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2020年01月15日

系外惑星発見にノーベル賞! 宇宙時代に突入する子どもたちの未来

2019年のノーベル物理学賞は、系外惑星を発見・確認した2人の科学者が受賞しました。彼らが発見した系外惑星とは何でしょうか。それらはどのような方法で発見されたのでしょうか。さらに、こうした系外惑星の発見は、私たちの宇宙・地球に対する見方にどのように影響するかを解説します。

もうSFじゃない!「系外惑星」とは

系外惑星とは、その名の通り「太陽系の外にある惑星」のことです。昔からその存在については考えられていたものの、SF的な想像の産物とするむきもありました。というのも、惑星は自ら光を発する恒星などとは異なり、ほかの星の光をわずかに反射しているだけなので、遠い場所にある系外惑星は見つけにくく、存在を証明するのは非常に難しかったのです。

 

しかし現在では、4000個以上の系外惑星が確認されています。(※1)発見されている系外惑星のうち、最も質量が小さいものは月より若干大きい程度、最も大きいものは木星の28.5倍になります。また、最も高温の系外惑星は4300℃で、最も低温の惑星は-223℃。さらに、最も古い惑星は127億歳で、最も新しい惑星は200万歳と考えられています。このように系外惑星は一括りに出来ないほど、さまざまな個性に溢れています。(※2)

 

では、こうしたさまざまな系外惑星は、どのように発見されてきたのでしょうか。

光らないから見つからない?「系外惑星」証明までの道のり

自らほとんど光らない惑星。まして、非常に明るい恒星などの主星の周りをまわる惑星は、前述したように直接観測することは非常に困難です。そこで、多くの科学者たちは、さまざまな間接的な方法を使って、系外惑星を発見・確認する努力を行ってきました。

 

その主な方法の1つは、「ドップラー法」あるいは「視線速度法」と言われるものです。これは、惑星がまわっている主星の揺れを観測する方法で、ハンマー投げの選手とおもりの旋回の関係を考えると、わかりやすいかもしれません。主星の揺れや主星から届く光の波長の伸び縮みを観測することで、間接的に、おもり、つまり系外惑星の大きさや、主星との距離などを推定することが可能になります。(※3)

 

別の方法は「トランジット法」と呼ばれる方法です。これは、系外惑星が主星の前を通り過ぎる時の「プチ日食」を観測するやり方で、「プチ日食」によって主星の光の量がどれだけ落ちるかを観測することにより、系外惑星のサイズや大気成分まで推定することができます(※3)。

系外惑星探索の扉を拓いた2人の科学者の発見とは

2019年、ジュネーブ大学名誉教授のミシェル・マイヨール(Michel Mayor)氏と、ジュネーブ大学/ケンブリッジ大学教授のディディエ・ケロー(Didier Queloz)氏が、太陽系外惑星の発見に大きな功績を残したとして、ノーベル物理学賞を受賞しました。(※4)

 

今回評価されたのは、2人が1995年に発表した、新しい機器を使って系外惑星を探索する視線速度法です。2人は1994年から、フランスのオートプロバンス天文台にある口径1.93mの天体望遠鏡に、独自に開発した非常に高精度の分光装置を設置。1995年には「ペガスス座51番星」という恒星を検出し、さらにその周りをまわる系外惑星「ディミディウム」を発見しました。さらに、彼らが発見した惑星が、太陽系の中に存在する惑星とは大きくタイプが異なる惑星であったことも、多くの科学者を驚かせました(※4)。

 

2人の発見によって、以後、系外惑星の探索は一気に進みました。現在では、惑星探査装置HARPSやケプラー宇宙望遠鏡といった、宇宙に打ち上げられた探査機が引き続き系外惑星の探索を行っており、私たちは宇宙に関していっそう膨大なデータを入手できるようになりました。

系外惑星の発見が教える地球の「再発見」

これら系外惑星は、単に宇宙へのロマンをかきたてるだけでなく、常に、地球外生命体の存在の可能性や、移住の可能性とリンクさせて話題となってきました。生命が存在するための大気や水はあるのか、そのための質量や自転・軌道は適切か、星を組成する元素はなにか、といったことが話題になってきました。実際、大気や水が存在しているのでは(あるいはかつて存在したのでは)、地球と環境が似ているのでは(あるいはかつて似ていたのでは)、と考えられた系外惑星も1つや2つではありません。

 

では、今後そうした「地球と似た」系外惑星が見つかったとして、その惑星に人類が移住できる可能性はあるのでしょうか。残念ながら、マイヨール氏はその可能性を否定しました。理由は「遠すぎるから」。非常に楽観的な見方をしたとしても、居住可能な系外惑星に行くには数十光年という年月がかかるため、「いつか地球に住めなくなったら居住可能な別の惑星に移住しよう、といった考えは全くばかげている」と語ったそうです。そのうえで、「今住んでいる地球を大切にしなければならない」とコメントしました(※5)。

 

系外惑星がたくさん見つかり、宇宙の謎が解明され、「宇宙時代」に突入するとしても、やはりこの地球は、私たちにとって、これからも唯一無二のふるさとであり続けるようです。むしろ、この地球の環境を守ることの重要性は、これからいっそう高まっていくと言えるでしょう。

まとめ

今年のノーベル物理学賞のニュースによって、多くの人の目が新たに系外惑星に向けられました。一方で、このような報道は、子どもたちを含め人々の宇宙への好奇心をかきたてるだけでなく、私たちが住んでいる地球への見方を変えたのではないでしょうか。私たちが住んでいる地球をもっと大切にし、守ることの重要性を、これからも真剣に考える必要があると言えるでしょう。

 

 

参照資料

※1 「マイヨール博士とケロー博士が、太陽型恒星まわりの系外惑星の発見でノーベル物理学賞受賞!」

自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター (2019/10/9)

http://abc-nins.jp/news/376/

 

※2 「最も極端な特徴を持つ7つの惑星」

NewSphere (2017/9/11)

https://newsphere.jp/technology/20170911-1/

 

※3 「系外惑星の探し方」

系外惑星データベース

http://www.exoplanetkyoto.org/study/method/

 

※4 「2019年ノーベル物理学賞は,物理的宇宙論における数々の理論的発見に対してジェームズ・ピーブルズ教授に、また太陽と似た恒星の周りを公転する太陽系外の惑星の発見に対してミシェル・マイヨール教授とディディエ・ケロー教授の3名が受賞した。」

日本物理学会 (2019/10/8)

https://www.jps.or.jp/information/2019/10/2019_8.php

 

※5 「人類の系外惑星への移住「ない」 ノーベル物理学賞のマイヨール氏」

AFPBB News (2019/10/10)

https://www.afpbb.com/articles/-/3248874

 

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