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2018年08月01日

【教育改革】第6回:「主体性を持って多様な人と協働して学ぶ態度」の評価

教育改革とその影響に関して、弊社個別指導総合研究所から継続的に情報を発信していきます。
第6回目は「主体性を持って多様な人と協働して学ぶ態度」の評価についてお届けします。

教育改革

◇一般選抜(現・一般入試)でも、調査書や出願者本人が記載する資料等が活用される

 

 2021年度大学入学者選抜から実施される大学入試改革として、『大学入試センター試験』に代わり『大学入学共通テスト』が導入されたり、英語資格・検定を利用した英語四技能評価が導入されたりすることについては、これまで触れてきました。*¹ 

 今回の大学入試改革ではさらに、「主体性を持って多様な人と協働して学ぶ態度」をより積極的に評価するために、調査書や出願者本人が記載する資料等が積極的に活用されるようになる予定です。これは、学校推薦型選抜(現・推薦入試)や総合型選抜(現・AO入試)ではもちろんのこと、一般選抜(現・一般入試)でも取り入れられていきます。文部科学省の『平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告』*² でも、一般入試の課題の改善について、『筆記試験に加え、 「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をより積極 的に評価するため、調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を促す。 各大学の入学者受入れの方針に基づき、調査書や志願者本人の記載する資料等をどのように活用するのかについて、各大学の募集要項等に明記することとする。』とされています。

 

 この改革の動きに合わせて、大学に提出する調査書の書式の改善も行われます。現在の調査書には裏面に、学年ごとに記入する【指導上参考となる諸事項】という欄があります。今回の『平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告』の中の『調査書や提出書類等の改善について』*² で触れられている改訂方針のひとつとして、下記の①~⑥を項目ごとに記載できるように変更して、高校時代の諸活動について、多様で具体的な内容が記載できるようになりました。

 

 ①各教科・科目及び総合的な学習の時間の学習における特徴等

 ②行動の特徴、特技等

 ③部活動、ボランティア活動、留学・海外経験等

 ④取得資格・検定等

 ⑤表彰・顕彰等の記録

 ⑥その他

 

 方針では加えて、活動事例や取得資格を単に記入するのではなく、例えばボランティアであれば具体的な取り組み内容や期間、生徒が自らかかわってきた活動なのか、そして、生徒の成長の状況にかかわる所見も記載するよう求めています。*²

 これは、校内外での様々な取り組みや、資格・検定取得に向けた活動を通じて、生徒がどのように成長したのかを記入するということです。調査書の記述量は従来のものより増えますから、「表裏の両面1枚」という制限が撤廃されることになりました。*³

「JAPAN e-Portfolio」の活用イメージ

◇「JAPAN e-Portfolio」とは

 

 今までも、学校推薦型選抜(現・推薦入試)や総合型選抜(現・AO入試)では、調査書や志願者本人の記載する資料等が入学者選抜に活用されてきました。しかし、大学によっては十数万人が受験する私立大学の一般選抜(現・一般入試)では難しいのではないかと言われてきました。

 これに対して、現在、調査書や志願者本人の記載する資料等を短期間で多くの受験生を対象にした一般入試で活用するための調査・研究が行われています。*⁴

 例えば、「主体性を持って多様な人々と学ぶ態度」についての評価手法を確立する研究と、ICTを利用してその評価手法を入試に取り入れるモデルを構築する研究です。これらは、受験生を評価していく情報をデジタル化して、「このような活動やこういった成果に対しては何点」といった基準をあらかじめ定めておいて、それで評価ができないかという研究です。

こうした取り組みのひとつが、2017年10月2日からオープンしている「JAPAN e-Portfolio」*⁵ という、高大接続ポータルサイトです。これは、文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)で構築・運営する、高校のeポートフォリオ*⁶ ・大学出願ポータルサイトです。2018年2月時点で、すでに約1200の高校が利用しています。*⁷ 

 全国の高校の数は約5000校*⁸ ですから、約4分の1の高校が利用していることになります。2018年7月4日時点で参画を表明している大学・短大は97校(国立大学16校,公立大学5校、公立短期大学1校、私立大学70校、私立短期大学5校)です。*⁹

