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2018年07月13日

【てら先生コラム】第5回:学習時間と学習成果

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「学習時間と学習成果」について。

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 夏休みが近づいてきました。夏休みは長期間にわたるためか、期間中の日ごとに起床・就寝時刻、家庭学習開始・終了時刻などを記入する予定表を作成、提出させる学校が少なくありません。中学校や高等学校の中には、担任の先生などから「学年×1時間」「学年×1時間プラス1時間」といった家庭での学習時間の目安を示す学校もあるようです。

 長期休暇に向けて、子どもの生活習慣や学習習慣が乱れないように留意することは大切なことです。重要だからこそ、学校も子どもに計画表を作成させて生活習慣・学習習慣の維持を意識付けしようとしているのでしょう。

 そして、長期休暇前のこの時期から、保護者から「ウチの子は遊んでばかりで家で30分も勉強しないので困っています」「ウチの子は毎日5時間も勉強して頑張っているのに全然成績が上がりません」といった相談が増えてきます。そこで、今回は、子どもの勉強時間について考えてみたいと思います。

◇学習時間と学習成果はセットで考える

 

 「ウチの子は遊んでばかりで家で30分も勉強しないので困っています」と「ウチの子は毎日5時間も勉強して頑張っているのに全然成績が上がりません」は、一見正反対な相談なのですが、共通しているのは「机に向かっている時間」や「勉強部屋にいる時間」が評価の対象になっていることです。

 しかし、「かけている時間」とあわせて留意しなければならないのは、「成果はどうなのか」ではないでしょうか。「かけた時間」と学習による「成果」をセットで考えるべきなのです。問題集を「30分かけて1ページ」「3時間かけて1ページ」間違えずに解けるようになるのとでは、後者のほうが机に向かっている時間は長いのですが、学習効率は悪いといえます。同じ問題なら「早くできる」ほうが「長い時間かけてできる」より習熟度は高いと考えられます。

 例えば、30分の家庭学習で学習成果が出ていて、残り時間を好きなことをしているならば、3時間の家庭学習時間で同じくらいの学習成果を出している子どもよりも、学習の習熟度が高く、時間の使い方が上手な子どもだといえます。

 ですから、子どもへの褒め方としては「長時間勉強して頑張っているわね」ではなく「今日、間違えずに解けるようにしたい問題を30分で克服できたのだから、頑張ったね」の方が望ましいといえます。

◇学習時間が2倍になったら成果が2倍になるのか

 

 『学力は1年で伸びる!』(著:江澤 正思・陰山英男)に学習時間が同じであるいくつかのグループに分け、どのグループの子どもたちの成績が良いのかを調査した結果が掲載されています。*¹

 そこで最も成績が悪いグループは学習時間が0分のグループでしたが、次に悪かったのは、何と、家での学習時間が4時間超のグループでした。このグループの子どもたちは、テレビの時間もゲームの時間も最長のグループに入ります。

このグループの子どもは、だらだらとテレビを観て、だらだらとゲームをして、だらだらと机に向かっているのではないかと想像されます。勉強部屋があって、そこに籠って机に向かっていれば保護者は「勉強しなさい」と言わないので、子どもにとっては居心地が良いという場合もあるのです。

 また、成績が思うように上がらない子どもの様子を見ていると、「午後3時まで勉強部屋で我慢すれば、あとは自由時間だ!」とばかり、夏休み中の行動予定表にある勉強時間を消化することが目的になってしまっているかのような残念なケースも少なくありません。

◇長期休暇中に注意したい点

 

 また、長期休暇中の学習では、特に留意しなければならない点があります。長期休暇以外の時期には学校に通い、部活にも一所懸命取り組みながら、限られた時間の中で集中して家庭学習を行っていた子どもでも、長期休暇中に家庭学習時間を2倍にしたからといって、必ずしも学習成果が2倍にならないということです。1日に1時間の家庭学習をしている時期には陸上競技で言えば50メートル走の走り方をしていた子どもでも、家庭学習時間を増やせる長期休暇中には1500メートル走の走り方になってしまうことが往々にしてあるということです。子どもには手を抜いている意識はなくても、長時間の学習が可能なように、力をセーブしてしまうのです。そして、長期休暇後も1500メートル走の走り方のペースが抜けきれずにいたために、成績を下げてしまう子どももいるのです。

 

