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2020年07月15日

【てら先生コラム】第28回:異例ずくめの2021年度の高校入試で保護者がやっておくべき7つのこと

教育業界に携わり30余年の「てら先生」による月1コラム。
今月は「異例ずくめの2021年度の高校入試で保護者がやっておくべき7つのこと」についてお届けします。

 2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止のために、ほとんどの中学校が休校になり、模擬試験の会場実施が中止になったり、高校の学校説明会が延期・中止になったりなど、高校受験に向けての行事予定が例年とは大きく異なっている状況です。このような中で不安に感じている高校受験生と保護者の方も多いのではないでしょうか。

 今回は、高校受験を控えた中学3年生の保護者が気をつけておきたい7点をまとめてみました。

 

 

◆1.高校選びは、まずは高校HPのチェックから始める

 

 新型コロナウイルスの影響により、多くの高校で学校説明会が中止や延期となっています。学校説明会は志望校を決めるための大切な機会となるため、どこの高校が良いか判断することが出来ず、目標とする高校が決まらないことで、子どものモチベーションが上がらずお困りのご家庭も多いことでしょう。

 学校説明会で保護者や子どもにチェックしてきてもらいたいポイントはいくつかありますので、列挙してみましょう。大きく分けて学校情報と入試情報があります。

 

【学校情報】

  校風・高校の雰囲気

  教育方針・理念

  制度・コース(文系・理系のコースわけ、習熟度別授業の実施状況、中学もある学校はクラス分け方法)

  大学進学実績(大学合格者数、進学先や現役での進学率。大学附属校の場合は、内部進学率や希望する学部への進学条件、指定校推薦状況)先生や生徒の印象

  教育内容(探究学習、理数教育、英語教育、グローバル教育、ICT教育などへの取り組み)

  新型コロナウイルス感染症対応(今後は重要なチェックポイントになります。2020年春の各校の対応の差は、公立高等学校間も含めて学校間格差が顕著でした。「with コロナ」の時代に強い学校とそうではない学校があるのです)

  クラブの充実度(クラブの加入率。自分が希望するクラブの有無、関連施設)

  行事(修学旅行の行き先、学校独自の行事)

  学校施設や制服

通学のしやすさ(最寄り駅からの通学路の様子、朝の通学にかかる時間、通学定期代、自転車通学の可否)

  学費・費用(入学金や授業料以外にかかる費用も確認)

 

【入試情報】(説明会参加時期によっては未定の場合もあります)

  入試の種類と日程

  入試制度の変更点(新型コロナウイルス感染症対応で変更が生じる場合があります)

  推薦入試(種類、選考方法、コースや学科別の推薦基準)

  一般入試(入試科目や面接などの選考方法、優遇がある場合の条件、目標得点率)

出題傾向(学校説明会や入試説明会では、詳しい説明をする学校もあります)

 

 こうしてみていくと、下線を引いた項目に関しては高校HPで確認できる内容であることがわかります。だからこそ、HPチェックは高校選びの第一歩なのです。

 もちろん、高校HPの掲載情報だけでは不十分な学校もあることは確かです。そんな中、注目されているのが「オンライン学校説明会」なのです。

 

 

◆2.「オンライン学校説明会」に積極的に参加する

 

 オンラインでどこまで高校のことを知ることが出来るのか不安もあるでしょうが、是非参加されることをお勧めします。

 校長先生の挨拶、教育方針や教育内容の説明だけではなく、最寄り駅から高校までの道のりや、校門をくぐってからの校舎内の様子など、まるで校内見学をしているかのようなコンテンツを作成している高校もあります。また、学校行事や授業風景の動画を公開している高校、在校生や卒業生のインタビュー動画を公開している高校、先生だけではなく在校生にも直接質問し、回答してもらえる機会を用意している高校、オンラインで模擬授業に参加できる高校もあり、各学校とも工夫しています。

