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IRリリース

2020年10月15日

【てら先生コラム】第31回:家庭学習の仕方

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「家庭学習の仕方」についてお届けします。

「時間をかけて家庭学習をしているのになかなか成績が上がらない」、というご相談を保護者からしばしば受けます。保護者に状況をヒアリングさせていただくと、多くの場合は家庭学習の仕方に課題があると考えられます。また、今後、「一人端末時代」を迎えると、家庭での学習の仕方が重要になってくるというということを、別のコラムで記しました。*¹  そこで、今回は、家庭学習の仕方と保護者の接し方について考えてみたいと思います。

 

 

◆成績がなかなか上がらない家庭学習例

 

 まず、よくある「成績がなかなか上がらない学習方法」を4つご紹介します。

 

Ⅰ 作業をしただけで学習を終えている

 

 綺麗にノートに整理して記入したり、覚えたい単語をまとめて単語帳を作成したり、教科書に線を引いて読んだりするだけで、勉強したような気持ちになってしまう子どもは少なくありません。

 確かに上記のような作業をしながら、頭の中が整理されて知識がインプットされる場合もありますが、ノート作りなどの作業自体が目的になってしまうと知識が頭の中にインプットされていない可能性があります。また、知識のインプットが出来ても、アウトプット演習が不足していると、問題を解く力がなかなかつきませんので、「どれだけ正確に素早くアウトプットできるのか」が問われる試験では、好成績を上げるのが難しくなります。結果として「この問題は知っていたのに、間違えてしまった」と、なりかねません。

 

Ⅱ 問題集や参考書のレベルが子どもにあっていない

 

 どんなに世間的に評価の高い問題集や参考書を揃えても、子どもの現在の学力にあっていなければ、成績はなかなか上がりません。子どもにとって難しすぎる内容の問題集を解こうとしても、わからないことだらけであれば、解説を見たり、参考書で調べたりしているうちに時間がどんどん過ぎてしまいます。そうすると、アウトプット演習を行う機会が不足してしまいがちになり、「口コミで高評価の問題集を使っているのに成績がさっぱり上がらない」という結果になりかねません。

 反対に、子どもの現在の学力と比較して、易しすぎる問題集ばかり使い続けていると、一定ラインまでは成績が上がったり、成績が安定したりしますが、もう一段階上の学力段階への到達が難しくなる場合があります。

 

 

Ⅲ 問題を解きっ放しにしている

 

 子どもが宿題を終えると、「ちゃんとやったの」と声をかける保護者は少なくないと思います。「うん、やった」と返事が返ってくると、保護者は安心してしまいますが、「やった」と答える子どもの「やった」の内容を見てみると、子どもによって、全く異なるのです。

 「やった」と答える子どもの中には、問題を解きっぱなしで、答え合わせをしない子どももいるのです。ある調査では、問題を解いた後に丸付けをする小学生は82.1%、中学生は87.1%でした*² ので、小学生の約18%、中学生の約13%は問題を解きっぱなしにしているのです。

 また、正答を見て○×だけをつけて終わる子どももいます。答え合わせをした後、間違えた問題の正答をノートに綺麗に写して終了する子ども、間違えた問題の解き直しをする子ども、何故間違えたのかの理由を考えてから解き直しをする子どももいます。そして、誤答した原因を考えるだけではなく、今後どうすれば間違えないようになるかまで考える子どもや、他の解き方はないのか考える子どももいます。

 子どもが答えている「やった」がどのような「やった」なのかを質問してみると、成績が上がらない原因が見えてくる場合があるのです。

 

Ⅳ 家庭学習指標が「時間」や「量」だけになっている

 

 保護者は「〇時間机に向かっているから安心だ」「△時間も勉強していないから心配だ」といったように、時間という指標のみで判断しがちです。そうすると、「とにかく〇時間机に向かっていれば良い」と考えてしまう子どもも出てくるのです。

 また、「プリント2枚やったの?」「問題集3ページやったの?」と、「量」のみに着目する接し方をしてしまうと、短時間で終了できるドリル学習ばかりやりたがるようになってしまいかねません。そして、「約束した量をこなす」ことに関心が向くので、答え合わせをする習慣や、「何故間違えてしまったのか」「今後間違えないようにするにはどうしたら良いのか」などど、自分で振り返りをする学習姿勢はなかなか身に付きません。

 

 