 ポートフォリオ*⁶ とは、元来は書類入れやファイルを意味する外来語なのですが、「JAPAN e-Portfolio」には「探究活動」「生徒会・委員会」、「学校行事」、「部活動」、「学校以外の活動」、「留学・海外経験」、「表彰・顕彰」、「資格・検定」という大項目があります。

 「学校以外の活動」以外については、ほとんど調査書についての項目と重複する形になります。利用する高校生は、学校の授業や行事、部活動などでの学びや自身で取得した資格・検定、学校以外の活動成果や学びをPCやスマートフォンを利用して自分で記録し、積み上げていくことで、eポートフォリオとして情報を蓄積します。これにより、高校生活の中で蓄積した「学びのデータ」を、出願ポータルサイトから各大学に送信する仕組みです。

 利用する高校の先生は、生徒ひとりひとりの入力内容を閲覧・確認でき、面談前や年度末に、生徒とともに内容を確認し、振り返ることで、継続的な「主体的な学び」に向けた指導に役立てたり、調査書の作成に活用したりできます。

◇一部の大学では、取り組みが始まっている

 

 2018年度入学者選抜(一般入試)での出願数が117,209にのぼった早稲田大学*¹⁰ が、2021年度入学者選抜から全ての学部の一般選抜で、Web出願にあたり、「主体性」「多様性」「協働性」に関する経験の入力を全受験生に求める*¹¹  という発表を行い、話題になりました。

 また、2021年度入学者選抜を待たず、11の国公私立大学では、2019年度入学者選抜試験において「JAPAN e-Portfolio」を活用することを発表しています。*¹² 例えば、千葉商科大学では、全ての学部の一般入試(2科目・総合評価型)では、学力試験(200点満点)に高校が提出する調査書の評定平均値・出欠状況・取得検定資格・クラブ活動等(40点満点)の合計点で合格者判定を行います。*¹³ 

 また、関西学院大学教育学部の一部のコースでは、一般入試の「主体性評価方式」で、リーダーシップに関する取り組みを調査書と志望理由書に基づき評価(10点満点)し、学力検査(500点満点)との総合点で判定しています。*¹⁴

 関西学院大学と千葉商科大学では、調査書等の配点が異なるだけではなく、どの項目を評価するのかも異なっています。このように、各大学は、何をどう評価するのかということを要項に示していくと同時に、各大学は、調査書に「こういった項目を記載してほしい」ということを要望できることになっています。

 したがって、今後は生徒の活動記録や学習記録から、どの大学の求める受験生像にマッチしているのかを見極め、助言していく進路指導もこれまで以上に各高校や塾・予備校に求められていくことになるでしょう。

◇高校生がすべきことは

 

 このように、新大学入試では高校内外での諸活動が今まで以上に評価されるようになます。その結果、入試の「筆記試験に利用しないから力を入れて勉強しない」「学校行事や部活動の取り組みは評定平均に影響しないから、ほどほどに取り組む」といった姿勢では新たな大学入試に対応できなくなる可能性もあります。

 教科の学習だけではなく、学校内外での活動や部活動、資格検定取得も一年生から頑張ることが求められています。しかも、何でも良いからやみくもに活動したり資格を取ったりすればと良いというわけではありません。各大学のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)を踏まえた体験を積むことが大切になってきます。アドミッション・ポリシーは全ての大学についてホームページや募集要項(入試要項)等に掲載*¹⁵ されていますし、各大学が、何をどう評価するのかということは募集要項(入試要項)に示していくことになりますので、早めに確認しておくことが必要です。

 

 このように見ていくと、高校生の進路検討・選択時期は、現在よりも早期化され、大学入試対策の期間は現在よりも長期化されることになります。「進路や大学入試対策については高校3年生になってから考える」では間に合わなくなる可能性が出てきているのです。

 