 そして、「オンライン学校説明会」は参加人数を少人数に設定していることが多いこともあり、説明の途中でも気軽にチャットで質問ができる場合もあります。個別相談会の順番待ちをする必要もなく、HPではわからなかったことや、高校の先生に面と向かって質問し難いことも気軽に聞くことができます。このように、予め質問したいことを整理しておいてから参加すると、「オンライン学校説明会」を有効に利用することができます。

 高校に足を運ばなくても良いため、移動時間をとられることもありませんし、小さい子どもがいるご家庭の保護者の参加や、両親揃っての参加など、通常の学校説明会の参加が難しかったご家庭でも参加しやすくなっています。この機会に多くの高校の「オンライン学校説明会」に参加して、幅広い高校の中から子どもに合う学校を検討することをお勧めします。

 「オンライン学校説明会」の参加には、事前登録や予約が必要な高校もありますので、気になる高校のHPはこまめにチェックしておくと良いでしょう。

 そして、「オンライン学校説明会」に参加した後は、子どもに毎回感想聞くようにしましょう。様々な「オンライン学校説明会」に参加することで、子どもがどんなところに惹かれるのかが、保護者も分かってきます。子どもが進学後に有意義な学校生活を送るためにも、子どもの意見も参考にしながら志望校を絞り込んでいきましょう。

 

 

◆3.学校に足を運ぶ説明会は早めに予約申込する 

 

 しかし、最終的に受験する高校を決定する際には、「オンライン学校説明会」参加で絞り込んだ受験候補校に実際に足を運んでおきたいものです。その高校で3年間過ごすことになるわけですから、校風や高校の雰囲気などは直接感じ取って確認しておきましょう。

 学校に足を運んで参加する説明会は、開催時間や参加人数を例年以上に絞りこんでいる高校が多いようです。従来は、事前申込をせずに学校に足を運んでも参加できた高校もありましたが、現状では事前に申込が必須の高校が主流です。また、「三密」を避けるため、体育館や講堂に大勢の参加者が入場しての説明会の実施は難しく、1回ごとの説明会の定員を大幅に減らして開催する高校が多いようです。ある公立高校の学校説明会は、予定していた3回の説明会が開催1か月前にして全回・全席満席となりました。

 説明会に参加したら、受験しなければならないというわけではありませんので、気になる高校への参加申込は早めに行うことをお勧めします。

 

 

◆4.模擬試験は「自宅受験」であっても積極的に受験させる

 

 子どもの学力や現在の位置を把握し、目標校までの距離を測る模擬試験も中止が相次ぎ中止になっている点も、保護者や子どもが不安な点ではないでしょうか。確かに、志望校や気になる高校がみつかったとしても、子どもの学力がわからず、合格までの距離もつかめなければ、受験校を決定することもできません。

 クラスターの発生の危険性があるので、外部会場で多くの受験生を集めて実施する模擬試験などは開催が難しく、2020年度には、外部会場での公開模試が全く行われない可能性もあります。

 そのような状況の中で、模擬試験業者の中には、模擬試験の過去問題を販売していたり、模擬試験の自宅受験を受け付けていたりする場合がありますので、それらの活用をお勧めします。

 確かに、自宅で受験する場合の模擬試験結果データの信憑性は、公開会場で受験する場合よりも低い可能性があります。それでも、模擬試験の過去問題を解いたり、自宅で模擬試験を受験したりするメリットは数多くあるのです。

 ここで、模擬試験の受験のメリットを整理してみましょう。大きく分けて3点あります。

 1点目は、現時点での受験生の中での位置や、志望する高校との距離を確認することができます。

2点目は、学習課題を洗い出すという目的です。模擬試験で間違えた問題は現時点で苦手な分野なので、そこを復習することで克服することができます。以前受験した模擬試験で見つかった課題が以後の模擬試験で解消されているかどうかの確認もできます。

3点目は、学校ではないテストの雰囲気に慣れることができます。

 このうち、1点目は、前年同時期の模擬試験過去問題を解いたり、自宅で模擬試験を受験したりすることで、概ね子どもの現在の位置は把握できます。1年間で高校の難易度が大きく変動することは少ないので、志望校との距離もつかむことは可能です。

