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2020年04月15日

【てら先生コラム】第25回:東京都立高等学校入学者選抜の英語4技能評価

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「東京都立高等学校入学者選抜の英語4技能評価」についてお届けします。

◆東京都立高等学校入学者選抜での『スピーキングテスト』の導入

 

 東京都教育委員会は2019年2月14日に、2020年度の中学2年生が受検する2022年度東京都立高等学校入学者選抜から『スピーキングテスト』を導入することを発表しています。*¹

 東京都教育委員会が導入する独自の『スピーキングテスト』は、*² 採点時間がかかることも考慮して2月下旬の通常の入学者選抜試験とは別日程(2022年以降は11月の第4土曜日から12月の第2日曜日までの間の週休日又は祝日のうちの1日)で、受検料は都負担により、1回実施する方向で計画を進めています。

 『スピーキングテスト』の導入後も、英語の「聞く」「書く」「読む」技能は他の4科(国語・社会・数学・理科)の学力検査と同一日に実施される予定です。つまり、『スピーキングテスト』(「話す」テスト)のみ別日程で年内に実施する予定なのです。

 受検対象は、都内の公立中学校3年生全員と、都立高等学校の受検を予定する生徒ですが、都内私立高等学校はもとより、他の道府県にも活用してもらえるよう情報提供・交換を行っていくとしています。実施会場は都内公立中学校以外の大学などの外部施設で、テスト専用のタブレット端末・イヤホンマイク・防音用イヤーマフの3点を使用して実施することになります。*³

 

東京都の『スピーキングテスト』導入スケジュール

「民間資格・検定試験を活用した東京都中学校英語スピーキングテスト(仮称)」事業

基本協定の締結について(東京都教育委員会)をもとに東京個別指導学院が作成

 都立高等学校入学者選抜において英語の『スピーキングテスト』を導入するに当たり、東京都教育委員会では、まず2018年にフィージビリティ調査(実現可能性があるかどうかを検証する調査)を実施し、そのテスト問題を公表しました。

 問題は2セット公表されており、共に全6問で構成されています。原稿を読み上げる問題、質問に対してイラストを見ながら説明する問題、自由にスピーチする問題が出題されていました。*⁴ 東京都教育庁の担当者に聞き取りをしたところ、「今後の議論により、分量や形式は変わる可能性はありえる」ということですが、教科書の英文の丸暗記だけでは対応ができない問題も出題されそうです。

 

 

◆『プレテスト』の結果の公表

 

 そして、東京都内公立中学校の中から、地域が偏らないように抽出した77校約8000人の生徒を対象に2019年 11月7日から 12 月 21日まで実施した『プレテスト』のスクリプト、正答例、採点基準を、東京都教育委員会は2020年2月21日に公表しました。*⁵

 問題はPART AからPART Dまで4つのPARTで構成されていました。

 PART Aでは、聞いている人に伝わるように、英文を声に出して吹き込む問題が2問で、状況や英文を理解した上で、正確な発音と適切な流ちょうさで音読ができるかどうかが問われました。

 PART Bは、図示された情報を読み取り、それに関する質問を聞き取った上で、適切に応答する力をみる問題で、イラストやチラシをもとに、英語の質問に対して英語で答える問題が4問出題されました。このうち2問は自分自身の考えを回答する問題でした。このPARTでは、4問とも準備時間10秒・回答時間10秒という出題でしたので、質問に対してすぐに判断して答える即興性も求められています。

 PART Cは、日常的な出来事について、話の流れを踏まえて相手に伝わるように状況を説明する力をみる問題で、4コマのイラストの内容を、英語で説明する問題が1問出されました。

 そして、PART Dでは、身近なテーマの質問に対して、自分の考えとそう考える理由を英語伝える力をみる問題が1問出題されました。

 2020年3月26日には、東京都教育庁からこの『プレテスト』の結果が発表され、*⁶ その中で、出題内容に関しては「受験者の能力を適正に評価することができた」と結論付けられています。

 

 

 『スピーキングテスト』は210点満点のスコアで、平均点が114.4点となっており、以下のような分布になっていました。

令和元年度 中学校英語スピーキングテスト プレテストの結果について(東京都教育委員会)

を参考に東京個別指導学院が作成

 

 

 『プレテスト』の難易度の参考として、英検(実用英語技能検定)のレベルの比較が付記されていますが、英検準2級相当の成績だった受験者が4%となっていたことがわかります。東京都立日比谷高等学校では、英語検定準2級又は同等の資格・能力を有することを「本校の期待する生徒の姿」として掲げているのですが*⁷、今回の『プレテスト』は、日比谷高等学校のような東京都立高等学校の進学指導重点校が入学者選抜で合格者と不合格者の差をつけることができるような難易度の問題も含んだ構成であったといえそうです。

