EN

IRリリース

2019年12月16日

【てら先生コラム】第22回:大学入試直前期に保護者のできること

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「大学入試直前期に保護者のできること」についてお届けします。

 AO入試や推薦入試の合格発表も始まりました。一般入試の出願受付を年内から開始する大学もあります。*¹ そして、年が明ければ大学入試センター試験や一般入試も始まり、大学入試はいよいよ本格化します。今回は、入学試験直前期で保護者のできることについて5点まとめてみたいと思います。

◆保護者から最も多いご相談

 

 受験直前期の子どもへの接し方に関する保護者からのご相談は大変多くあります。

 

 子どもの方から相談してきた場合や、保護者と子どもがこれまで受験勉強に関して密にコミュニケーションがとれているご家庭は別として、入学試験直前の時期になったからといって、急にあれこれ保護者が勉強面でアドバイスをしても、その効果は期待できないどころか、逆効果になってしまうことがあります。特に、勉強面へのアドバイスは避けた方が良いのです。実は特別なことは何もしないほうが良い場合が多いようです。なぜなら、子どもは保護者のことを先生だと思ってないからです。殆どの場合、保護者は大学入試の専門家ではありませんし、子どもにとっても、保護者が自分の勉強の状況を良く分かっているとは感じていませんから、入学試験に向けての追い込みの時期だからと言って急に口を出して欲しくないと思っています。

 

 学習面でどうしても伝えなければならないことがある場合は、信頼できる学校の先生や塾の先生に相談し、信頼している先生から子どもに伝えてもらう方が効果的な場合が多いようです。

 

 では、保護者は何をしたら良いのでしょうか。

◆心身の健康管理

 

①保護者も含めた家族の体調管理

 

 食事面も含めて、子どもの体調管理に細心の注意を払う保護者は大変多いのですが、保護者自身がインフルエンザにかかってしまったというケースもありました。子どもが安心して受験に臨めるように家族の健康管理に注意を払うことが、受験する子どもへのバックアップにもなります。バランスのとれた食事、手洗いの励行、室温管理などは重要です。また、乾燥しがちになり、喉を痛めやすい時期になりますので、加湿器や空気清浄機を稼働させるのも良いでしょう。

②睡眠の管理

 

 12月には冬休みがあり、年開けからは3年生は自主登校の高校もあり、生活習慣が乱れがちになります。入学試験前の追い込みの時期には、子どもも夜遅くまで勉強に取り組んでしまい、生活が夜型になってしまいがちです。その結果、起床時間が遅くなってしまう子どもも少なくありません。

 

 しかし、例えば大学入試センター試験の1科目目の試験は午前9時半から開始されます*²ので、朝型への切り替えが必要でしょう。「高校生にもなって朝に自分で起きることができないなんて」「自分の受験なのだから、自分で起きるべき」と感じる保護者もいらっしゃるかもしれませんが、希望する起床時間に必ず起こしてくれる存在は、子どもにとっては心強い味方となる場合も少なくありません。これは昼寝でも同様のことがいえます。20分後に確実に起こしてくれる家族がいて、寝過ごしてしまう心配がなければ、子どもにとっては安心です。ご家庭の状況によってサポートできる範囲は異なるでしょうが、子どもが望めば、可能な範囲で行いたい支援です。

③受験スケジュールの確認

 

 模擬試験では、1科目目と2科目目の間の休憩時間は10~15分の場合が多いのですが、大学入試センター試験の場合は、例えば国語と外国語の間の休憩時間は50分です。*²早稲田大学の場合は、科目間の休憩時間は60分(お昼は90分)にもなります。*³ 模擬試験とは異なる状況で長時間にわたって集中し続けるのですから、精神的な疲労が蓄積していきます。ですから、4日以上連続して受験するのは一般的にはお勧めしません。

 

 また、入学試験は模擬試験とは異なった雰囲気で行われるので、第一志望の大学の入学試験が最初の入学試験日とならないようにしたいものです。第一志望の大学の入学試験で、子どもの持てる力を十分に発揮できるように、第一志望の大学の入学試験日よりも前に、併願大学の入学試験を受験して、雰囲気に慣れておいてもらいたいものです。

 

 子どもが立てた受験スケジュールで、心配な点がある場合は、学校や塾の先生に相談してみるのが良いでしょう。

◆入学試験に関する手続きの管理

 

