年は1.10倍と抑制された結果、正規合格者を大幅に減らして対応する大学が続出しました。2019年度入試では、この「2018年度までの志願者増・合格者数絞り込みによる倍率上昇の動き」が大きく報道された影響もあり、早慶上智(早稲田・慶應義塾・上智)、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)といった大学群では、受験生から敬遠され、学部新設があった中央大学を除き、志願者数が減りました。*³ 文部科学省では、2019年度から予定していた入学定員充足率が1.0倍を超えた場合、入学者数に応じた私学助成金減額というペナルティ措置を当面見送る発表を行った*²こともあり、合格者数は早慶上智がほぼ2018年度並み、MARCHは5大学すべてで増加し*³、倍率が緩和されました。

 

◇②安全志向

 

 一方、日東駒専(日本・東洋・駒澤・専修)、大東亜帝国(大東文化・東海・亜細亜・帝京・国士館)といった大学群では早慶上智・MARCHといった大学群への敬遠者や早慶上智・MARCH志望者による併願数の増加や、②の「安全志向」の高まりの影響もあり、2019年度も志願者数が増えました。合格者数は日東駒専がほぼ前年並み、大東亜帝国で微増にとどまりました*³。また、浪人して来年に再受験となるのを避けるためにも、後期・中期まで粘る意識が強まったためか、私立大学の3月入試や後期入試志願者も昨年対比111%と伸びました。*⁴

 

 安全志向の傾向は、一般入試だけではなく、推薦入試やAO入試でも表れました。早期に合格を決めておきたいという受験生が増加した結果、一般入試以外の入試にも影響が出たのです。

 

 例えば同志社女子大学では、附属校推薦志望者は昨年対比132%、指定校推薦志望者は126%と、大きく増加しました。また、公募推薦志望者は昨年対比105%に対して合格者は88%と絞り込まれた厳しい入試でした。*⁵ このような動きは同大学だけではなく、旺文社の調査では、2019年度の私立大学の公募推薦の志願者は昨年対比118%、AO入試でも108%と大きく増加しました。合格者数はそれぞれ昨年対比100%、103%と抑えられましたので、公募推薦入試・AO入試も倍率がアップしました。*⁶

◇模擬試験結果にみる2020年度入試の志望動向

 

 現在の大学入試制度の最後となる2020年度入試では受験生の安全志向・現役志向がさらに強まり、大学群ごとの出願動向や難易度の変動は2019年度入試傾向から大きく変わることはないと予想されます。

 

 総合学力マーク模試6月の志望動向*⁷ や総合学力記述模試7月の志望動向*⁸でも、志望者数の昨年対比は、早慶上智、MARCH、日東駒専が減少、大東亜帝国が増加。近畿圏でも関関同立(関西・関西学院・同志社・立命館)、産近甲龍(京都産業・近畿・甲南・龍谷)で減少、摂神追桃(摂南・神戸学院・追手門学院・桃山学院)で増加となっており、中堅大学への志望者増の動きが強くみられます。

 

 また、2018年度から2019年度の入試本番で志願者の増加率が高かった大学(大阪商業・大手前・大阪学院・高千穂・桜美林・帝塚山学院・京都先端科学・和光・大阪経済法科)は総合学力マーク模試6月*⁷や総合学力記述模試7月*⁸の志望動向でも、志望者数の昨年対比は大きく伸ばしていることがわかり、2020年度入試でも倍率がさらに上がる可能性が高いと考えられます。

 

◇2020年度入試に向けて、保護者のできること

 

 現在の入試動向から2020年度入試に向けて、今から保護者のできることを7点あげます。

 

(1)推薦入試やAO入試が第一志望でも、一般入試も受験する可能性も想定しておく

 

 推薦入試やAO入試も、全体的には倍率が上がっており、2020年度入試はさらに厳しさを増すと予想されます。受験生としては、厳しい入試環境であっても、出願すれば合格を期待してしまうのが心情です。残念ながら不合格となってしまった場合、受験生本人が嘆き悲しんでしまうのは致し方ないところですが、保護者も一緒になって落胆してしまったりパニック状態に陥ってしまったりしないように、残念な結果だった場合も想定して準備をしておく必要があるでしょう。

 

 AO入試や推薦入試で受験した大学の一般入試の募集要項に目を通して、出願日程や出願に必要な書類が何なのかをチェックしておくと良いでしょう。また、一般入試で併願する可能性のある大学も調べておくと良いでしょう。