 日比谷高等学校をはじめとする東京都指定の進学指導重点校7校の募集生徒数は東京都立高等学校(全日制等)の募集生徒数の約5%にあたります*⁸ ので、この『スピーキングテスト』での目標スコアは、190-210点となりそうです。

 

 

◆『スピーキングテスト』の入学者選抜での重み

 

 この『スピーキングテスト』の満点を20点と仮定した場合に、『スピーキングテスト』結果を学力検査の得点にどのように加えるかについても検討が進んでいます。*⁹ 具体的には、英語の学力検査の得点(100点)に『スピーキングテスト』の結果を加えた得点を140点に換算する方法(B案)を軸としているようです。

 現在、東京都立高等学校入学者選抜の学力検査に基づく選抜(前期・普通科)では、各受検者の調査書点は300点満点、学力検査の得点は700点満点に換算され、合計1000点満点で合格者を決定しています*¹⁰ が、東京都の担当者に確認したところ、この300点:700点という調査書と学力検査の得点割合の変更は行われないようです。現状の上記比率が変らない場合、英語の評定が5段階の3から4へひとつ上がると、1000点満点では約4.62点上がります。これに対して、(『スピーキングテスト』の満点が20点として)B案が採用された場合、20点満点の『スピーキングテスト』の4点分が、1000点満点の約4.67点と換算されますので、評定1ポイント分以上の重みがあることがわかります。 2019年に行われた『プレテスト』の問題数は合計8問でした。『スピーキングテスト』を2点問題と3点問題で構成し20点満点と仮定した場合、『スピーキングテスト』1~2問の正解・不正解で評定1ポイント分が逆転してしまうことになります。そして先に掲げた分布図のように、『スピーキングテスト』の『プレテスト』では、成績に差をつけやすい難易度構成になっていた点を考慮すると、東京都は「話すこと」の評価を重要視していることが伺えます。

 

令和2年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書(東京都教育委員会)

を参考に東京個別指導学院が作成

 

 

◆英語学習の前倒し、出願指導の変化が起こる

 

 東京都立高等学校入学者選抜のうち、学力検査に基づく選抜は2月(2020年は2月21日)に行われています*¹¹ が、この『スピーキングテスト』に関しては、その約3ヶ月も前に実施されることになるので、実質的に入学者選抜試験の前倒しということになります。従って、「2学期の期末試験までは、学校の定期試験をはじめとした評定を上げる学習に専念して、入学者選抜試験対策は冬休みに入ってから頑張れば良い」といった受験準備では間に合わないことになります。

 また、2019年11月に実施された『プレテスト』の結果は、2020年1月中旬頃に返却されました。同様のスケジュールで『スピーキングテスト』の結果返却が行われた場合、東京都立高等学校入学者選抜のうち、学力検査に基づく選抜の出願日は2月に入ってから(2020年は2月5日・6日*¹¹)ですから、『スピーキングテスト』の結果をふまえて、出願校を見直す受検生も出てくると思われ、出願動向にも変化が出てくる可能性があります。

 

 

◆英語4技能評価への流れは進む

 

 『スピーキングテスト』を受検することになる2020年度の中学校2年生は、中学校3年生になった時に、中学校の学習指導要領が改訂*¹²されて、英語は「聞く」「話す」「読む」「書く」の4領域から、「話す」が[やり取り]と[発表]の二領域に分かれ、5領域になります。*¹³ また、高等学校の学習指導要領も、この学年が高等学校に進学した年度から新しい学習指導要領になり、4技能5領域すべてについて英語力の底上げが求められ(特に「話すこと」「書くこと」といったアウトプットの能力の向上)、 『英語コミュニケーション』や『論理・表現』といった新しい科目も始まります。*¹⁴ そして、文部科学省では、この学年から大学入学者選抜での英語試験の仕組みを変えようとしています。*¹⁵ 

 

 このような公立高等学校入学者選抜において、“「読む」「聞く」「話す」「書く」の英語4技能を適切に評価する”という方向は東京都に限ったものではありません。長野県でも『スピーキングテスト』の導入を検討しています。*¹⁶ また、大阪府では既に、英検やTOEFLなど英語資格・検定試験の成績を英語の入学者選抜試験得点に換算し、通常の英語の試験と比べて成績の良い方を使うことを認めています。*¹⁷  これらの動きは、徐々に全国に広がっていくでしょう。

 

 

◆保護者のできることは何か

 

 大学入学者選抜や高等学校入学者選抜において、英語は、「読む」「聞く」「話す」「書く」の英語4技能を適切に評価するという方向で進んでいます。

 

大学入学者選抜で英語資格・検定試験を活用している大学数

2021年度は、文部科学省調査『令和3年度大学入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用に関する調査結果 第3報(令和2年3月2日時点)』、

2017年~2020年は旺文社教育情報センター2020年3月2日 『外部検定利用入試2020年は微増!』をもとに東京個別指導学院が作成

 

