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2018年06月15日

【てら先生コラム】第4回:「漢字や単語の暗記がニガテです」というご相談

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「漢字や単語の暗記がニガテです」というご相談について。

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 単語や漢字を覚えるのがニガテだと感じている子どもは、今も昔も多いようです。単語テストや漢字テストは多くの学校で頻繁に行われていますが、漢字テストや単語テストに向けて勉強しても、期待した結果が得られていないと感じる子どもも多いようです。そこで今回は、暗記に関する興味深い研究結果をご紹介し、学習の仕方のヒントにしていただければと思います。

 

◇学習のしかたによって、記憶量の差は生じるのか

 

 米パデュー大学のカーピック博士は、ワシントン大学の学生に、40のスワヒリ語を記憶してもらう実験を行いました。※1

  全員に40のスワヒリ語を暗記してもらい、覚えたかどうか確認テストを行いました。ここまでは全員共通です。最初の確認テストが終了した後の勉強のやり方について、博士は、学生を4つのグループに分けて、下図のように各グループ異なる方法で暗記してもらいました。

 第1のグループの学生には「mashua(スワヒリ語)-boat(英語)」のように、40個を通しで暗記し、その後に40個全部について、「mashua-?」のように確認テストを実施します。この暗記と確認テストの組み合わせを、40個の単語全てを覚えるまで何度も反復してもらいます。

 

 第2のグループの学生には、確認テストで正解できなかった単語だけを選んで再度暗記してもらいます。しかし、確認テストでは毎回40個全部を出題して、答えてもらいます。そして確認テストで満点が取れるまで暗記と確認テストを反復してもらいます。

 

 第3のグループの学生には確認テストで正解できなかった単語があっても、初めから40個全部を暗記してもらいます。そして、確認テストで正解できなかった単語だけを、再度確認テストを実施します。そして、満点が取れるまで暗記と確認テストを反復してもらいます。

 

 第4のグループの学生には、確認テストで正解できなかった単語だけを再度暗記して、再確認テストでも正解できなかった単語だけを確認テストを行います。そして、再試験すべき単語がなくなるまで暗記と確認テストを反復してもらいます。

中学校や高校の公開授業を見学していると、第4のグループのような学習方法をとっている光景をしばしば見かけます。第1グループのような、以前のテストで正解した単語も含めて、全部の単語を暗記して、全部の単語のテストをするのは面倒がる子どももいるかもしれません。

◇実験結果からわかったこと

 

 カーピック博士の実験の結果はどうだったのでしょうか。

結果的に、この4グループの間には暗記の早さや平均点には差はなかったそうです。

 そこでカーピック博士は、1週間後に再テストを行いました。1週間後の確認テストの結果は、第1グループと第2グループの平均点は約80点の成績であったのに対し、第3グループと第4グループの平均点は約35点にとどまったそうです。

 

 第1グループと第2グループに共通する学習プロセスは、確認テストで毎回40個全部の単語を思い出すアウトプット練習をして覚えたという点です。

 

 第3のグループでは、暗記は毎回40個について行っていますが、確認テストを通して暗記した単語を思い出すアウトプット練習は、前回思い出せなかった単語に対してのみ実施しています。

 

 私たちの脳は、情報を何度もインプットするよりも、その情報を何度もアウトプットしてみることで、長期間情報を記憶することができるということがわかります。

 

 第2グループの学生のように、覚えていない単語だけ覚え直し (=インプット) をしても、確認テスト(=アウトプット)を全問やれば記憶効果が高かったのは注目すべきです。確実に暗記するには、演習やテストなどのアウトプットをくり返すことが効果的なのです。

◇「演習中心の授業」を大切にしている理由

 

 脳に情報をインプットするだけで記憶が定着すると考えるのは大きな間違いなのです。学習においては、情報をインプットする過程と、その情報を使ってアウトプットする過程の両方を考慮しなければいけません。そして、記憶を定着させるのにどちらが重要かというと、実はアウトプットなのです。

東京個別・関西個別では解説(インプット)中心の授業ではなく、演習(アウトプット)中心の授業を大切にしています。これは、インプットよりもアウトプットの方が記憶の定着に影響が強いという脳の性質をふまえると、理にかなった指導法だと言えます。

 

 前回のコラム※2でも触れましたが、学校の試験では、一般的には インプットした情報量の多さや、インプットに費やした時間の多さではなく、アウトプットの早さ・正確性・適確性が問われます。時間をかけて勉強しているにもかかわらず期待する成果が出ていないような場合、学習時間の中で、どれだけアウトプット練習をしているのか、に注目してみると改善点が見えてくる場合があるのです。

 

※1『サイエンス』誌2008年2月15日号

(Jeffrey D. Karpicke and Henry L. Roediger III. The critical importance of retrieval for learning. Science, 319:966-968, 2008.)

http://learninglab.psych.purdue.edu/downloads/2008_Karpicke_Roediger_Science.pdf

 

 

※2【てら先生コラム】第3回:『ケアレスミス』というミス

https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=432

 

 

 

 

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。