 

(2)以前は合格できた学力では合格できない可能性があることを理解する

 

 私立大学入試の難化は冒頭に掲げた①②のような「環境要因」が主原因なのです。2019年度入試結果をみていくと、2019年度の不合格者平均偏差値の方が、2018年度の合格者平均偏差値よりも高かった大学がありました。また同じ偏差値層でも2017年度入試よりも合格率が半減してしまった大学もあります。大学入試センター試験の英語筆記の全国平均点は2018年度123.75点、2019年度123.30点とほぼ同じだった*⁹ にもかかわらず、青山学院大学経済学部経済学科のセンター利用入試の合格者最低得点は、2018年度が500点満点で418点でしたが、2019年度入試では430点と上昇しています。*¹⁰

 

 2020年度入試に向けた模擬試験の合格可能性判定は、このような2019年度入試結果をふまえて定められていますので、受験生の兄姉が大学受験を経験した年ならば合格できた学力があっても、厳しい合格可能性判定が出る場合が多いのです。「受験生の勉強が足りない(受験生本人の要因)から模擬試験の合格可能性判定が悪い」とは言い切れないのです。合格に向けて、受験生が努力をしている点があれば、認め、励ますスタンスで接していただきたいと思います。

 

(3)模擬試験で良い合格可能性判定が出ていても、入試過去問題演習を丁寧に行うよう声をかける

 

 (2)とは反対に、模擬試験で良い合格判定が出ている場合でも、安心はできません。「A判定でも不合格になった」といった記事が雑誌やインターネットに掲載されていましたが、2020年度入試では、さらに倍率が上がる大学が増えそうです。模擬試験での合格可能性判定は、「その大学に合格できるかどうか」の判定そのものではありません。入学試験問題は各大学・学部によって出題傾向や難易度が異なりますので「その大学に合格できそうかどうか」は、受験する大学の入学試験の過去問題を実際に解いてみなければ、判断することができないのです。また、過去問題で合格最低点を超えていても、倍率が上昇した場合には、合格できない場合がある点も注意が必要です。

 

 受験生は総じて第一志望校の入試過去問題演習は、周囲が働きかけなくても熱心に行いますが、中には、併願校の入試過去問題演習は、後まわしにしてしまったり、丁寧に行わなかったりしてしまう受験生もいます。併願校が決まっている場合は、併願校の入試過去問題集を用意しておくことも、保護者ができる支援のひとつです。

 

(4)幅広い大学群から受験校を選ぶように声をかける

 

 模擬試験の志望動向からは、幅広い大学群の大学を志望して合格校を確保しようとしている傾向がみられますが、中には志望大学が特定の大学群に集中している受験生も多く存在します。模擬試験の志望校欄に記入されている大学が特定の大学群や偏差値層に集中しているような場合には、もう少し幅広い大学群から受験校を選ぶように声をかけることも必要です。学校や塾・予備校でも安全校の設定のために、同様の働きかけを受験生に行っていると思いますので、是非ご家庭でも同様の声掛けをお願いしたいのです。

 

(5)受験スケジュールの管理をする

 

 2020年度入試では、受験生ひとりあたりの受験回数は増えると予想されます。そのため、受験スケジュール管理も重要になってきます。出願締め切り日に間に合わなければ予定していた大学への受験ができませんし、受験生が検討している受験校の入試日に重複があれば、受験校の再検討が必要です。また、受験日が何日続くと集中力が切れてしまったり体力的に限界となってしたりするのかは、保護者がよくお分かりのことと思います。そして、入学手続き締め切り日を過ぎてしまえば、受験生が合格を勝ち取っていても、入学する権利を失ってしまいます。出願から入学までの手続きには保護者が関わるのですから、出願校の入試要項を大学HPなどから入手して、よく確認して、スケジュール管理を行うことは保護者の大切な役割です。

 

(6)予想外にお金がかかる場合も想定しておく

 

 (5)で触れたように、2020年度入試では、受験生ひとりあたりの受験回数は増えると予想されます。それによって、受験料も増えてしまいます。これは出願する際に見込める出費なのですが、予想外の出費が生じる場合もあります。例えば、推薦入試で合格を見込んでいたが、一般入試も受験することになってしまった。センター利用入試で合格を見込んでいたが、3月の入試や後期入試にも受験しなければならなくなった。実力相応校が不合格になってしまい、合格を既に得ている大学の入学手続き金をチャレンジ校の合格発表日前に支払わなければならなくなった。このように、入試結果によって、予定しなかった出費が生じるケースがあるのです。2020年度入試では、従来以上に起きると考えられます。これも、入試環境の変化による倍率上昇が主要因なのですが、予想外にお金がかかる場合も想定しておくことも保護者の役割です。