◆家庭学習の仕方が適切なのか不安があれば、相談する

 子どもが机に向かっていても成績が伸びないと、勉強の仕方に問題があるにもかかわらず、「自分の子どもは勉強が出来ない」と考えてしまう保護者や、「自分は勉強に向いていない」と勉強に対する意欲を低下させてしまう子どもが出てきます。

 とはいえ、保護者と子どもの間で、学習についてのコミュニケ―ションは難しいと感じていらっしゃる保護者は少なくないと思います。ですから、プロのアドバイスが必要なこともあるのです。もし、学習方法が適切ではないかもしれないと、保護者が思い当たる場合は、学校や塾の先生に早めに相談すると良いでしょう。成績が上がらない原因や学習方法の課題に関して回答してもらえることでしょう。

 

◆ご家庭と学校や塾との連携が重要

 勉強の仕方は、教えればそのまま身につくものではありません。学校や塾で、子どもにあった勉強の仕方のアドバイスを受けても、ご家庭の協力がなければ、なかなか身につかないものなのです。

 例えば、保護者が、返却されたテストについて「点数」のみに着目して「〇〇点以上だったから良かった」「□△点だったので、良くなかった」というようなフィードバックを子どもにしていると、子どもは「とにかくテストの時に点数がとれれば良い」という考えに陥りやすくなります。そうすると、「答えが正解と同じなら(解き方や考え方が正しくなくても)良い」「一夜漬けの丸暗記でも良い」というような不適切な学習の仕方からなかなか抜け出すことができません。

 学校や塾で「問題を解いて、間違えたところがどこなのか弱点を見つけると学習効率が上がる」とアドバイスしても、間違えることは恥ずかしいと思っている子どもや、間違えると保護者に叱られてしまうと考えている子どもは、なかなか取り組みたがりません。誤答こそが自分の成績をアップさせるチャンスなのだと説明しても、「まだ完璧になるまで勉強していないから」と、つまずきや弱点を発見するための問題演習にとりかかるまでに時間がかかってしまうこともあるのです。

 

 学校や塾の先生から、子どもにあった勉強の仕方のアドバイスを受けたら、その内容に沿った接し方をご家庭でも心がけていただくと、成績が上がりやすくなります。

 答え合わせをしない子どもが、答え合わせをするようになったら、例え、その正答率について一言言いたくても、「答え合わせをするようになったから、解き直しをする問題がわかったね」と話してみる。ノートに計算過程を書かずに、答えだけを書いていた子どもが途中式を書くようになったら、「先生のアドバイスをしっかり守って頑張っているね」といった声掛けをしてみる。そのようなご家庭での接し方が、適切な学習方法の定着の後押しとなることでしょう。

 

 

◆連携がうまくいった事例

 

 ある中学1年生は、ノートに答えだけを書いて宿題を提出する生徒でした。保護者と生徒と塾の教室長と担当講師の四者面談の結果、ノートの使い方の指導を通じて学習の仕方の指導を行うことになりました。その生徒は、次第に途中計算式を書き、答え合わせをしてくるようになり、間違えた原因をノートに書いてくるようになり、「移項の時は、符号の確認をすること」と間違えないための注意点も自分でノートに書いて提出するようになりました。結果、三か月後の成績は急上昇したのですが、保護者に尋ねると、保護者はこの間、家庭学習については「塾の先生に言われた通りにノートを使っているか」のみ、子どもに声掛けをしていたそうです。

 ご家庭との連携がうまくいって、短期間で成果が出た事例だと思います。

 

◆今こそ、家庭学習の仕方の点検を

 

 新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、再び登校できなくなり、ご家庭が学習をする主たる場となる可能性は、誰も否定できません。その時に、適切な家庭学習方法を身につけている子どもとそうではない子どもとの学力の差は、今まで以上に広がるのではないかと考えています。特に、子どもの普段の様子が、今回取り上げました「成績がなかなか上がらない家庭学習例Ⅰ~Ⅳ」に思い当たる節のある保護者は、まずは、信頼できる学校や塾の先生に相談し、適切な学習方法が身についているのか確認しておくことをお勧めします。

*¹ 【教育改革】第29回:『一人一台端末』時代  東京個別指導学院  2020年8月1日

https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=3448

 

*² ベネッセ教育総合研究所 小中学生の学びに関する実態調査 速報版  2014年10月

https://berd.benesse.jp/up_images/research/Survey-on-learning_ALL.pdf

【てら先生コラム】バックナンバーはこちらから

 https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=2111

 

 

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。