 2点目は、自宅受験でも課題発見できます。休校期間により学習の遅れが気になったり、夏休み短縮で既習範囲の総復習に費やす時間が十分にとれなかったりと不安がある中で、学習課題を洗い出し、優先順位をつけた受験対策を行うことが出来るのです。具体的な学習内容を保護者が判断することができなくても、自宅模擬試験結果などを先生に見てもらえれば、助言してもらうことができます。

 3点目は、会場で実施する模擬試験ならではのメリットでしょう。しかし、自宅受験する場合でも、保護者の配慮によって、多少は本番に近づけた環境をつくることができます。

 

(1)本番と同じ時間帯に同じ教科順に解く 

(2)試験時間や休憩時間を厳守する 

(3)机の周りを整理して、スマートフォンやゲームは目に入らないところに片付ける 

(4)自宅模試受験中は、家族も協力してテレビや音楽の音に気をつける 

 

 これらは、自宅模試受験の際のご家庭での約束事として決めて受験させると、1点目や2点目のメリットの効果を上げることにもなります。

 なお、子どもが模擬試験の受験に前向きではない場合は、当コラム「第15回:模擬試験をためらう子ども」*¹ も参考にすると良いでしょう。

 

 

◆5.入試範囲の削減と入試対策は、個別に先生に相談する

 

 文部科学省では、新型コロナウイルス感染症の影響により、中学校等で臨時休業が実施され、学校の再開時期が地域によってばらつきがあることを踏まえ、高校入試における出題範囲や内容、出題方法について、必要に応じた適切な工夫をするよう通知を出しました。*² この通知を受けて、都道府県によっては休校状況などの 実情を踏まえ、出題範囲、選抜の内容などを変更する動きがあります。

 東京都、大阪府、奈良県、埼玉県、新潟県などの教育委員会は公立高校入試の出題範囲の縮小を発表しました。東京都の場合は、日比谷高等学校のような自校問題作成校の入試でも、東京都の共通問題と同様に出題範囲が縮小されます。また、山口県は学力検査全ての教科に選択問題の設定と、学校指定教科検査の中止を発表しました。*³

 一方で、茨城県、愛知県、静岡県などは、現時点では学力検査の出題範囲の削減は行わない方針を示しており*⁴、対応は全国一律ではありません。

 私立高校については、今までも独自の入試を行ってきましたから、各都道府県の教育委員会の方針に準じることはなく、学校ごとに判断・決定することになります。実際に、東京都内の私立高校での「オンライン学校説明会」で出題範囲の削減は行わない方針を示した高校もあれば、出題範囲の削減や配慮を検討中と回答した高校もあります。

 高校入試の場合、各都道府県で公立入試も時期が異なりますし、先ほどご紹介した通り、出題の削減等の対応も各都道府県で異なります。さらに、私立高校入試は学校ごとに対応が異なる訳です。

 公立高校が第一志望なのか、私立が第一志望なのか、志望順はどうなのか、具体的にどの学校に進学したいのかは、子どもの希望やご家庭の方針によって異なると思います。それによって、高校受験準備に必要な学習範囲や内容も異なってきますので、学校や塾の先生に相談をしておくことが例年以上に重要になってきます。

 

 

◆6.入試後も学習を止めない約束をしておく

 

 5.で触れたように、高校受験をする都道府県や受験の仕方によっては、高校入試に出題されない学習範囲があることは確かです。しかし、それは高校受験で出題されないだけで、「勉強する必要がない」ということではありません。

 高校入学後には、中学で学習した内容を前提とした高校での学習が始まります。一部の県で今回高校入試の出題範囲から削減された事項の中には、高校での学びに直結するものも含まれています。中学校で学習してくる筈であった内容の補習を入学した高校で実施するとは限りません。そして、3年後の大学入試では高校受験を経験しなかった中高一貫校の生徒たちや高校入試で試験範囲が削減されなかった生徒たちと競い合うことになります。

 高校入試が近づけば、合格するための学習が最優先になるのは致し方ないことです。しかし、高校入試後から入学するまでの間は、ゆっくりするのではなく、高校入試で試験範囲が削減された内容などの学習を継続する約束を、子どもと今のうちにしておくことをお勧めします。