 

(7)相談先の確保をしておく

 

 夏休みを過ぎ、入試本番が迫ってくるにしたがって、「勉強しているのに成果が見えない」「モチベーションが下がってきた」「合格できるのかどうか不安」といった受験生の悩みも深刻になり、その姿を見守る保護者の心配ごとも増えていくことが多いようです。また、保護者と受験生本人の志望校が一致しない、保護者間で一致しないといった受験校決定に関する悩みが深刻化するご家庭もあるようです。

 

 そんな時に相談できる学校や塾の先生を確保しておくことも、保護者の役割のひとつでしょう。

 

*¹ 令和2年度大学入試センター試験実施日程

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00036153.pdf&n=03_%E8%A9%A6%E9%A8%93%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf

 

*² 平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の 取扱について(通知)

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/__icsFiles/afieldfile/2018/09/19/1409177.pdf

 

 *³ 入試結果 各大学のHPより

早稲田大学 https://www.waseda.jp/inst/admission/undergraduate/result/

慶應義塾大学 https://www.keio.ac.jp/ja/assets/download/admissions/examinations/general-admissions/toukei_soukatsu.pdf

上智大学 https://www.sophia.ac.jp/jpn/admissions/ad_toukei/index.html

明治大学 https://www.meiji.ac.jp/exam/information/data/index.html

青山学院大学 https://www.aoyama.ac.jp/admission/undergraduate/guide/

立教大学 https://www.rikkyo.ac.jp/admissions/undergraduate/data.html

中央大学 https://www.chuo-u.ac.jp/admission/faculties/data/

法政大学 http://nyushi.hosei.ac.jp/nyushi/data

日本大学 https://www.nihon-u.ac.jp/admission_info/application/result/

             https://www.nihon-u.ac.jp/admission_info/uploads/files/20180608134638.pdf

東洋大学 http://www.toyo.ac.jp/nyushi/admission/past-exam/#past-result

駒澤大学 https://www.komazawa-u.ac.jp/exam/data/

専修大学 https://www.senshu-u.ac.jp/admission/result.html

大東文化大学 https://www.daito.ac.jp/cross/admissions/result/file/file_data.pdf

                   https://passnavi.evidus.com/search_univ/2620/bairitsu.html?nendo=2018

東海大学 https://www.u-tokai.ac.jp/prospective_students/admission_app/result_apply/result_department/

亜細亜大学 https://www.asia-u.ac.jp/academics/gs_law/admissions/result/

帝京大学 https://www.teikyo-u.ac.jp/applicants/exam/result_medical/

             https://passnavi.evidus.com/search_univ/2700/bairitsu.html

国士館大学 https://www.kokushikan.ac.jp/admission/undergraduate/data/

 

*⁴ 旺文社教育情報センター http://eic.obunsha.co.jp/analysis/201905/

 

*⁵ 同志社女子大学 https://www.dwc.doshisha.ac.jp/about/public_info/candidate

 

*⁶ 旺文社教育情報センター http://eic.obunsha.co.jp/analysis/201904_02/

 

*⁷ 2019年度 総合学力マーク模試・6月 志望動向データ一覧

  2018年度 総合学力マーク模試・6月 志望動向データ一覧

 

*⁸ 2019年度 総合学力記述模試・7月 志望動向データ一覧

  2018年度 総合学力記述模試・7月 志望動向データ一覧

 

*⁹ 平成30年度大学入試センター試験実施結果の概要

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00033052.pdf&n=%E5%B9%B3%E6%88%9030%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E8%A9%A6%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%AE%9F%E6%96%BD%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf

 

*⁹ 平成31年度大学入試センター試験実施結果の概要

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035843.pdf&n=%E3%80%90%E8%A9%A6%E9%A8%93%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%80%91%E5%B9%B3%E6%88%9031%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%A5%E8%A9%A6%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E8%A9%A6%E9%A8%93%E5%AE%9F%E6%96%BD%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf

 

*¹⁰ 青山学院大学 https://www.aoyama.ac.jp/admission/undergraduate/guide/

 

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~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。