 新大学入試で注目されているポートフォリオですが、調査書や志望理由書を記載する際に活用するといった入学試験のためだけのツールではありません。高校生が主体的に進路選択を考えるための材料になります。「JAPAN e-Portfolio」では、生徒達自身が、自分の学んだこと、部活動や校外活動を記録し、「ふりかえり」をするという学習活動を行うのです。学びの記録を蓄積していくと、自らが取り組んできたチャレンジの過程が蓄積されることになります。先生とともに生徒自身も自己評価を行いながら蓄積していきますので、生徒たちが自分のことを客観的に見ることができるような意義のあるものを取捨選択して、保存していくようになります。そして、すべての活動項目で、ふりかえり・今後に活かしていきたいことを記入する欄があり、学校内外の活動を通してどんなことをして、何を学んだのかを記入し、蓄積していくことで、後で自己の成長をふりかえって把握するような仕組みになっているのです。これまでできなかったことができるようになっていく過程が可視化され、自分の成長が目に見えるようになり、成長実感を持てるようになるでしょう。「ふりかえり」を行うことで、「あ、そういうことなのか。わかったぞ!」という「気づき」につながっていきます。このような経験を積み重ねることにより、学校や周囲からの「やらされごと」だった活動や学びも、「自分のためになる」活動や学びになるでしょう。ポートフォリオは、学びを「自分ごと」に変え、自分の成長を確認し、高校卒業後の学びにつなげ、新しい学習指導要領であげられている「新しい時代に必要となる資質・能力」の中の「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養」を促すツールなのです。

 

 

 

*¹ 【教育改革】第2回『大学入試センター試験』から『大学入学共通テスト』に

   https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=353

  【教育改革】第3回:大学入試制度改革の大きな柱は英語4技能評価

   https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=397

*² 文部科学省『平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告』2017年7月

*³ 【教育改革】第1回「学力の3要素」

   https://www.tkg-jp.com/pickup/detail.html?id=233

*⁴ 文部科学省「大学入学者選抜改革推進委託事業」

   http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1397824.htm

*⁵ 「JAPAN e-Portfolio」  https://jep.jp/

*⁶  ポートフォリオは、従来の科目テストや知力テストだけでは測れない総合的な学習の評価方法として、

  近年注目されています。「学習活動において児童生徒が作成した作文、レポート、作品、テスト、活動の

  様子が分かる写真やVTRなどをファイルに入れて」収集・保存されたもの、もしくはそれらの評価方法を

  教育業界ではポートフォリオと呼んでいます。《出典  グロワ−ド(鈴木秀幸訳)『教師と子供のポートフ

  ォリオ評価(総合的学習・科学編)』論創社,1999年 》 。

   eポートフォリオは、electronic portfolioのことです。生徒の「学び」に関わる記録をデジタル化して残す

  システムになります。学習や活動の記録を「見える化」することで、生徒が自分自身を振り返って客観的に見

  つめ直すことがしやすくなります。また、生徒が意識していなかった新たな気づきが得られたり、抱えている

  問題点が明確になったりする教育効果があると言われています。教師にとっては、生徒の学習過程を見ることが

  できるため、テストでは測れない学生の能力や成長を評価することもできます。

*⁷ 東洋経済ONLINE  2018年4月15日 全国の高校で導入中、活動記録サイトの正体

*⁸ 文部科学省  平成29年12月22日  平成29年度学校基本調査(確定値)によると、高等学校4,907校、

  中等教育学校53校となっています。

*⁹  JAPAN e-Portfolio参画大学一覧 (JAPAN e-Portfolio) 

*¹⁰ 2018年度 早稲田大学 入学志願者数日報(早稲田大学)

*¹¹ 2018年5月30日 早稲田大学「2021年度 ⼀般選抜(現⾏の⼀般⼊試)および⼤学⼊学共通

*¹² 平成31年度入学試験において「JAPAN e-Portfolio」を活用する大学・入試制度一覧

*¹³ 千葉商科大学  2019年度入試要項

   http://www.cuc.ac.jp/prospective/admission/exam/ippan/zenki/index.html

*¹⁴ 関西学院大学 2018年度 入学試験要項

*¹⁵ 学校教育法施行規則の一部を改正する省令の公布について(通知)27文科高第1187号 平成28年3月31日