 

 2020年度の中学生や小学生の子どもには高等学校入学者選抜で英語4技能が評価される可能性があること、子どもが受検する高等学校入学者選抜では英語4技能が評価されなくても、大学入学者選抜では英語4技能が評価され、英語4技能が評価される高等学校入学者選抜を経験してきた生徒と共に大学入学者選抜が行われることを話し、低学年のうちから積極的に英語資格・検定試験を受験しておくように話しておくべきでしょう。特に難関進学校を目指す場合には、英検準2級以上を目標にすると良いでしょう。

 また、東京都内の2020年度の中学校2年生が中学校3年生にあがった時には、都立高等学校入学者選抜に向けた模擬試験も、何らかの形で『スピーキングテスト』に対応したものが実施されるかもしれません。都立高等学校入学者選抜でマークシート方式による解答が一部の問題で導入された際にも、模擬試験業者は、その動きに対応してマークシート方式も取り入れた模擬試験を行ったからです。『スピーキングテスト』の本番の実施は、11月の第4土曜日から12月の第2日曜日までの間における週休日又は祝日のうちの1日とされていますので、それ以前に模擬試験を積極的に受験するように子どもにはたらきかけていくことも重要でしょう。

 大学も高等学校も、入学者選抜試験の改革が始まったばかりですから、今後新しい情報が発表されたり変更が生じたりすることがあるでしょう。志望する学校や大学入試センター、各県の教育委員会のHPを参照するなどの情報を収集しておくことは保護者がやっておくべきことです。

 そして、今何をやっておくべきか、最新の情報は何かについての信頼できる相談先を確保しておくことも、保護者の出来ることの一つです。

 

 

 

 

*¹ 「東京都中学校英語スピーキングテスト」について  東京都教育委員会 2019年2月14日

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2019/release20190214_04.html

 

*² 「民間資格・検定試験を活用した東京都中学校英語スピーキングテスト(仮称)」事業 基本協定の締結について  東京都教育委員会   2019年8月21日

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/08/21/10.html

 

*³ 英語「話すこと」の評価に関する検討委員会報告書   東京都教育委員会   2019年2月14日

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2019/files/release20190214_04/03_1_houkokusyo.pdf

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/press_release/2019/files/release20190214_04/03_2_houkokusyo.pdf

 

*⁴ 英語「話すこと」の評価に関するフィージビリティ調査における 中学校英語スピーキングテスト  スクリプト   東京都教育委員会  2018年11月8日

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/11/08/documents/08_01.pdf

 

*⁵ 令和元年プレテスト  東京都教育委員会

スクリプト https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/pretest_questions_r1/01.pdf

解答例 https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/pretest_questions_r1/02.pdf

採点基準 https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/pretest_questions_r1/03.pdf

 

*₆ 令和元年度 中学校英語スピーキングテスト プレテストの結果について

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2020/files/release20200326_03/bessi.pdf

 

*⁷ 令和2年度(2020年度)東京都立高等学校入学者選抜「本校の期待する生徒の姿」   東京都教育委員会  

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/exam/files/guide2020/28.pdf

 

*⁸ 令和2年度 都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査結果(概要)  2019年1月7日

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/application/files/release20190107_01/01.pdf

令和2年度  都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査結果

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/application/files/release20190107_01/03.pdf

日比谷高等学校・西高等学校・戸山高等学校・青山高等学校・国立高等学校・立川高等学校・八王子東高等学校の7校が進学指導重点校として指定されています。

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2017/release20170824_02.html

 

*⁹ 令和2年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書   東京都教育委員会  2019年7月25日

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/admission/high_school/exam/files/release20190725_04/besshi.pdf

 

*¹⁰ 令和2年度(2020年度)東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について   東京都教育委員会  2019年9月19日

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/admission/high_school/exam/release20190919_01.html

 

*¹¹ 全日制都立高等学校の入試日程  東京都教育委員会 

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/exam/files/guide2020/02.pdf

 

*¹² 今後の学習指導要領改訂に関するスケジュール  文部科学省 

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/_icsFiles/afieldfile/2019/02/08/1384661_001.pdf

 

*¹³ 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語    文部科学省   2017年告示

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_010.pdf

 

*¹⁴ 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語    文部科学省   2018年告示

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/28/1407073_09_1_1.pdf

 

*¹⁵ 萩生田光一文部科学大臣記者会見録   文部科学省   2019年11月1日

https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1422393.htm

 

*¹⁶ 長野県高等学校入学者選抜制度等検討委員会 第6回 資料   長野県  2018年1月24日

https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/koko/senbatsukentou/documents/602shiryou.pdf

 

*¹⁷ 大阪府立高等学校の英語学力検査問題改革について   大阪府教育委員会   2019年3月8日更新

http://www.pref.osaka.lg.jp/kotogakko/gakuji-g3/eng_sam.html

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~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。