 実は、学習時間だけを増やしても、子どもがそれに見合う集中をするとは限らないのです。かけている時間と成果をセットで考えた場合、時間を2倍・3倍に増やしたら、成果も2倍・3倍出したいところですし、そうでなければ、子どもも心から取り組もうとは思わないのではないでしょうか。まず、「勉強した分だけ成果が出る」という経験がなくては、子どもは長時間の勉強に向き合おうとは思わないでしょう。全く勉強しない子どもには「一日に30分勉強」など子どもが納得する時間で約束してみましょう。*²

 その中で効率を上げ、今、30分が精いっぱいなら、30分の中で今より成果を上げることが優先すべきことです。それができたら45分に増やします。45分で成果を上げてから1時間に増やすといった段階を踏むべきです。「毎日3時間家で勉強する!」と約束しても、子どもがまったり取りくんでいるだけならば成績は期待通りには伸びませんし、むしろ弊害が生じます。

◇短時間学習では限界がくるが・・・

 

 確かに短時間の学習だけでは、ある段階からは成績の伸び方が鈍化してゆきます。学年が上がったり、成績を大きく上げようとしたり、難関校を目指したりすると、こなさなければならない量が増え、時間がどうしても必要になってくるのです。子どもたちは長時間の学習を好き好んでしているのではありません。そして、この長時間とは集中した長時間であるという前提になります。そのための第一歩が集中した短時間学習なのです。

 

 例えば、最難関私立中学を目指す子どもたちは11~12歳でありながら休日に10時間以上普通に学習します。しかし、それは「短時間集中学習を数多くこなす」という学習です。長時間学習といっても、ダラダラと長時間走るのではなく、全速力で何本も短距離を走るというイメージなのです。先の陸上競技の例で言いますと、1日に1500メートルを走る場合、1500メートル走の走りではなく、<50メートル走の走り×30本>をこなすというイメージです。

 仮に短時間を全力で集中して学習できない子どもに長時間学習を課したとしても、タラタラと長い時間走るイメージになります。集中している時間は案外多くありませんので、学習効果は低いと予想されます。

 また、短時間集中学習(50メートルを全力で走ること)ができる子どもでも、子ども自身が納得した上で長時間学習(50メートル×30本)に踏み切らなければ同じことが生じます。この場合は今まで集中している時間があったにもかかわらず、長時間ダラダラ机に向かうだけになってしまうので反対に成績が下降する場合もあるのです。

百ます計算 例

◇子どもへの評価の対象を転換しよう

 

 東京個別・関西個別では 「子どもが頭をフル回転させて学習している状態」つまり「集中している状態」が良い学習の状態としています。時間無制限でだらだらと解いている状態が「フル回転」とはとても言えません。

 百ます計算*³が有効なのは、タイムを計って全力でやる(から集中する)ためですし、英文のリスニングやリーデイングを倍速で聞き取ったり、読みとったりをする練習をすると力がつくのも同じ理由です。

 東京個別・関西個別では教室にストップウオッチやタイマーを常備して解答時間を意識させる取り組みをしています。

 

 他にも、東京個別・関西個別の講師は「子どもがフル回転で学習している状態を維持できる」ようにサポートしています。子どもが完全に出来るところまで戻ってスタートポイントを設定するのも、解く問題のレベルをスモールステップで上げていくのも、これまでのコラムで紹介しましたように*⁴ アウトプット練習を重視して得点力にこだわっているのも、子どもが集中して取り込みやすい状態を作ることで、子ども自身が成果を実感しやすくしているのです。

 

 この夏休みから、「○時間勉強している」といった「時間数」への評価から、「どれだけ集中して取り組んでいるのか」や、「その取り組み成果」への評価に観点を切り替えてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

*¹ 朝日新聞出版 (2008年9月19日) 121p~123p

*² 「約束」については 、

  【てら先生コラム】第2回:『子どもがスマートフォンばかり見ていて勉強しません』というご相談 

 もご参照ください。 

*³ 縦10×横10のますの左と上にそれぞれ0から9(の場合が多いのですが、それ以外の場合もあります)の数字を

  ランダムに並べ、それぞれ交差するところに指定された計算方法(加法、減法、乗法など)の答えを記入する

  計算トレーニング

*⁴ 【てら先生コラム】第3回:『ケアレスミス』というミス と

  【てら先生コラム】第4回:「漢字や単語の暗記がニガテです」というご相談

 

 

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。