 どの大学を受験するのかは、子ども本人が決めるのが望ましいのですが、手続き面では保護者がバックアップできることがたくさんあります。

 

④必要書類の準備

 

 調査書などの出願資格を証明する書類は子どもを通して在籍校・出身校に請求しますが、受験予定の試験回数より多めに請求して、追加出願が必要になった場合に備えておくことをお勧めします。同じ大学で複数の学部や入試方式に同時に出願する場合は、卒業(見込み)証明書の提出は1通で良い大学が多くなってきましたが、追加出願をする場合は、改めて卒業(見込み)証明書等の提出が必要な大学もあります。入学試験要項を大学のホームページなどからダウンロードして確認しておくことが必要です。

 

 また、英語資格・検定試験を利用した入学者選抜を行う大学が年々増加しています*⁴が、英語資格・検定試験を利用した入学者選抜に出願する場合には、大学によって試験結果の証明書の提出が必要になります。提出する証明書は原本が必要な大学、カラーコピーによる提出でも良い大学など様々です。そして、試験の種類によって試験実施団体に証明書の直送の依頼が必要な場合がありますので、入学試験要項を大学のホームページなどで確認しておくことが必要です。

⑤Web出願時代の注意点

 

 現在の大学入試は、Web出願が一般的ですが、一部の大学ではWeb出願を行っていません。その場合は、大学から出願書類を取り寄せる必要があります。まず、どのような方法で出願するのかを保護者も確認しておくことが必要です。

 

 次に、Web出願といってもWebで全ての出願手続きが完了するわけではない点に注意しておく必要があります。「志願票」 や 「宛名ラベル」 などを印刷する必要がありますので、A4サイズが印刷できるプリンターを用意しておくと便利です。印刷できる環境がご家庭にない場合は、スマートフォン等にダウンロードし、コンビニエンスストア等で印刷することができますが、複数校出願する場合には、案外手間がかかります。

 

 また、Webで出願を行っても、必要書類を大学に送付しなければ出願手続きが完了とはなりません。期日までに漏れなく余裕をもって送付できるように一覧表を作るなどして確認しながら準備を進めることが必要でしょう。送るべき書類に記入ミスがあったり、期日を守れていなかったりすると、入学試験を受けることが出来なくなってしまいます。

 

 また、子どもが受験を希望している大学の、

 

  ・入試ごとの出願締め切り日

  ・入試日

  ・合格発表日

  ・入学手続き締め切り日

 

 の4つの日程、

 

  ・各受験方式の受験料

  ・割引制度や受験料返還制度の有無と条件

  ・入学金(入学予約金)の金額

 

 なども一覧表にしてまとめておくことをお勧めします。学校や塾で一覧表の作成を指導している場合もありますが、作成していないような場合や内容に不足がある場合には、ご家庭で補っておくことをお勧めします。

 

 学習面に関しては、子どもや学校や塾に任せ、「出願手続きはやっておくから安心しなさい」「起こして欲しい時間があったら、遠慮なく言いなさい」といったその他の面でのサポートに徹することで、子どもを応援している姿勢を見せる方が良い場合が多いようです。そして、子どもから相談してきたら、いつでもサポートできるように、保護者自身が相談できるような相談先を確保しておくと良いでしょう。

 

 

 

*¹ 同志社大学 2020年度 入学試験要項

例えば同志社大学では2019年12月24日から一般選抜入学試験の出願受け付けが始まります。

https://www.doshisha.ac.jp/attach/page/OFFICIAL-PAGE-JA-619/130052/file/2020nyushi_yoko.pdf

 

*² 大学入試センター試験 時間割

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00036153.pdf&n=03_%E8%A9%A6%E9%A8%93%E6%A6%82%E8%A6%81.pdf

 

*³ 早稲田大学入試要項

http://www.admission.waseda.jp/3-3gaiyou.pdf

 

*⁴ 2019 年度入試 英語外部検定利用状況 【一般入試編】 利用大学数は 5 年連続増加!(旺文社教育情報センター) 2019年2月1日

http://eic.obunsha.co.jp/resource/viewpoint-pdf/201902_1.pdf

【てら先生コラム】バックナンバーはこちらから

 https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=2111

 

 

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。