 高校入試後に、中学校でどの程度丁寧に入試で削減された内容を指導するのかは、各中学によって異なってくる可能性があります。中学での学習に不安を感じたり、子どもには不足していると感じたりするような場合には、学習塾や自宅学習などで補っていく必要があるでしょう。

 

 

◆7.相談先の確保

 

 新型コロナウイルス感染症の第二波・第三波が訪れれば、改めて入試範囲が変更になったり、追試験・代替試験が新たに設置されたり、試験会場の変更があったりするだけではなく、試験方法そのものが変わってしまう可能性も否定できません。*⁵ 誰もが、最終的にどのような入試になるのか予想がつかず、何が起きてもおかしくないのが2021年度入試であると言えます。不確実性が高い2021年度入試を前に、保護者が日々不安な思いを口にしたり、あたふたしたりしていては、子どもの学習に良い影響を与えることはないでしょう。一番不安を感じているのは受験する当事者である子どもなのです。不明な点があれば、正しい情報を冷静に収集していく保護者の姿勢が必要です。とは言え、保護者であるが故、子どもの受験への不安や心配は尽きないものです。不安な点や心配な点を相談し、アドバイスをもらい、解消できるような相手(相談先)を、今のうちに確保しておくことが重要です。何があっても動じない保護者の姿を見せることは、子どもの受験にも良い影響を及ぼすことでしょう。

*¹ 【てら先生コラム】第15回:模擬試験をためらう子ども

https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=2546

 

*² 中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた令和3年度高等学校入学者選抜等における配慮事項について(通知) 文部科学省  2020年5月13日

https://www.mext.go.jp/content/20200514-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf

 

*³ 中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた令和3年度東京都立高等学校入学者選抜等における配慮事項について  東京都教育委員会  2020年6月11日

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/admission/high_school/exam/release20200611_01.html

令和3年度大阪府公立高等学校入学者選抜における出題内容について  大阪府  2020年6月19日更新

http://www.pref.osaka.lg.jp/kotogakko/gakuji-g3/

新型コロナウイルス感染症にかかる対応方針 奈良県教育委員会  2020年6月11日

http://www.pref.nara.jp/secure/226388/0611taiouhoushin.pdf

令和3年度新潟県公立高等学校入学者選抜一般選抜学力検査について 新潟県教育委員会  2020年6月22日

https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/223657.pdf

令和3年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における中学校等の臨時休業等を踏まえた配慮事項 埼玉県教育委員会 2020年6月30日

https://www.pref.saitama.lg.jp/f2208/documents/r3hairyo.pdf

令和3年度山口県公立高等学校入学者選抜の変更点について

https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/c/0/7/c07f52604d750c312e31307f8d866025.pdf

 

*⁴ 令和3年度茨城県立高等学校進学学力検査問題の出題内容について(通知) 茨城県教育委員会  2020年6月1日

https://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/gakkou/koukou/nyuusi/r3/0601/tuchi.pdf

中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた令和3年度静岡県公立高等学校入学者選抜における配慮事項について 静岡県教育委員会

http://www.pref.shizuoka.jp/kyouiku/kk-050/documents/rinjikyuugyouhairyo.pdf

令和3年度愛知県公立高等学校入学者選抜における中学校等の臨時休業の実施等を踏まえた配慮事項について  愛知県教育委員会  2020年6月24日

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/338313.pdf

 

*⁵ 令和3年度高等学校入学者選抜等の実施に当たっての留意事項について  文部科学省  2020年6月22日

https://www.mext.go.jp/content/20200623-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

 

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 https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=2111

 

 

~【てら先生】プロフィール~

教育業界に携わり30余年。
何千人もの子どもたち・保護者に学習・進路相談を行う。
現在は株式会社東京個別指導学院 進路指導センター 個別指導総合研究所にて同学院のブレインとして活動。
文部科学省・各学校に足を運び、様々な情報を収集し教室現場への発信・教育を行っている。